猫が私に

みちづきシモン

文字の大きさ
5 / 5

タロ達との思い出

しおりを挟む
 タロ達との生活の思い出。中学生の時だ。
 休日の昼間、トラが椅子に座ってる私の膝に乗ってきた。そしてそのまま気持ち良さそうに眠る。
「ふふ、今日はトラ?」
 すると、タロとタマも寄ってきた。
「あらら、私の膝は満席よ」
 にゃあにゃあと鳴くタマは私の足にスリスリしてきた。
「仕方ないなぁ」
 トラを抱え床に座り、トラを膝に乗せ、タマを撫でてあげた。
 するとタロもスリスリしてくる。両手いっぱいでタロとタマの相手をする。
 背後に気配を感じた。クロだ。
「もー、甘えん坊さんたちなんだから」
すると、
「鮎ちゃん、お腹がすいたよ」
 声がした。私は声のした方を睨みつけた。
「パパでしょ? 今の」
「あはは、バレたか」
「タロたちにはさっきご飯あげたもの」
「それにしても人気者だなー鮎香は。羨ましい。それに、声も聞こえる時があるときた」
「時々だよ。時々」
「それでも、羨ましいよ。パパも話してみたいもんだ。タロたちがなんて言ってるか知りたいよ」
「だからダメなんじゃない? タロたちは、私に伝えたい時に伝える。気まぐれなんだもの。聞きたい聞きたいじゃ相手にしてもらえないわ」
「なるほどね」
 パパは肩を落としてトボトボと何か食べるものを作りに行った。
「お? なんだお前ら」
 いつの間にかタロとクロがパパにスリスリしていた。
「そうかそうか、俺も好きなんだな! お前らー!」
 パパはタロたちを優しく撫でてあげた。


 そんなタロ達ももういない。パパはタロ達を失った悲しみで仕事に手もつかない様だとママから聞いた。
 私は今実家に車で向かっている。ソラを連れて。
チャイムを鳴らすとママが出迎えてくれた。
「ママただいま!」
「おかえり鮎香。あら、そのキャリーバッグは?」
「私の大切な子がいるよ」
 中に入るとリビングにパパがいた。
「鮎香か、おかえり!」
「ただいまパパ! さて、と」
 私はキャリーバッグの入口を開けた。
「ソラ出ておいで」
「おお、この子がソラか!」
「まぁ! 可愛い子ね」
 パパもママもソラが怖がらないように少し離れて見ていた。
 私はソラを抱きかかえると、パパに抱かせた。
「おお、そうだ! この子はまだミルクか?」
「ううん、もう子猫用のキャットフードだよ」
 パパは生気が宿ったように、ソラを優しく撫でてあげた。
「はぁー、やっぱり猫はいいな!」
「ねぇあなた、また保護猫讓渡会にいかない? いい出会いがあるかもしれないわ」
「そうだなー、タロ達のことずっと引きずってたら、タロ達に申し訳ないよな」
「それがいいよ、元気になってくれてよかった」
 パパはタロ達が死んじゃった後、どこか元気がなかった。
 ママもペットロスで写真を見る度に泣いていた。
 そんな二人の殻を破るようにソラは戯れる。
 二人にもまた猫との暮らしが始まったらいいなと思う。

 いつかくる……ソラとも別れが、ね。その時私はどうなるだろう? また慌てふためいて、泣き崩れるのだろうか?
 多分そうならないだろうと思う。私はちゃんとタロ達ともお別れしてきた。
 忘れるわけではない。思い出として残すんだ。
 猫の寿命は人間よりも短い。だからこそ、今この時をしっかり心に残していこうと、私は誓ったんだ。
しおりを挟む
感想 1

この作品の感想を投稿する

みんなの感想(1件)

トド
2022.11.01 トド
ネタバレ含む
2022.11.01 みちづきシモン

ありがとうございます。

特に別れの部分に触れて頂き、嬉しく思います。

猫の話を書くにあたり、Twitter等で
愛猫達との別れをよく見かけていました。

それはどういった感情になるんだろうと予想して、どうやってもお涙頂戴にしかなりませんでした。

世の中には保護された猫を多頭飼いしてる方もいます。
その方達は、その数だけの別れを体験します。

それを描いてみた今作です。読んでもらえて嬉しいです!(((o(*゚▽゚*)o)))

ありがとうございます(*^^*)

解除

あなたにおすすめの小説

未来スコープ  ―キスした相手がわからないって、どういうこと!?―

米田悠由
児童書・童話
「あのね、すごいもの見つけちゃったの!」 平凡な女子高生・月島彩奈が偶然手にした謎の道具「未来スコープ」。 それは、未来を“見る”だけでなく、“課題を通して導く”装置だった。 恋の予感、見知らぬ男子とのキス、そして次々に提示される不可解な課題── 彩奈は、未来スコープを通して、自分の運命に深く関わる人物と出会っていく。 未来スコープが映し出すのは、甘いだけではない未来。 誰かを想う気持ち、誰かに選ばれない痛み、そしてそれでも誰かを支えたいという願い。 夢と現実が交錯する中で、彩奈は「自分の気持ちを信じること」の意味を知っていく。 この物語は、恋と選択、そしてすれ違う想いの中で、自分の軸を見つけていく少女たちの記録です。 感情の揺らぎと、未来への確信が交錯するSFラブストーリー、シリーズ第2作。 読後、きっと「誰かを想うとはどういうことか」を考えたくなる一冊です。

