僕らが生きた世界線

むらさきおいも

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先生

先生との関係

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あの事があってからというもの、先生は俺を気にかけてくれるようになった。

先生の名前は飯田、みんな先生の事を飯ちゃんって言っててとにかく生徒に親しまれていた。

飯ちゃんの教科は生物で、だからか分からないけど基本的に白い白衣をだらしなく羽織ってて、授業の時はメガネをかけている。

だけど俺だけは本当の先生を知っている。

表向き明るく振舞ってるけど、本当はすごくよく落ち込むし、それでいてめちゃくちゃ繊細。

だからちょっとでも生徒にからかわれたりするとその時はノリで交わしてたのに、放課後生物室を覗くと一人…タバコを吸いながら落ち込んでることがよくあるのだ。


「先生…?」

「おぅ…鍋島?どうした…?」

「先生こそどうしたんだよ…元気ないじゃん…」

「うん…ちょっとな…」


先生の悩みは生徒には話せないって所なのか…
俺の悩みは聞いてくれても、先生はあまり心を開いてはくれない。

でも、話はしてくれなくても俺の事を必要としてくれてるのが嬉しくて、こういう時は特に先生のそばにいてあげるんだ。


「充電…する…?」

「うん…いい…?」

「ん…いいよ…」


そして先生は俺の腰に手を回して、ぎゅっとしがみついてくる。

あの日…
俺が先生と目が合って息ができなくなった日、俺は先生と約束したんだ。

『次は俺が困った時は助けてな』って、言われたから…
だから俺は、約束を守ってずっと先生を助けてる…つもり。

こうやってぎゅってすることしか出来ないけど、それで先生の気持ちが落ち着くなら俺は毎日でも何度でもぎゅってする…てかぎゅってしたい。

先生は俺の事、ただの生徒だとしか思ってないかもだけど、でも俺は先生が好きだから。

この時間は俺にとって、幸せな時間だから…


「なぁ…鍋島…?」

「ん?」

「何で男は女を好きになんなきゃいけないんだろうな…」


俺は先生が好きだからそうは思わないけど、一般的にはそうだろうな。

けど何でそんな事を俺に聞くんだろう…


「…そんな事…無いんじゃね?」

「そう?普通はそうじゃん?」

「まぁ、そうだけど。でも、普通ってなんだよ…」

「うん…わかんねぇよな。でもやっぱり俺は普通じゃないんだろうな…」


普通じゃないって事は、先生は俺と同じってこと?
ワンチャン…俺を好きになってくれる可能性もあるって事ならこんなチャンスはない!


「先生…男が好きなの…?」

「…そう言ったら引く?」

「引かないっ、全然引かないっ!」

「ははっ、そっか…良かったぁ。鍋島に無理、気持ち悪いって言われたら俺生きていけねぇもん」


回転椅子に座り、俺の腰に巻き付く先生の腕がぎゅっときつくなると、俺の鼓動がどんどんと高まる。

それって俺に嫌われたくないってことだろ?
じゃあ、先生にとって俺って…


「先生…俺の事好きなの…?」


俺の言葉に先生はピクッと身体を硬直させて、腕を解いて俺から距離を取った。

完全に間違えた…
男が好きってだけで俺の事が好きとは限らないのに、俺はただの生徒で先生の心の支えになってるってだけなのに。

もしかしたらって思って、先走ってマジでカッコ悪いじゃん。


「あ…や、そんな訳ないよね。ごめん…っ」

「ううん。好き…なんだ。だから、こっちこそ…ごめん…っ」

「えっ…じゃあ両想いじゃん!?」

「え…っ、だって…俺…」

「初めて目が合った時から俺、先生が好きだったよ?だから…」

「…っ、でも、俺…ダメなんだっ」

「何が!?何がダメなの!?先生だから?俺が生徒だから?」

「違う…そうじゃない…っ」


何がそんなに先生を苦しめているんだろう。
両思いなのに、それも叶わないなんて俺だって苦しすぎる。

どうせ男同士だし表でイチャつくことなんてできないんだし、ここだけならいいじゃん。
ここにいる時だけでも求めあったらダメなの?


「俺、誰にも言わないよ!?先生の事も、ここでの事もっ…だから、ここにいる時だけ…両想いじゃダメ?」

「鍋島…っ」

「俺、マジだから…っ///」

「鍋島がいいなら…そうしたい…っ。俺だってそうしたいっ!ずっとこのままでいたい…けど…無理なんだっ…」


先生は最後まで理由を教えてはくれなかった。

だけど、それよりも俺は両想いなんだって事、先生もそうしたいって思ってくれてることが嬉しくて理由なんてどうでも良かった。

この時間が二人にとって幸せならそれでいいじゃん、なんて軽く考えていたんだ。

そして俺は、来る日も来る日も放課後は必ず先生に会いに行った。

先生はあれから取り乱す事も無く、俺を優しく迎え入れてくれる。

放課後、別校舎の一番端っこにある生物室なんて先生と俺以外誰かが来る事はまずなくて、それをいい事に俺は先生から色々な事を教わった。

そして先生への好きが毎日更新されていったんだ。
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