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取り敢えず、この『世界』がやらかす事をいちいち気にしても時間の無駄だし、余計なお世話な部分もあるにはあるけれどという考えが浮かび、マナはいつの間にか付いたスルースキルをフル活用して自分の気を静める。
そうして、改めて周囲を見回すと、クー、ルルー、ドリーは自分と同じ種族の精霊達には名付け終えたようだ。
ただ……他種族には名前を付けようとしない。
なんとなくだが、同種族が名付ける方が良いんだろうなぁとマナも思うので、ふむ……と腕組みしつつクーを見た。
「ねえ、クー。他の種族の精霊の長って、私知ってる?」
「うん? 当然、知ってるよ。長って皆、精霊の森に住んでるから」
当然なのか……しかも、住んでるって事は、既に名付け済みって事だよね……。
マナは自分の顔に苦笑が浮かんでくるのを自覚しつつ、クーに「誰がそう?」と問い掛ける。
「えっと、光はコーで、火がエンで、水がスイでしょ。風がフウ、土がノム。後は~」
「……へ?」
ちょっと待て。今挙がっている名前には滅っ茶苦茶! 覚えがあり過ぎる。
ここで、マナのネーミングセンスを見てみよう。
まずは、クー。空の精霊→ソラはもういるから、音読みでクウ→じゃあ、クーで。
緑の精霊→ミドリ→ミド? 何それ→ミリ? 女の子みたい→ドリー。うん、これで。
……という具合に、最初に名付けた精霊になればなるほど、その種族の原型が見て取れる。ルルー? それはマナのただのカン。深い意味なし。
それは兎も角として。クーが挙げた名前を見てみよう。
光→ヒカリ→もしくは音読みのコウ→男の子だからコウ……ちょっともじってコーで良いよね。
火→ヒー……ちゃん? →火の別の読み方何かプリーズ! →炎……ホノオ? →じゃ、男の子だしエン(音読み)で。
水→ミズ……うん、ないね→音読みのスイ。あ、可愛いから採用! 女の子万歳!
風→ここまで来たら音読みシリーズでフウだよね! 女の子だもんね!
土→ド、ツチ……ダメだ。ツチノコとか訳分かんない→あ、元の世界で土の精霊はノーム! じゃあ、少しだけもじってノムで! あれ? ノムさん? ……まあ、ネタ分からないだろうし良いか。
これである。
本当に最初の最初な為、覚えがあって当然。しかも、最初から交流があった精霊達だ。マナにとってはクーやルルー、ドリー並みに身内(未登場だが)。
さて。ここに長全員を呼び出すのは簡単だ。マナがイメージして出来ない事はない。
だがしかし! 何も知らないであろう――クー達のテヘペロな結果がこのキラキラ攻撃なのだから――他の精霊達を呼んでも、この地一帯の(精霊達の)テンションがアップするくらいで収拾などつかず、名付けも本日中に終わるか不明。そんな冒険、してたまるか!
だったら、直接会って説明して――勿論、元凶達にはきちんと謝るよう言う――後日、この地に呼んで名付けてもらえば良くない?
――うん! それが良いよね!!
既に自分で名付ける気がないマナはそう結論付けると、いつの間にか気を取り直して野宿準備を始めていたイクシオンとアルフレッドを振り返り。
「という訳で、私、精霊の森に帰るね!」
「「はっ!?」」
何が『という訳』なんだ!?
マナの思考回路など知る由もない2人は一瞬呆け。ハッと我を取り戻し「何を言っている!?」と異口同音に叫んだ。
「精霊の森に戻るなど……王都に行くんじゃなかったのか!?」
「え? そんな事、言った?」
「は?」
「いや、マナさん! ダジゲートに行くって、王都の事じゃなかったんですか!?」
「……冗談だよ」
ニヤッと笑うマナ、クー、ルルー。妙な所で息ピッタリだ。
お茶目(?)な部分を見てしまったイクシオンは唖然。アルフレッドは頭痛を堪えるように頭に手を置き。
「それは兎も角として……ここで戻ったら、王都に行けませんよ!」
「は? 何で?」
「マナさん……来た道を戻ったら、またこの地に来るのに同じくらい時間が掛かります。同じ事を繰り返してどうするんですか」
「は?」
何を言っているんだろう?