独占欲強めの最強な不良さん、溺愛は盲目なほど。

猫菜こん
児童書・童話
 小さな頃から、巻き込まれで絡まれ体質の私。  中学生になって、もう巻き込まれないようにひっそり暮らそう!  そう意気込んでいたのに……。 「可愛すぎる。もっと抱きしめさせてくれ。」  私、最強の不良さんに見初められちゃったみたいです。  巻き込まれ体質の不憫な中学生  ふわふわしているけど、しっかりした芯の持ち主  咲城和凜(さきしろかりん)  ×  圧倒的な力とセンスを持つ、負け知らずの最強不良  和凜以外に容赦がない  天狼絆那(てんろうきずな)  些細な事だったのに、どうしてか私にくっつくイケメンさん。  彼曰く、私に一目惚れしたらしく……? 「おい、俺の和凜に何しやがる。」 「お前が無事なら、もうそれでいい……っ。」 「この世に存在している言葉だけじゃ表せないくらい、愛している。」  王道で溺愛、甘すぎる恋物語。  最強不良さんの溺愛は、独占的で盲目的。

転生妃は後宮学園でのんびりしたい~冷徹皇帝の胃袋掴んだら、なぜか溺愛ルート始まりました!?~

☆ほしい
児童書・童話
平凡な女子高生だった私・茉莉(まり)は、交通事故に遭い、目覚めると中華風異世界・彩雲国の後宮に住む“嫌われ者の妃”・麗霞(れいか)に転生していた! 麗霞は毒婦だと噂され、冷徹非情で有名な若き皇帝・暁からは見向きもされない最悪の状況。面倒な権力争いを避け、前世の知識を活かして、後宮の学園で美味しいお菓子でも作りのんびり過ごしたい…そう思っていたのに、気まぐれに献上した「プリン」が、甘いものに興味がないはずの皇帝の胃袋を掴んでしまった! 「…面白い。明日もこれを作れ」 それをきっかけに、なぜか暁がわからの好感度が急上昇! 嫉妬する他の妃たちからの嫌がらせも、持ち前の雑草魂と現代知識で次々解決! 平穏なスローライフを目指す、転生妃の爽快成り上がり後宮ファンタジー!

極甘独占欲持ち王子様は、優しくて甘すぎて。

猫菜こん
児童書・童話
 私は人より目立たずに、ひっそりと生きていたい。  だから大きな伊達眼鏡で、毎日を静かに過ごしていたのに――……。 「それじゃあこの子は、俺がもらうよ。」  優しく引き寄せられ、“王子様”の腕の中に閉じ込められ。  ……これは一体どういう状況なんですか!?  静かな場所が好きで大人しめな地味子ちゃん  できるだけ目立たないように過ごしたい  湖宮結衣(こみやゆい)  ×  文武両道な学園の王子様  実は、好きな子を誰よりも独り占めしたがり……?  氷堂秦斗(ひょうどうかなと)  最初は【仮】のはずだった。 「結衣さん……って呼んでもいい?  だから、俺のことも名前で呼んでほしいな。」 「さっきので嫉妬したから、ちょっとだけ抱きしめられてて。」 「俺は前から結衣さんのことが好きだったし、  今もどうしようもないくらい好きなんだ。」  ……でもいつの間にか、どうしようもないくらい溺れていた。

童話短編集

木野もくば
児童書・童話
一話完結の物語をまとめています。

しょうてんがいは どうぶつえん?!

もちっぱち
児童書・童話
しょうがくせいのみかちゃんが、 おかあさんといっしょに しょうてんがいにいきました。 しょうてんがいでは スタンプラリーをしていました。 みかちゃんとおかあさんがいっしょにスタンプをおしながら しょうてんがいをまわるとどうなるか ふしぎなものがたり。 作 もちっぱち 表紙絵 ぽん太郎。様

カリンカの子メルヴェ

田原更
児童書・童話
地下に掘り進めた穴の中で、黒い油という可燃性の液体を採掘して生きる、カリンカという民がいた。 かつて迫害により追われたカリンカたちは、地下都市「ユヴァーシ」を作り上げ、豊かに暮らしていた。 彼らは合言葉を用いていた。それは……「ともに生き、ともに生かす」 十三歳の少女メルヴェは、不在の父や病弱な母に代わって、一家の父親役を務めていた。仕事に従事し、弟妹のまとめ役となり、時には厳しく叱ることもあった。そのせいで妹たちとの間に亀裂が走ったことに、メルヴェは気づいていなかった。 幼なじみのタリクはメルヴェを気遣い、きらきら輝く白い石をメルヴェに贈った。メルヴェは幼い頃のように喜んだ。タリクは次はもっと大きな石を掘り当てると約束した。 年に一度の祭にあわせ、父が帰郷した。祭当日、男だけが踊る舞台に妹の一人が上がった。メルヴェは妹を叱った。しかし、メルヴェも、最近みせた傲慢な態度を父から叱られてしまう。 そんな折に地下都市ユヴァーシで起きた事件により、メルヴェは生まれてはじめて外の世界に飛び出していく……。 ※本作はトルコのカッパドキアにある地下都市から着想を得ました。

エリちゃんの翼

恋下うらら
児童書・童話
高校生女子、杉田エリ。周りの女子はたくさん背中に翼がはえた人がいるのに!! なぜ?私だけ翼がない❢ どうして…❢

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。