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ローリスの秘密
第4話
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国王陛下に至急の謁見を申し込んだビルスは、使いが戻るとすぐ、ボビンが持ち帰った資料を懐に登城した。
ケイルとボビンを連れて。
「コーテズの太陽に拝謁を」
「ああ、それはいいからこちらへ」
国王は謁見の間の奥にビルスたちを手招きして呼び込むと、分厚い扉を閉め切った。
「早く座れ」
「陛下ここは」
「完全防音されておる、盗聴はできん。こんなにも急ぎ謁見を求めるとは、よほどのことがあったに違いないと思うてな」
「まさに」
「カーラはローリスに行っているのだろう?」
「はい。カーラにつけた影がこちらを持ち帰りまして」
変色した紙束を受け取った王は、サッと目を通したあと、もう一度時間をかけて読み直し、目尻をひくひくとさせながらバサリと資料をテーブルに投げつけた。
「・・・・・・シルバーの髪?」
「陛下」
考え込む国王にビルスが声をかけると、堰を切ったように話しだした。
「これは由々しき事態だ!先王が身内故と、甘い処断を行ったばかりにマトウの奴め!
これは不敬どころではない、国王を謀り、最早反逆ではないか?」
あまりにも重い問いに、さすがのビルスも答えを躊躇う。
─反逆ではないか?─
ビルスの頭の中で、その言葉が繰り返されている。
王が求める答えはイエスしかないとわかっていたが、自分の言葉が王を決断に導くのは違うと。
促す視線に抵抗し、最後まで答えはしなかった。
「はあ、もうよい」
ビルスの言葉を先に諦めたのは国王の方だった。
「マトウたちを謀反の意ありとして裁くために、証拠を揃えろ」
答えを返さなかったことに怒ってはいないらしい。
「では再度ローリス父子を登城させていただけませんか?辺境で態勢を整えられたら厄介ですから・・・カーラたちがあちらにいて人質に取られても困りますし」
「登城させたら、証拠を押さえられるか?」
「こちらの者はカーラ付きですが、あのノーランの耳に黒子がないのを確認したそうですから、右耳を見れば証拠となるのではないでしょうか」
既に黒子が無いことを確認していると知り、国王が安堵の息を吐きながら忘れ物に気がついた。
「あれが身代わりの偽物なら本物の息子はどうなったのだろう?生死は不明なままか?」
ノーランは夫人に連れ去られたきり、どうやっても見つからなかった。当の夫人もだ。
それまでは外国人としか知られていなかったが、女医の記録からシルベス人だと目星をつけることができたのは収穫だろう。
「しかしいまさら見つかってもシルベス人として育ったなら、我が国の国防を担う、それもマトウが汚した辺境伯家を任せるのは荷が重過ぎるな」
こどもを見つけたら連座を問うつもりなのだとビルスは思ったのだが、そうではないらしい。
「では、もし見つかったとしても連座は問わないと?」
「ああ。たまたまマトウの血が半分流れているだけだ。今となってはむしろ気の毒なこどもではないか?」
国王は肩を竦める。
「まったく。先王が甘やかしたから頭に乗りおって」
そう。嫡子の自分より可愛がっているのではと疑うほど、先王である父がマトウに目をかけるのを苦々しい気持ちで見ていたのだった。
ケイルとボビンを連れて。
「コーテズの太陽に拝謁を」
「ああ、それはいいからこちらへ」
国王は謁見の間の奥にビルスたちを手招きして呼び込むと、分厚い扉を閉め切った。
「早く座れ」
「陛下ここは」
「完全防音されておる、盗聴はできん。こんなにも急ぎ謁見を求めるとは、よほどのことがあったに違いないと思うてな」
「まさに」
「カーラはローリスに行っているのだろう?」
「はい。カーラにつけた影がこちらを持ち帰りまして」
変色した紙束を受け取った王は、サッと目を通したあと、もう一度時間をかけて読み直し、目尻をひくひくとさせながらバサリと資料をテーブルに投げつけた。
「・・・・・・シルバーの髪?」
「陛下」
考え込む国王にビルスが声をかけると、堰を切ったように話しだした。
「これは由々しき事態だ!先王が身内故と、甘い処断を行ったばかりにマトウの奴め!
これは不敬どころではない、国王を謀り、最早反逆ではないか?」
あまりにも重い問いに、さすがのビルスも答えを躊躇う。
─反逆ではないか?─
ビルスの頭の中で、その言葉が繰り返されている。
王が求める答えはイエスしかないとわかっていたが、自分の言葉が王を決断に導くのは違うと。
促す視線に抵抗し、最後まで答えはしなかった。
「はあ、もうよい」
ビルスの言葉を先に諦めたのは国王の方だった。
「マトウたちを謀反の意ありとして裁くために、証拠を揃えろ」
答えを返さなかったことに怒ってはいないらしい。
「では再度ローリス父子を登城させていただけませんか?辺境で態勢を整えられたら厄介ですから・・・カーラたちがあちらにいて人質に取られても困りますし」
「登城させたら、証拠を押さえられるか?」
「こちらの者はカーラ付きですが、あのノーランの耳に黒子がないのを確認したそうですから、右耳を見れば証拠となるのではないでしょうか」
既に黒子が無いことを確認していると知り、国王が安堵の息を吐きながら忘れ物に気がついた。
「あれが身代わりの偽物なら本物の息子はどうなったのだろう?生死は不明なままか?」
ノーランは夫人に連れ去られたきり、どうやっても見つからなかった。当の夫人もだ。
それまでは外国人としか知られていなかったが、女医の記録からシルベス人だと目星をつけることができたのは収穫だろう。
「しかしいまさら見つかってもシルベス人として育ったなら、我が国の国防を担う、それもマトウが汚した辺境伯家を任せるのは荷が重過ぎるな」
こどもを見つけたら連座を問うつもりなのだとビルスは思ったのだが、そうではないらしい。
「では、もし見つかったとしても連座は問わないと?」
「ああ。たまたまマトウの血が半分流れているだけだ。今となってはむしろ気の毒なこどもではないか?」
国王は肩を竦める。
「まったく。先王が甘やかしたから頭に乗りおって」
そう。嫡子の自分より可愛がっているのではと疑うほど、先王である父がマトウに目をかけるのを苦々しい気持ちで見ていたのだった。
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