マナは首を傾げつつ精霊達を見るが、クー、ルルー、ドリーはマナと同じ様に首を傾げ、サーシュはそれに付き合い、他の精霊達は……やっぱりキラキラビームを発射している。
ここでマナは、自分がこの世界の常識がない事を思い出した。
この世界に元から生きているアルフレッドとイクシオン。数カ月前に突然落ちてきた&教えてもらってないからこの世界の『普通』が分からないマナ。この世界の常識はある筈なのに、マナのトンデモ魔法に慣れてしまった精霊達。
あれ? もしかして、それが原因で会話がかみ合っていない? マナと精霊が当然とか思っている事が、アルフレッドとイクシオンにとっては非常識なのでは?
――あり得る。
そう結論付けたマナは、やっぱりどうしてもクーとルルーを見る。ドリーの説明下手は本日、身に染みて分かったから最初から除外。サーシュに至ってはとことん対象外。
常識系を尋ねるなら、まさにグッドチョイスだろう。
「クーとルルーに質問です」
「どうしたの?」
「なんにゃ?」
「……この世界に転移魔法ってあるの?」
「うん? ある、よぉぉぉぉぉお!?」「ある、にゃあぁぁぁぁぁあ!?」
マナの質問で某かを思い出したのか、クーとルルーの声が裏返る。
「そうだったそうだったそうだったーーーーー!」
「マナの魔法が当たり前ににゃっていたから、忘れてたにゃぁーー!」
空中で地団太を踏むクーに何かの影を八つ当たり気味にペシペシするルルー。
面白いのでマナが眺めていると、それに気付いたクーとルルーは取り繕うようにえっへんと胸を張り。
「この世界の転移魔法は『設置型』なんだよ」
「魔法で『門』を地面に描いて、その門から門へ跳ぶにゃ!」
誤魔化した!!
面白いままにツッコミを入れても良いが、それでは話が進まない。
後でしっかりからかおうと心に決めながら、マナはちょっと首を傾げた。
「そんなもの、精霊の森の周辺では見た事ないよ?」
「当然だよ! 僕達精霊がその門の設置を拒んだからね」
「大昔のバカでアホで迷惑にゃ世界の敵認定された人間と同じ様な事をするのが居るかもしれないにゃ」
「だ・か・ら! 全精霊が一斉に拒否した」
「……だけどにゃあ~」
「うん……いつの時代も、バカでアホで迷惑なのは居るんだよねぇ……」
「え?」
はぁ……と重い溜め息を吐くクーやルルーから根気よく聞き出した話とは。
設置型転移魔法が使える様になった頃、ある精霊術士が精霊の森に遣って来て、門を設置すると言ってきたそうだ。
勿論、精霊達は反対した。それこそ、その精霊術士が見る事ができる精霊が『全ての精霊を敵に回すつもりか!』とも、しっかり言ったらしい。親切だね、精霊達は。ちゃんと忠告するんだから。
だがしかし! その精霊術士は大昔の迷惑人間と同じタイプの人間だったらしい。精霊の森を手中に収めれば、力が使いたい放題になると考えている系ではなく、『精霊を下に見ている』タイプの方。どちらの思考も困ったさんである。
まあ、そんなタイプの人間な所為で。精霊は黙って自分に従えと言わんばかりに強引に設置しようとした結果は……ご想像通り。精霊にそっぽ向かれ、精霊魔術のみならず自然魔術すら使えなくなった後、やはり世界の敵認定され、ズタボロ状態で国へ帰ったらしい。
ところが。ここで話は終わらない。
何故かその後も、違う精霊術士や自然術士が遣って来て、精霊の意思を確認する事なく門を設置しようとする。
その度に精霊達は、人に宿る魔力をはく奪したり、世界の敵認定したりしたのだが……一向に減る気配を見せない。ここまで遣れば普通、無理なのだと諦めるだろう?
