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シルベスでの出会い

第1話

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タイトルを章ごとに1話~変更しました。

■□■

 思い立ったら早いカーラは、素早く身支度を済ませると、皆で馬車に飛び乗った。
ローリス辺境伯家に口出しされないように、あっという間に姿を消したのだ。


「シルベスまではどのくらいかかるのかしら」
「朝ここを出たら、宿の夕食に余裕で間に合いますよ」

 土地勘のあるトイルが答える。

「じゃあボビン、夕食はシルベスで!」

 ボビンが御者、護衛騎士たちは馬に乗り、馬車を守りながら進む道中は特にこれということも起きず、順調すぎるほどスイスイとシルベスに到着した。
 ちょうど日が暮れたところである。
 馬たちも砂埃の中を頑張ってくれたので、角砂糖をご褒美に差し出してやると、大喜びで噛み砕いた。




 四人の護衛は町の入口で馬車を守る者とカーラたちと宿を探す者に二手に分かれ、ボビンと侍女とカーラは歩いて町に入った。
 そろそろ陽もおちるかと振り返ると、遠く砂漠の地平線近くに陽の名残りがぼやけており、落陽を見逃したらしい。
町には早くもいくつもの街灯が建てられて、まるで昼のように賑わっている。


「すごいわ!シルベスってどこもこんなに栄えているの?」
「いいえ、田舎もありますよ。ここの領主のヴァーミル侯爵はすごくやり手と評判なので、他の地域より発展しているのではありませんか」
「ボビン、詳しいわね」
「そりゃあ勉強してますからね。情報に明るくなければ、探索中に大切な物を見逃すかもしれないですし」

納得するカーラ。

「ということはこの素敵な町はご領主様の手腕のお陰ってことなのね」
「そのとおりでございます!」

 延々と話を続けそうなふたりにエイミが割り込んだ。

「それなら今回はここで宿を探して滞在しましょう!」




 宿も素敵なところを見つけ出した。
 部屋のカーテンが可愛らしいシアーなピンク色の上、猫足の家具がたまらなく可愛いのだ!

「ねえ、ここって最高級の宿だったかしら?」
「いえ、お値段的にはごく普通ですね」
「ううー、シルベス恐るべしだわ!正直、ローリスから一日もかからないでこんなに素敵な町に着くって知っていたら、多少無理してもローリスを通り過ぎて足を延ばすわよね。・・・私だってローリスよりシルベスに住みたいと思ってしまうくらいだわ」
「カーラさま!」

 ナラの嗜めるような口調に、カーラは肩を竦めて「わかってる」と呟いた。



「カーラ様、今夜は早く寝て、明日私のお気に入りの店にご案内しますわ」

 話題を変えたいと、トイルがヘアアクセサリーの話を始めると、さっきまでしょぼんとしていたカーラが途端に元気を取り戻し、エイミとナラも、トイルの道具箱の中からピンを持ち出して、あれが欲しいこれが欲しいと、リクエストし始めて収拾がつかなくなってくる。

「じゃあ、このピンを最初に買いに行き、次にこちらの留めピンを、次は花飾りの店に行って」

 大盛り上がりの中、護衛騎士のルブが失言を吐いた。

「お、おいおい!いちいち別の店で買うというのか?一つの店で十分だろう、たかが髪留めではないか!」
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