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夢は交錯する
第34話
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ヴァーミル侯爵夫人キャメイリアの茶会が催される日。
ディルドラほどではないものの、僅かな時間の猛特訓で何とか形を作れるようになったトイルに、小ぶりなフラワースタイルを仕上げてもらい、お気に入りの水色のデイドレスで武装した。
商品とする予定のピンやカンザシのセットを手土産にして。
「トイル!こんなにできるならディルドラにやってもらわなくてもよかったのに」
鏡の中の、金髪で作られた美しい花を鑑賞したカーラに、トイルが返す。
「ディルドラ先輩は髪を縛らず、すべてピンのみで仕上げているのですわ。パッと見は似ていても、私は一度毛束を結わえ、ベースを作らないとできません」
「それって何が違うの?」
「ピンだけで作る方がはるかに難しいです、崩れやすいし」
悔しそうにそう答えるトイルだが、きっとそう遠くないうちにディルドラを超してくれるに違いない。カーラはそう信じて告げた。
「私はトイルのスタイルの方が好きだわ。よく動き回るコーテズの人間にとっては、踊っても崩れない方がずっと大切だし、時間もトイルの方がすっごく早かったもの!ヘアサロンでお客様にセットして差し上げるとしたら、ディルドラのは時間かかりすぎだし、高すぎ。それで崩れてしまうなんてサイアクよ。
トイルのやり方なら早く仕上がって、しかも崩れにくいのでしょ?それなら私はトイルにこれを極めてほしいわ。
私のヘアサロンの責任者はトイルにお願いするつもりだから」
「は?」
「コーテズ中にトイル・ツッツィの名を轟かせるんでしょ?」
呆気にとられたトイルに、ナラたちもにっこりと笑って頷く。
ディルドラに大口を叩いたトイルの背中を、カーラが押していると気がついて目を見張った。
「は、はいっ!私、頑張りますっ」
そんなわけで意気揚々とカーラを仕上げたトイルに見送られ、憧れのキャメイリアの元へ馬車を走らせる。
「お土産の確認は大丈夫かしら」
「はい、心配ならご覧になりますか?」
シーズン公爵家の紋章が刺繍されたシルクのハンカチに、ピンと小さな宝石がついたカンザシを包み、リボンを結んだ物がいくつも籠に入れられている。
リボンの色は三種類で、カンザシの宝石の色がわかるようにしてあった。
「キャメイリア様には三つともお渡ししたいわ。全部で何人くらいいらっしゃるのかしらね」
キャメイリアの親しい内々の者ばかりと聞いたが、人数までは不明のため、かなり多めに包みを作ってきたのだが。
ヴァーミル侯爵家に着くと、すぐに庭へ通された。
既に数名の女性が着席しており、やはり殆どが銀髪だ。カーラの足音に気づいて振り向くと、皆一様にまっ白い肌と淡い青や緑の瞳をしていて、シルベス人だということがわかる。一人だけ、金髪の女性がいた。
「ごきげんよう、カーラ様!お出迎えに遅れて申し訳ございませんでしたわ」
「ごきげんようキャメイリア様、お招きに預かりとってもうれしかったですわ。お迎えのことはどうかお気になさらずに」
「ありがとうございます」
ほわっと笑んだキャメイリアは、淡桃の挿し色が入った白薔薇のようだと、カーラは見惚れてしまう。
「リア様、その方がお話しの方ですか?」
金髪の女性が声をかけた。
「ええ、ご紹介いたしますわね、コーテズからいらしたシーズン公爵家のカーラ様ですわ」
「「「「「ごきげんよう」」」」」
コーテズの貴族が月と詠う、美しいシルベスの貴婦人たちが一斉に立ち上がり、礼をした。
ディルドラほどではないものの、僅かな時間の猛特訓で何とか形を作れるようになったトイルに、小ぶりなフラワースタイルを仕上げてもらい、お気に入りの水色のデイドレスで武装した。
商品とする予定のピンやカンザシのセットを手土産にして。
「トイル!こんなにできるならディルドラにやってもらわなくてもよかったのに」
鏡の中の、金髪で作られた美しい花を鑑賞したカーラに、トイルが返す。
「ディルドラ先輩は髪を縛らず、すべてピンのみで仕上げているのですわ。パッと見は似ていても、私は一度毛束を結わえ、ベースを作らないとできません」
「それって何が違うの?」
「ピンだけで作る方がはるかに難しいです、崩れやすいし」
悔しそうにそう答えるトイルだが、きっとそう遠くないうちにディルドラを超してくれるに違いない。カーラはそう信じて告げた。
「私はトイルのスタイルの方が好きだわ。よく動き回るコーテズの人間にとっては、踊っても崩れない方がずっと大切だし、時間もトイルの方がすっごく早かったもの!ヘアサロンでお客様にセットして差し上げるとしたら、ディルドラのは時間かかりすぎだし、高すぎ。それで崩れてしまうなんてサイアクよ。
トイルのやり方なら早く仕上がって、しかも崩れにくいのでしょ?それなら私はトイルにこれを極めてほしいわ。
私のヘアサロンの責任者はトイルにお願いするつもりだから」
「は?」
「コーテズ中にトイル・ツッツィの名を轟かせるんでしょ?」
呆気にとられたトイルに、ナラたちもにっこりと笑って頷く。
ディルドラに大口を叩いたトイルの背中を、カーラが押していると気がついて目を見張った。
「は、はいっ!私、頑張りますっ」
そんなわけで意気揚々とカーラを仕上げたトイルに見送られ、憧れのキャメイリアの元へ馬車を走らせる。
「お土産の確認は大丈夫かしら」
「はい、心配ならご覧になりますか?」
シーズン公爵家の紋章が刺繍されたシルクのハンカチに、ピンと小さな宝石がついたカンザシを包み、リボンを結んだ物がいくつも籠に入れられている。
リボンの色は三種類で、カンザシの宝石の色がわかるようにしてあった。
「キャメイリア様には三つともお渡ししたいわ。全部で何人くらいいらっしゃるのかしらね」
キャメイリアの親しい内々の者ばかりと聞いたが、人数までは不明のため、かなり多めに包みを作ってきたのだが。
ヴァーミル侯爵家に着くと、すぐに庭へ通された。
既に数名の女性が着席しており、やはり殆どが銀髪だ。カーラの足音に気づいて振り向くと、皆一様にまっ白い肌と淡い青や緑の瞳をしていて、シルベス人だということがわかる。一人だけ、金髪の女性がいた。
「ごきげんよう、カーラ様!お出迎えに遅れて申し訳ございませんでしたわ」
「ごきげんようキャメイリア様、お招きに預かりとってもうれしかったですわ。お迎えのことはどうかお気になさらずに」
「ありがとうございます」
ほわっと笑んだキャメイリアは、淡桃の挿し色が入った白薔薇のようだと、カーラは見惚れてしまう。
「リア様、その方がお話しの方ですか?」
金髪の女性が声をかけた。
「ええ、ご紹介いたしますわね、コーテズからいらしたシーズン公爵家のカーラ様ですわ」
「「「「「ごきげんよう」」」」」
コーテズの貴族が月と詠う、美しいシルベスの貴婦人たちが一斉に立ち上がり、礼をした。
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