流石にしびれを切らせた長達は、其々の精霊網――樹の精霊だけのものではなかったようだ。方法は不明だが――を使い、原因を探った結果!
ふ ざ け ん な よ !?
という結論に至った。
全ての原因は、最初に遣って来たバカでアホで空気の読めない迷惑極まりない元精霊術士な世界の敵人間だったのだ。
その人間は、「精霊達が望んでいる」と言葉巧みに人を騙し、何とかして門を設置させようとしていた。ただ単に、自分が精霊術士に戻る為に――他の、関係ない、多くの人々を犠牲にした。
普段はフレンドリーで、優しく、お気楽な精霊達もこの事実に激怒した。
自分達が『敵』認定した他の人間は、ただ一人に騙されていたのだ。
勿論、彼等はみな、どうして術が使えなくなったのか、精霊が見えなくなったのか全く分かっていなかった。突然の事態に混乱し――最悪の結末を選択した者まで居た。
国を上げて原因を探ろうとしても、精霊達が非協力的。これで真実にたどり着くなど無理だ。
精霊達は怒った。自分の事しか考えない原因の男に。
精霊達は悔やんだ。彼等が門を設置しようとする理由をどうして直接聞かなかったのかと。
精霊達は嘆いた。取り返しのつかない事をしてしまったと。
元々は、たった一人の人間の野望だった。
それは多くの人を巻き込み、精霊達に傷を残した。
精霊術士を通してその事実を知った国々は事態を重く見、元凶を生涯幽閉の刑に処し、精霊の森への干渉を禁忌と定めた。これに違反した場合、元凶と同じく終身刑となり、生涯、出る事はできなくなる。
イクシオンとアルフレッドが精霊の森に来た件も、下手をすればこれに抵触するが、精霊の危機という事で他国も納得しているのは余談だ。
「……どうして、生涯幽閉だったの?」
「……血を見るのは、いやにゃ」
マナの問いに、ルルーが泣きそうな目をして俯く。
クーも、ドリーも、他の精霊達も、サーシュも……一様に暗い影を落とし、黙り込んでしまった。
ああ……そんなに昔の話では、ないんだ……。
元凶が、まだ幽閉されたままなのかどうか、マナには分からない。
分かるのは、いまだに精霊達が苦しんでいるという事だけ。それが何より痛い。
マナはクー、ドリー、ルルーをそっと抱きしめる。
そんな事しか出来ない自分がもどかしいけれど、少しでもすこしでも、彼等の傷が癒える事を願い、抱きしめる。
「……うん、分かった。話してくれて、ありがとう」
『……』
答えない精霊達を抱きしめたまま、マナは硬い表情で立ち尽くすイクシオンとアルフレッドを見る。
話の発端を蒸し返すのもなんだけど、彼等にとっとと納得してもらって精霊達を休ませてあげたい。
「貴方達は、私の転移魔法を見ている筈だけど?」
「……え?」
マナの言葉に、イクシオンが反応する。精霊術士ではない分、立ち直りは早いようだ。
「貴方達を精霊の森の外へ転移させたし、私も貴方達の前から消えたけど?」
「「――あっ!?」」
忘れていた。そう言われてみればそんな事があった。
次々と想定外の事ばかり起こる所為で記憶の奥底に埋もれていた。
「あれが私の転移魔法。この世界の転移魔法とは違って、一度でも行った事がある場所なら行き来自由。だから、今から精霊の森に戻ったとしても、明日の出発前には合流できる」
マナにとって転移魔法とは『そういうもの』。だから、出来て当然。
「……明日の朝、ここへ戻ってくるからそれまで待ってて。それまで――そっとしておいてあげて」
「――っ」
アルフレッドがゆっくり頷く。
マナはそれを確認すると、俯く他の精霊に戻るように言い、野宿地となる場所に結界を張る。精霊達に結界をお願いするのは……今は避けたい。
「じゃあ、また明日」
マナはそう言うと、クー達を抱きしめたままサーシュに触れ。
精霊の森にある自分の塔へと転移した。
