【完結】御令嬢、あなたが私の本命です!

やまぐちこはる

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第33話 母を味方に

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 帰城したテューダーは、すぐにパリス王妃の女官にエルロールの意向を伝え、例の土地所有者を探しにかかる。
 テューダーがバタバタしている中、予想より早くパリスより呼び出されたエルロールは気楽にひとりで母の元へ向かった。

「拝謁賜ります、エルロールです」
「こちらへいらっしゃいな」

 女官たちがケーキと茶の用意をしていた。

「母上にご相談がございます。聞いてくださいますか?」
「ええもちろん。聞くだけならね」
「母上は定期的にチャリティーをなさっておられますが、集めた金はどういったことにお使いでしょうか」
「そうね、戦争遺児の学費支援が多いかしら」
「戦争遺児?遺族には弔慰金がかなり出されるのではないですか?」
「そうなのだけど、平民は一時金で渡すと金銭感覚が狂ってしまうのかもしれないわ。貴族より平民の戦争遺児の方が進学できない者が圧倒的と聞いているから。でも仕組みを変えるのは簡単ではないから、皇太后様が支援し始めたのを引き継いでいるのよ」
「なるほど・・・」

 何かメモをしている。

「それが何か?」
「はい。視察に行った孤児院で、成長して孤児院を出されるこどもは後ろ盾なく良い仕事に就けないと聞き、何か打てる手立てはないものかと母上のチャリティーを思い出したのです」
「そう。それでエルロールは今何をしようと考えているのかしら」
「まず読み書きを教える教室を作り、教師を充てがいます。そしてそこは近隣の平民のこどもも受け入れられるようにしたいと思っています」
「その費用はどこから?」
「当面は私の私財を充てるつもりですが、資金はあるほどよいと思いますのでチャリティーを開催したいです。いずれは国庫の予算でこどもの教育支援金を得たいと思いますが、時間がかかるでしょうからそれまでは」

 パリスはエルロールをじっと見つめた。
三王子と王女の四人を生んだ母にはとても見えない若々しい美しさを持つパリスは、聡明な王妃だった。

「何故急にそのようなことに興味を持つようになったのかしら」
「孤児院に視察に行ったとき、こどもたちと仲良くなったので、その後も菓子や本を持って様子を見に行くようになりました」

 ─嘘ではない─

 メリンダについて訊かれたくないので、少し誤魔化しながら話を続ける。

「仕事の絵本を持って行ったところ、初めて孤児が良い仕事に就く難しさを聞き、何とかしてやりたいものだと。こどもたちが親を失くしたのはこどもたちの責任ではないのに、悲しい思いをした上に未来まで厳しいなど気の毒すぎます。もちろんこの孤児院だけではなく、国内の孤児院全体に手を広げて行きたいとは考えています」
「そう。国内すべてというと大変だけれど、弱き民を守り彼らを幸せに導くのは王族が率先してやるべきことだと思うわ。では私も力を貸しましょう」
「母上!ありがとうございます!」

 図らずしてテューダーも土地所有者を見つけ、勝手に交渉してきた。

「もともとはもっと広い土地だったそうですが、分けて売り払っているうちに中途半端な広さになって困っていたそうで。まとめて買ってくれるならすぐ売りたいと言ってました」
「価格は常識的なものか?」
「まあ、相場でしょ」
「では買おう」

 エルロールの名で買うわけにはいかないので代理でテューダーが買い主となる。

「建物を建てる大工は土地の者に頼んでくれ。その地域に利益還元できる者を選ぶように」
「お任せください」
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