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35 両親の戸惑い
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「ソルベート様、おかえりなさいませ。そのまま執務室へお立ち寄りください、旦那様がお待ちです」
屋敷に帰るなり執事に言われて、ノートリア侯爵イルドレイドの元に連れて行かれた。
「ただいま戻りました」
「おかえりなさい、ソルベート」
執務室には侯爵夫人ラドルもにこにこと待ち受けていた。
「母上までどうなさいました?」
「ソルベート、ほらお待ちかねのものだ」
イルドレイドが手に持った書状を左右にふりふりとして見せると、あっ!と声を上げてそれを引ったくる。
封は開けられているが、サレンドラ公爵家からの書状だ。
急いで開き、中を見て。
「うっわ!やった、よーしっ!」
小さく拳を突上げるソルベートに、イルドレイドとラドル夫人は目玉を落とすのではないかというほど目を見開いた。
いつも斜に構えて、あいつはバカだこいつもバカだと人をバカにすることしか言わない息子が、何人もの婚約者を粉々に粉砕してきた息子が、婚約を承諾する書状を見てこどものような歓声を上げたのだから。
「あとは陛下の許可をいただくだけだな!」
ソルベートの母ラドルはまだ、頬を染めてとてもうれしそうに書状を指でなぞっているソルベートを、信じられないものを見たような顔で見つめているが、イルドレイドは少し落ち着きを取り戻し、ゴホゴホと咳をした。
「ん?父上風邪ですか?」
「違う。まさかおまえがそこまで喜ぶとは思わず、驚きすぎてむせただけだ」
「ははは、何を仰っているのやら。まだそんなことで咽るような年ではないでしょう?」
何を仰るとはこちらの台詞だと侯爵夫妻は思っていたが、ソルベートは浮かれているのか気づかないようだ。
─そんなにもサレンドラ公爵令嬢を気に入っていたのか!てっきり何かの悪巧みではないかと心配していたが、ソルベートもとうとう人並みに恋をしたんだ!よかった、本当によかった!─
息子が見せた人間味ある姿に両親はほっと胸を撫で下ろしたが、ソルベートの胸中はまったく違う。
─よし!あの複式帳簿を他の省でも導入させて、リイサ嬢をもっと富ませ、名を挙げさせようではないか。
そうだ、リイサ嬢に商会を作るよう進言しよう。ホートン男爵の印刷工房ではやれることなどたかが知れているが、サレンドラと我がノートリアで出資して商会を起こせば、存分に力をふるえるぞ!─
リイサは既に商会作りに踏み出していたが、そうとは知らないソルベートはリイサの作り出すものをバックアップしてどこまで押し上げられるか、自らの力で試してみたいと思っていたのだ。
屋敷に帰るなり執事に言われて、ノートリア侯爵イルドレイドの元に連れて行かれた。
「ただいま戻りました」
「おかえりなさい、ソルベート」
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「母上までどうなさいました?」
「ソルベート、ほらお待ちかねのものだ」
イルドレイドが手に持った書状を左右にふりふりとして見せると、あっ!と声を上げてそれを引ったくる。
封は開けられているが、サレンドラ公爵家からの書状だ。
急いで開き、中を見て。
「うっわ!やった、よーしっ!」
小さく拳を突上げるソルベートに、イルドレイドとラドル夫人は目玉を落とすのではないかというほど目を見開いた。
いつも斜に構えて、あいつはバカだこいつもバカだと人をバカにすることしか言わない息子が、何人もの婚約者を粉々に粉砕してきた息子が、婚約を承諾する書状を見てこどものような歓声を上げたのだから。
「あとは陛下の許可をいただくだけだな!」
ソルベートの母ラドルはまだ、頬を染めてとてもうれしそうに書状を指でなぞっているソルベートを、信じられないものを見たような顔で見つめているが、イルドレイドは少し落ち着きを取り戻し、ゴホゴホと咳をした。
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そうだ、リイサ嬢に商会を作るよう進言しよう。ホートン男爵の印刷工房ではやれることなどたかが知れているが、サレンドラと我がノートリアで出資して商会を起こせば、存分に力をふるえるぞ!─
リイサは既に商会作りに踏み出していたが、そうとは知らないソルベートはリイサの作り出すものをバックアップしてどこまで押し上げられるか、自らの力で試してみたいと思っていたのだ。
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