そうして、改めて周囲を見回すと、クー、ルルー、ドリーは自分と同じ種族の精霊達には名付け終えたようだ。
ただ……他種族には名前を付けようとしない。
なんとなくだが、同種族が名付ける方が良いんだろうなぁとマナも思うので、ふむ……と腕組みしつつクーを見た。
「ねえ、クー。他の種族の精霊の長って、私知ってる?」
「うん? 当然、知ってるよ。長って皆、精霊の森に住んでるから」
当然なのか……しかも、住んでるって事は、既に名付け済みって事だよね……。
マナは自分の顔に苦笑が浮かんでくるのを自覚しつつ、クーに「誰がそう?」と問い掛ける。
「えっと、光はコーで、火がエンで、水がスイでしょ。風がフウ、土がノム。後は~」
「……へ?」
ちょっと待て。今挙がっている名前には滅っ茶苦茶! 覚えがあり過ぎる。
ここで、マナのネーミングセンスを見てみよう。
まずは、クー。空の精霊→ソラはもういるから、音読みでクウ→じゃあ、クーで。
緑の精霊→ミドリ→ミド? 何それ→ミリ? 女の子みたい→ドリー。うん、これで。
……という具合に、最初に名付けた精霊になればなるほど、その種族の原型が見て取れる。ルルー? それはマナのただのカン。深い意味なし。
それは兎も角として。クーが挙げた名前を見てみよう。
光→ヒカリ→もしくは音読みのコウ→男の子だからコウ……ちょっともじってコーで良いよね。
火→ヒー……ちゃん? →火の別の読み方何かプリーズ! →炎……ホノオ? →じゃ、男の子だしエン(音読み)で。
水→ミズ……うん、ないね→音読みのスイ。あ、可愛いから採用! 女の子万歳!
風→ここまで来たら音読みシリーズでフウだよね! 女の子だもんね!
土→ド、ツチ……ダメだ。ツチノコとか訳分かんない→あ、元の世界で土の精霊はノーム! じゃあ、少しだけもじってノムで! あれ? ノムさん? ……まあ、ネタ分からないだろうし良いか。
これである。
本当に最初の最初な為、覚えがあって当然。しかも、最初から交流があった精霊達だ。マナにとってはクーやルルー、ドリー並みに身内(未登場だが)。
さて。ここに長全員を呼び出すのは簡単だ。マナがイメージして出来ない事はない。
だがしかし! 何も知らないであろう――クー達のテヘペロな結果がこのキラキラ攻撃なのだから――他の精霊達を呼んでも、この地一帯の(精霊達の)テンションがアップするくらいで収拾などつかず、名付けも本日中に終わるか不明。そんな冒険、してたまるか!
だったら、直接会って説明して――勿論、元凶達にはきちんと謝るよう言う――後日、この地に呼んで名付けてもらえば良くない?
――うん! それが良いよね!!
既に自分で名付ける気がないマナはそう結論付けると、いつの間にか気を取り直して野宿準備を始めていたイクシオンとアルフレッドを振り返り。
「という訳で、私、精霊の森に帰るね!」
「「はっ!?」」
何が『という訳』なんだ!?
マナの思考回路など知る由もない2人は一瞬呆け。ハッと我を取り戻し「何を言っている!?」と異口同音に叫んだ。
「精霊の森に戻るなど……王都に行くんじゃなかったのか!?」
「え? そんな事、言った?」
「は?」
「いや、マナさん! ダジゲートに行くって、王都の事じゃなかったんですか!?」
「……冗談だよ」
ニヤッと笑うマナ、クー、ルルー。妙な所で息ピッタリだ。
お茶目(?)な部分を見てしまったイクシオンは唖然。アルフレッドは頭痛を堪えるように頭に手を置き。
「それは兎も角として……ここで戻ったら、王都に行けませんよ!」
「は? 何で?」
「マナさん……来た道を戻ったら、またこの地に来るのに同じくらい時間が掛かります。同じ事を繰り返してどうするんですか」
「は?」
何を言っているんだろう?
