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29 公爵は皮算用にほくそ笑む
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「すごいことになりましたよ、リイサ様ーっ!」
ソルベート・ノートリアを見送り、ガゼボに戻るとホートンが興奮して我慢できなくなったように叫びだした。
「ええ、本当にすごいことになってしまったわ」
「どのくらい儲かるんだろう?しかも権利を二十年も保護してくれるそうですよ!」
「ホートン男爵も知らなかったの?」
「商品の開発はしたことがなかったですからね」
ふたりは薄暗くなるまでガゼボで冷めた茶を前に喋りまくっていた。
「リィ?リイサ!」
父の声にハッとして立ち上がると、すぐ側までライザックが様子を見に来ていた。
「お父様、どうなさいました?」
リイサの言葉にライザックは呆れた顔を見せるとリイサを叱った。
「どうなさいましたではない!暗くなろうというのに客人とガゼボで話し込んでいると、侍女たちが心配しておる」
「あ!いやだごめんなさい」
まわりに立つ侍女たちが遠巻きに覗き込んでいたことに、気づいていなかったのだ。
「彼は?」
「前にお話いたしました、印刷工房のホートン男爵ですわ」
「ボージュ・ホートン男爵です」
「ああ、リイサを手伝ってくれているそうだな、礼をいう。しかし使用人たちがいてもこの時間までふたりでというのは」
小言を言おうとしていた父の気配を察したリイサが、話を遮る。
「それよりお父様聞いてください!ホートン男爵からお話して」
「財務大臣補佐のノートリア様から、財務省全体でリイサ様の複式帳簿を採用するとお話があったのです!」
ライザックが、ストップモーションのようにゆっくり、しかしなめらかではないためカクカクと動く。かと思うと突然叫んだ!
「なに?財務省全体で採用だと?それはすごい利益じゃないかリィ!信じられん金が転がり込むぞ」
「ええ、ホートン男爵が財務省に売り込んでくれたのですわ、素晴らしいでしょう?」
ライザックがホートンの手を握る。
「ああ、君は素晴らしい!」
「いえリイサ様の複式帳簿が素晴らしいからこそでございますよ、サレンドラ公爵閣下」
ミイラ取りがミイラになるとはよく言ったもので、いつしかライザックも座り込み、ギラギラと金儲けの話にのめり込んでいた。
結局ミラ夫人が、夕暮れの冷えた風吹くガゼボで話し込むなんてと三人を叱るまで、商売の話で盛り上がりまくり、ホートンは夕食にも招かれて楽しい夜を過ごすことになった。
サレンドラ公爵家は国内にいくつかある公爵の中でも上位に位置し、経済力も上から二番目という力のある貴族だが、ホートンは違う。
古くは伯爵家であったが、功績を上げることが叶わずに少しづつ力を落とし、領地は召し上げられ、唯一残された爵位も男爵まで降爵した没落貴族である。
かつての人脈で、王宮で使用する書式のほんの一部を納入する印刷工房を経営し、細々と生き長らえてきたが、一発大逆転の好機が巡ってきたのだから興奮しないわけがない。
「では領地はなく文官でもないのか?」
「はい、お恥ずかしながら」
「そうか、じゃあうちに来れば良い。召し抱えよう」
ソルベート・ノートリアを見送り、ガゼボに戻るとホートンが興奮して我慢できなくなったように叫びだした。
「ええ、本当にすごいことになってしまったわ」
「どのくらい儲かるんだろう?しかも権利を二十年も保護してくれるそうですよ!」
「ホートン男爵も知らなかったの?」
「商品の開発はしたことがなかったですからね」
ふたりは薄暗くなるまでガゼボで冷めた茶を前に喋りまくっていた。
「リィ?リイサ!」
父の声にハッとして立ち上がると、すぐ側までライザックが様子を見に来ていた。
「お父様、どうなさいました?」
リイサの言葉にライザックは呆れた顔を見せるとリイサを叱った。
「どうなさいましたではない!暗くなろうというのに客人とガゼボで話し込んでいると、侍女たちが心配しておる」
「あ!いやだごめんなさい」
まわりに立つ侍女たちが遠巻きに覗き込んでいたことに、気づいていなかったのだ。
「彼は?」
「前にお話いたしました、印刷工房のホートン男爵ですわ」
「ボージュ・ホートン男爵です」
「ああ、リイサを手伝ってくれているそうだな、礼をいう。しかし使用人たちがいてもこの時間までふたりでというのは」
小言を言おうとしていた父の気配を察したリイサが、話を遮る。
「それよりお父様聞いてください!ホートン男爵からお話して」
「財務大臣補佐のノートリア様から、財務省全体でリイサ様の複式帳簿を採用するとお話があったのです!」
ライザックが、ストップモーションのようにゆっくり、しかしなめらかではないためカクカクと動く。かと思うと突然叫んだ!
「なに?財務省全体で採用だと?それはすごい利益じゃないかリィ!信じられん金が転がり込むぞ」
「ええ、ホートン男爵が財務省に売り込んでくれたのですわ、素晴らしいでしょう?」
ライザックがホートンの手を握る。
「ああ、君は素晴らしい!」
「いえリイサ様の複式帳簿が素晴らしいからこそでございますよ、サレンドラ公爵閣下」
ミイラ取りがミイラになるとはよく言ったもので、いつしかライザックも座り込み、ギラギラと金儲けの話にのめり込んでいた。
結局ミラ夫人が、夕暮れの冷えた風吹くガゼボで話し込むなんてと三人を叱るまで、商売の話で盛り上がりまくり、ホートンは夕食にも招かれて楽しい夜を過ごすことになった。
サレンドラ公爵家は国内にいくつかある公爵の中でも上位に位置し、経済力も上から二番目という力のある貴族だが、ホートンは違う。
古くは伯爵家であったが、功績を上げることが叶わずに少しづつ力を落とし、領地は召し上げられ、唯一残された爵位も男爵まで降爵した没落貴族である。
かつての人脈で、王宮で使用する書式のほんの一部を納入する印刷工房を経営し、細々と生き長らえてきたが、一発大逆転の好機が巡ってきたのだから興奮しないわけがない。
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「そうか、じゃあうちに来れば良い。召し抱えよう」
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