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第19話 ホートン男爵の計画
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ホートン男爵が印刷工房の経理係ジョニティ・ランフを連れてサレンドラ公爵家を日参し、リイサから複式簿記や伝票の記帳、そろばんの使い方を学び始めて二月。
「もうあとはわからないことがあるときに聞くだけで大丈夫じゃありませんこと?」
リイサのお墨付きを貰って、ホートンとジョニティは朗らかに笑った。
「最初は本当に難しくてどうなるかと思ったんですが、今となったら前の帳簿には戻れませんね。これなら税吏が査察に来ても胸を張っていられますよ」
初めて学ぶ複数帳簿の概念を理解することに苦労したジョニティだったが、それを乗り越えたあとはリイサも驚くほどの速さでそろばんも習得した。
手計算しかないこの世界では、計算ができる者は大変に重宝がられ、良い職につくことができる。
その中でもその能力の高さからトップエリートに位置しているのが会計と税吏の専門文官だ。
どちらも財務大臣の管理下にあるが、会計文官は王宮や各貴族の収支や予算配分に逸脱行為がないか、横領流用などの犯罪調査などを、かたや税吏は貴族だけでなく、税収に影響のある大きな商会の収支に対しても、納められた税額が正しいものかの査察を行っている。
嫌われるのはどちらも同じだが、会計査察は横領と言った犯罪行為がなければ口頭注意で済むが、税吏査察は違う。
重箱の隅を突付いた税吏文官が怪しいと思えば、白を黒とされてしまうのはよくあることだった。
そもそも疑われないような帳簿の作成、そして査察に入られても慌てることなく整理された証拠を素早く提示できれば、あの不愉快な査察官を気分良く送り返すことができるだろう。
「だからこれを知れば導入したい者はたくさん現れると思いますよ」
そして売る方にとって複式帳簿のよいところは、ある程度学ばなければ正しい記入ができないことだ。
「リイサ様とその薫陶を受けた我らが講師となり、ともに直接教えることで我らの人脈も飛躍的に拡がるぞ!帳面と伝票の販売利益と講座の授業料そして、新たに得られる人脈から商売がさらに広がるに違いない」
「どこを切り取っても儲かることしか想像できませんね」
「ああ!本当にこれを自分でお考えになられたリイサ様は天才だ!紹介してくれたアラニーにも本当に感謝してもしきれないな」
にやにやと笑うホートンだが、準備を整える二ヶ月の間にどこにこれを持ち込むか計画を立ててきた。
一番に持っていくところは決まっている。
とても傲慢で嫌な男で、できれば会いたくないし話しもしたくないのだが、残念ながらこれをもっとも高く評価するのもきっとその男だと自信を持って言えた。
最初アポイントを取ろうとした際、下の者に言えと一度断られたのだが、これを見ないと損をすると強気の書状を出したところ、もし時間の無駄だったら財務省から締め出してやると書かれた返事が返ってきた。
「ほっんとうに、ノートリア卿ってなんてイヤな奴なんだ!しかし見てろよ、私の話しを聞いて良かった、取引したいと言わせてやるからな」
「もうあとはわからないことがあるときに聞くだけで大丈夫じゃありませんこと?」
リイサのお墨付きを貰って、ホートンとジョニティは朗らかに笑った。
「最初は本当に難しくてどうなるかと思ったんですが、今となったら前の帳簿には戻れませんね。これなら税吏が査察に来ても胸を張っていられますよ」
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そもそも疑われないような帳簿の作成、そして査察に入られても慌てることなく整理された証拠を素早く提示できれば、あの不愉快な査察官を気分良く送り返すことができるだろう。
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そして売る方にとって複式帳簿のよいところは、ある程度学ばなければ正しい記入ができないことだ。
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最初アポイントを取ろうとした際、下の者に言えと一度断られたのだが、これを見ないと損をすると強気の書状を出したところ、もし時間の無駄だったら財務省から締め出してやると書かれた返事が返ってきた。
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