マナは首を傾げつつ精霊達を見るが、クー、ルルー、ドリーはマナと同じ様に首を傾げ、サーシュはそれに付き合い、他の精霊達は……やっぱりキラキラビームを発射している。
ここでマナは、自分がこの世界の常識がない事を思い出した。
この世界に元から生きているアルフレッドとイクシオン。数カ月前に突然落ちてきた&教えてもらってないからこの世界の『普通』が分からないマナ。この世界の常識はある筈なのに、マナのトンデモ魔法に慣れてしまった精霊達。
あれ? もしかして、それが原因で会話がかみ合っていない? マナと精霊が当然とか思っている事が、アルフレッドとイクシオンにとっては非常識なのでは?
――あり得る。
そう結論付けたマナは、やっぱりどうしてもクーとルルーを見る。ドリーの説明下手は本日、身に染みて分かったから最初から除外。サーシュに至ってはとことん対象外。
常識系を尋ねるなら、まさにグッドチョイスだろう。
「クーとルルーに質問です」
「どうしたの?」
「なんにゃ?」
「……この世界に転移魔法ってあるの?」
「うん? ある、よぉぉぉぉぉお!?」「ある、にゃあぁぁぁぁぁあ!?」
マナの質問で某かを思い出したのか、クーとルルーの声が裏返る。
「そうだったそうだったそうだったーーーーー!」
「マナの魔法が当たり前ににゃっていたから、忘れてたにゃぁーー!」
空中で地団太を踏むクーに何かの影を八つ当たり気味にペシペシするルルー。
面白いのでマナが眺めていると、それに気付いたクーとルルーは取り繕うようにえっへんと胸を張り。
「この世界の転移魔法は『設置型』なんだよ」
「魔法で『門』を地面に描いて、その門から門へ跳ぶにゃ!」
誤魔化した!!
面白いままにツッコミを入れても良いが、それでは話が進まない。
後でしっかりからかおうと心に決めながら、マナはちょっと首を傾げた。
「そんなもの、精霊の森の周辺では見た事ないよ?」
「当然だよ! 僕達精霊がその門の設置を拒んだからね」
「大昔のバカでアホで迷惑にゃ世界の敵認定された人間と同じ様な事をするのが居るかもしれないにゃ」
「だ・か・ら! 全精霊が一斉に拒否した」
「……だけどにゃあ~」
「うん……いつの時代も、バカでアホで迷惑なのは居るんだよねぇ……」
「え?」
はぁ……と重い溜め息を吐くクーやルルーから根気よく聞き出した話とは。
設置型転移魔法が使える様になった頃、ある精霊術士が精霊の森に遣って来て、門を設置すると言ってきたそうだ。
勿論、精霊達は反対した。それこそ、その精霊術士が見る事ができる精霊が『全ての精霊を敵に回すつもりか!』とも、しっかり言ったらしい。親切だね、精霊達は。ちゃんと忠告するんだから。
だがしかし! その精霊術士は大昔の迷惑人間と同じタイプの人間だったらしい。精霊の森を手中に収めれば、力が使いたい放題になると考えている系ではなく、『精霊を下に見ている』タイプの方。どちらの思考も困ったさんである。
まあ、そんなタイプの人間な所為で。精霊は黙って自分に従えと言わんばかりに強引に設置しようとした結果は……ご想像通り。精霊にそっぽ向かれ、精霊魔術のみならず自然魔術すら使えなくなった後、やはり世界の敵認定され、ズタボロ状態で国へ帰ったらしい。
ところが。ここで話は終わらない。
何故かその後も、違う精霊術士や自然術士が遣って来て、精霊の意思を確認する事なく門を設置しようとする。
その度に精霊達は、人に宿る魔力をはく奪したり、世界の敵認定したりしたのだが……一向に減る気配を見せない。ここまで遣れば普通、無理なのだと諦めるだろう?
