記憶の欠片

むらさきおいも

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前世の闇(結斗)

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愛斗まなとと話す度に段々と過去の記憶が思い出されて、俺は俺の知らない自分に翻弄されていく事に恐怖を感じていた。

これ以上、過去の事を知って何になるんだろう。

辛い事怖い事、思い出したくもない事が蘇ってくる度に、こんなこともう辞めたいと思い始めていた。

そんな中、夢の中の俺達も段々成長していき、愛斗に対する特別な感情までもが徐々に明確になってきて、俺はもうどうしていいかわからなくなっていた。

夜眠りにつくと、今まで以上にこれまでの出来事がハッキリと走馬灯のように蘇ってくる…

この前の夢で、俺は愛斗に思いを打ち明けられた。

最初は戸惑いもあったけれど、俺の世界に頼れる人は愛斗だけ…
俺はそれを受け入れていた。

それからというもの、俺たちは人目を盗んで愛し合った。
この屋敷で働かされる俺にとって、この時間が唯一幸せで辛い日々を忘れされてくれたんだ。


「好きだよ…」

「んっ…俺もっ…」


屋敷の外の物置き場に、二人の吐息と水音が響く。

お互いの舌を行ったり来たり絡ませ合いながら、甘い吐息が漏れて身体に熱を帯びる。

相手が愛斗なのに、俺…っ

ハッと目が覚めれば、そこは俺の部屋の天井でここが今の現実。

だけどここ何日か、今と過去の行ったり来たりを繰り返し、もう頭がおかしくなりそうだった…

そして夢から醒めても尚、愛斗の唇の感覚がリアルに残っていて、今までとは違う感情が湧き出てくる事に頭の処理が追いつかない。

多分、前世で俺たちは付き合ってたんだ。

愛斗はこの事をもちろん知っていて、知った上でどんな感情で俺と接してたんだろう…

そう考えると、愛斗に合うのが少し怖かった。

もうこんな複雑な感情のまま、愛斗に会う事さえ辞めたいと思っていた矢先、決定的な夢を見てしまった。

旅行先の急な事故で、お屋敷の人が誰一人居なくなった後の事だった。

身寄りのない俺たちは屋敷に取り残され、雇われていたお手伝いさんだけがたまに来て面倒を見てくれていたが、それ以外は基本屋敷に二人きり。

この日の夜、俺と愛斗は同じベットの中にいた。


「やっと二人きりになれたね…」

「うん」

「怖い?」

「ううん…平気…」

「嫌だったら言って…」

「うん…」


これからどうなるんだろう…
男同士でなんてした事もないのに、俺は不思議とその行為がどういうものなのかわかってる。

愛斗の分厚い唇が俺の唇に触れ、首筋から胸へと徐々に下へと下がっていく。

恥ずかしくて、でも嬉しいような… 

だけどなんだろう?
さっきまで無かった恐怖の感情が、突如として湧いてくる…

ここにいるのは間違いなく愛斗なのに、脳裏に思い浮かぶこの黒い影は…誰…?

旦那…様…?


「あっ…嫌だっ!怖いっ!止めてっ…!」

「…っ、大丈夫か…?」

「うぅっ…うっ…あの人がっ…俺を…」

「あの人はもういないよ。無理やりされる事も無い。俺はお前を愛してるから…」


俺はこれが初めてじゃないんだと、俺はこの瞬間に前世のあの人との忌々しい行為までも思い出してしまったのだ。

震える俺を愛斗はぎゅっと抱きしめ、俺が落ち着くまで何もしないでいてくれた。

深い愛情が俺を満たしていくのが分かると、俺は愛斗を求めて首元に手をまわした。

愛斗の事は好きだ…
だけど怖くて出来ない…っ


「大丈夫…無理はさせたくないから」

「うん…っ」

「キス…してもいい?」

「うん…っ、して…」


そして再び唇を重ねればその後の記憶は徐々に薄れ、意識が戻り目を覚ませば、またいつもと同じ天井がそこにはあった。

ぼんやりとした意識の中、さっきまでの高揚感と愛斗に抱きしめられていた幸福感がまだ残っている。

だけどだんだんと現実に引き戻されれば、裸で男同士が抱き合うなんてありえないだろうと頭を抱えた。

夢の中での俺は愛斗の腕に抱かれて、懐かしくて暖かくて幸せだったのに、今の俺には到底理解できないし感情が追いつかなくてどうしていいのか分からない。


それに、それと同時に蘇ってきたあの忌々しい記憶…

俺はあの男に何をされてた…?
俺は…っ

思い出したくもないのに勝手に蘇ってくる記憶と感触が気持ち悪くて苦しくて、目の前が真っ暗になる中、必死に嗚咽に耐えた。

愛斗は全部知ってたの?

こんなの、思い出したくなかった…
もう過去の記憶なんていらない…!
全部忘れたいっ…

頭の中も心も全部ぐちゃぐちゃで苦しくて、耐えきれずに吐き出した物と共に涙が溢れてきた。
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