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62 思い出し笑い
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あの事件があった日。
「おモテになりますのね」
リイサが言うと、ソルベートは真っ赤になって一生懸命に言い訳をした。
「かわいかった!あんな顔をなさるなんて。ふふふっ」
また笑ってしまう。
おかしいからではない。
ソルベートがリイサを誰よりも美しいと、優秀であると、自分の隣りに相応しい令嬢だと皆の前で公言したことを思い出して、ひとり照れているのだ。
「なんだ、思い出し笑いなどして」
メルトニウスにからかわれる。
「聞いたぞ、ソルベート殿の爆弾発言。婚約者の名誉を守るためにと言っても、ああいう場でそれだけ言い放てるのは本当に本気でリイサに惚れているということだろう、とさすがの私でも認めざるを得ない」
「まあお兄様ったら。ソルベート様はやさしくて愛情深い方ですわよ」
「どうやらおまえにだけはそうらしいな。しかし、相手の令嬢には虫けらが烏滸がましいと言ったのだろう?」
堪える気もないメルトニウスが、おかしそうにくつくつと笑い出す。
「虫けらっていうところが、いかにもソルベート殿らしいな」
とうとうあっはっはっと大声で笑い転げたメルトニウスを見ながら考える。
リイサは本当はソルベートが何かある度に「虫けら」と言うのをやめさせたいと思っていたが、今回のことで時と場合によると思い直した。
ソルベートがあの令嬢に「虫けらめ!」と言い放ったとき、溜飲が下がるというか、実にスッキリしたのだ。
「私もソルベート様のように傲慢と言われないように気をつけなくては!」
そう言いつつも、クールな婚約者がいつしか育てていた深い想いを知って胸が熱くなる。
「顔が赤いぞ。熱でもあるのではないか?今日はいろいろ疲れただろうから、早くやすめ」
兄らしい気遣いに、リイサは部屋へ戻っていった。
「はあ。本当に今日はいろいろびっくりだったわ」
独り言が部屋に響き、心のうちが口から漏れ出ていたことに気づいて苦笑いを浮かべた。
「ふふ」
この世界で初めて目覚めたとき貴族なんて絶対に無理だと思ったが、思いの外うまく順応している。前世で学んだことはあくまでも資格の受験勉強に過ぎなかったが、完全でなくともソルベートやホートンと相談すればこの世界に適応した形にふたりがアレンジしてくれるから、常々の学びを怠りさえしなければ十分にやっていけると自信を持つことができた。
そういえばケチケチした自分はどこかにいってしまったが、だからといって浪費家ではない。
貴族として必要な金、そう以前の李依紗の世界なら中古の狭小マンションなら買えるほどの凄まじく贅沢なドレスだって、公爵家の力を示すためには買ってみせる、あくまでも社交や接待に必要な分だけだが。
自室で使うだけの物は変わらず質素倹約。
だから毎月自分に割り当てられている金も使い切れず、サリンドン商会や他の気に入った新興商会の後ろ盾となって投資して、利ざやを稼いでいる。
「やりたいことがやりたいだけできるって、ほんっと楽し・・い・・・・」
柔らかく暖かな羽根布団に包まると、すうっと寝息をたてた。
「おモテになりますのね」
リイサが言うと、ソルベートは真っ赤になって一生懸命に言い訳をした。
「かわいかった!あんな顔をなさるなんて。ふふふっ」
また笑ってしまう。
おかしいからではない。
ソルベートがリイサを誰よりも美しいと、優秀であると、自分の隣りに相応しい令嬢だと皆の前で公言したことを思い出して、ひとり照れているのだ。
「なんだ、思い出し笑いなどして」
メルトニウスにからかわれる。
「聞いたぞ、ソルベート殿の爆弾発言。婚約者の名誉を守るためにと言っても、ああいう場でそれだけ言い放てるのは本当に本気でリイサに惚れているということだろう、とさすがの私でも認めざるを得ない」
「まあお兄様ったら。ソルベート様はやさしくて愛情深い方ですわよ」
「どうやらおまえにだけはそうらしいな。しかし、相手の令嬢には虫けらが烏滸がましいと言ったのだろう?」
堪える気もないメルトニウスが、おかしそうにくつくつと笑い出す。
「虫けらっていうところが、いかにもソルベート殿らしいな」
とうとうあっはっはっと大声で笑い転げたメルトニウスを見ながら考える。
リイサは本当はソルベートが何かある度に「虫けら」と言うのをやめさせたいと思っていたが、今回のことで時と場合によると思い直した。
ソルベートがあの令嬢に「虫けらめ!」と言い放ったとき、溜飲が下がるというか、実にスッキリしたのだ。
「私もソルベート様のように傲慢と言われないように気をつけなくては!」
そう言いつつも、クールな婚約者がいつしか育てていた深い想いを知って胸が熱くなる。
「顔が赤いぞ。熱でもあるのではないか?今日はいろいろ疲れただろうから、早くやすめ」
兄らしい気遣いに、リイサは部屋へ戻っていった。
「はあ。本当に今日はいろいろびっくりだったわ」
独り言が部屋に響き、心のうちが口から漏れ出ていたことに気づいて苦笑いを浮かべた。
「ふふ」
この世界で初めて目覚めたとき貴族なんて絶対に無理だと思ったが、思いの外うまく順応している。前世で学んだことはあくまでも資格の受験勉強に過ぎなかったが、完全でなくともソルベートやホートンと相談すればこの世界に適応した形にふたりがアレンジしてくれるから、常々の学びを怠りさえしなければ十分にやっていけると自信を持つことができた。
そういえばケチケチした自分はどこかにいってしまったが、だからといって浪費家ではない。
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自室で使うだけの物は変わらず質素倹約。
だから毎月自分に割り当てられている金も使い切れず、サリンドン商会や他の気に入った新興商会の後ろ盾となって投資して、利ざやを稼いでいる。
「やりたいことがやりたいだけできるって、ほんっと楽し・・い・・・・」
柔らかく暖かな羽根布団に包まると、すうっと寝息をたてた。
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