流石にしびれを切らせた長達は、其々の精霊網――樹の精霊だけのものではなかったようだ。方法は不明だが――を使い、原因を探った結果!
ふ ざ け ん な よ !?
という結論に至った。
全ての原因は、最初に遣って来たバカでアホで空気の読めない迷惑極まりない元精霊術士な世界の敵人間だったのだ。
その人間は、「精霊達が望んでいる」と言葉巧みに人を騙し、何とかして門を設置させようとしていた。ただ単に、自分が精霊術士に戻る為に――他の、関係ない、多くの人々を犠牲にした。
普段はフレンドリーで、優しく、お気楽な精霊達もこの事実に激怒した。
自分達が『敵』認定した他の人間は、ただ一人に騙されていたのだ。
勿論、彼等はみな、どうして術が使えなくなったのか、精霊が見えなくなったのか全く分かっていなかった。突然の事態に混乱し――最悪の結末を選択した者まで居た。
国を上げて原因を探ろうとしても、精霊達が非協力的。これで真実にたどり着くなど無理だ。
精霊達は怒った。自分の事しか考えない原因の男に。
精霊達は悔やんだ。彼等が門を設置しようとする理由をどうして直接聞かなかったのかと。
精霊達は嘆いた。取り返しのつかない事をしてしまったと。
元々は、たった一人の人間の野望だった。
それは多くの人を巻き込み、精霊達に傷を残した。
精霊術士を通してその事実を知った国々は事態を重く見、元凶を生涯幽閉の刑に処し、精霊の森への干渉を禁忌と定めた。これに違反した場合、元凶と同じく終身刑となり、生涯、出る事はできなくなる。
イクシオンとアルフレッドが精霊の森に来た件も、下手をすればこれに抵触するが、精霊の危機という事で他国も納得しているのは余談だ。
「……どうして、生涯幽閉だったの?」
「……血を見るのは、いやにゃ」
マナの問いに、ルルーが泣きそうな目をして俯く。
クーも、ドリーも、他の精霊達も、サーシュも……一様に暗い影を落とし、黙り込んでしまった。
ああ……そんなに昔の話では、ないんだ……。
元凶が、まだ幽閉されたままなのかどうか、マナには分からない。
分かるのは、いまだに精霊達が苦しんでいるという事だけ。それが何より痛い。
マナはクー、ドリー、ルルーをそっと抱きしめる。
そんな事しか出来ない自分がもどかしいけれど、少しでもすこしでも、彼等の傷が癒える事を願い、抱きしめる。
「……うん、分かった。話してくれて、ありがとう」
『……』
答えない精霊達を抱きしめたまま、マナは硬い表情で立ち尽くすイクシオンとアルフレッドを見る。
話の発端を蒸し返すのもなんだけど、彼等にとっとと納得してもらって精霊達を休ませてあげたい。
「貴方達は、私の転移魔法を見ている筈だけど?」
「……え?」
マナの言葉に、イクシオンが反応する。精霊術士ではない分、立ち直りは早いようだ。
「貴方達を精霊の森の外へ転移させたし、私も貴方達の前から消えたけど?」
「「――あっ!?」」
忘れていた。そう言われてみればそんな事があった。
次々と想定外の事ばかり起こる所為で記憶の奥底に埋もれていた。
「あれが私の転移魔法。この世界の転移魔法とは違って、一度でも行った事がある場所なら行き来自由。だから、今から精霊の森に戻ったとしても、明日の出発前には合流できる」
マナにとって転移魔法とは『そういうもの』。だから、出来て当然。
「……明日の朝、ここへ戻ってくるからそれまで待ってて。それまで――そっとしておいてあげて」
「――っ」
アルフレッドがゆっくり頷く。
マナはそれを確認すると、俯く他の精霊に戻るように言い、野宿地となる場所に結界を張る。精霊達に結界をお願いするのは……今は避けたい。
「じゃあ、また明日」
マナはそう言うと、クー達を抱きしめたままサーシュに触れ。
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