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11巻
11-2
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「ナナシ、【神威】を使う。半神化だ」
「そこまでやって大丈夫なのかね?」
「おそらくなんだけど、そこまでしないと訓練にならないと思う」
「なるほど。それはそれで、恐ろしい話だね」
背後の使い魔がどこか楽しげな声を上げて、するりと俺を包み込む。
揺らめくビロードのマントとなったナナシは、俺の『外殻』だ。
俺の存在をこの世界に固定して、逸脱しすぎないようにするための。
「何それ、格好いい!」
「お披露目はもう少し先のはずだったんだけどな」
茶化すようなことを言うミントに軽く苦笑をして見せてから、俺は母を視界に捉える。
「……いくぞ!」
俺が声を発すると同時に、ミントがその目に赤い殺気を宿して一気に踏み込む。
【狂戦士化】を完全に使いこなしたミントは、それだけで英雄クラスの剣士だが、母はその一撃を軽やかにいなす。
高難易度迷宮に挑んで本調子になってきた、とは聞いていたものの……まさか、これほどとは。
「隙ありですッ」
「なしよ?」
ミントに続いて懐に踏み込んだベンウッドが鋭く拳を打ち込む――が、それをさらりと避けた母は、容赦なく彼の腹を蹴り上げた。
爪先が空に浮くほどの一撃をまともにもらい、ベンウッドが地面に倒れ伏す。
あれは痛い。もう少し容赦とか手加減とかを覚えてほしい。
「まだまだぁーッ!」
体勢を立て直したミントが、重みと速度を伴った連撃を叩き込む。
母はそれをにこにこと笑いながら受け流しつつ、口を開く。
「ミントちゃん、もう一声。速さもパワーも申し分ないけど、踏み込みと技術が足りないわ」
「な……!」
「あなたは蹂躙向きよ。自分を怖がっちゃダメ。結果はどうあれ、敵は殺すのがマナーなのよ?」
動揺したミントが見せた隙は、母にとって充分な好機となった。
つまり、あっという間に叩き伏せられてしまった。
「アストルは来ないの?」
「いや、二人は充分な仕事をしてくれたよ」
母にそう返事をして、俺は指をパチンと鳴らす。
その瞬間、母の動きが止まった。
「……あら」
「これで、一勝一敗って感じかな?」
膝をついた母に、俺はなんとか痩せ我慢で笑って返す。
そう、痩せ我慢だ。
この力は燃費が悪すぎるし、この魔法は魔力を使いすぎる。
だが、こうして母に一矢報いることはできた。
「やだ、この子ったら。母さん、やる気になっちゃう」
「え?」
構築した魔法式にひびが入っていく。
嘘だろ? 異界の神を拘束するために開発した魔法だぞ!?
存在そのものを拘束して、このレムシリア世界と同じだけの重さで動きを封じる、【神威】を込めた概念魔法。
かの『青白き不死者王』が俺に使ったような、存在の根源的な部分に働きかける魔法だというのに……何故母は動けているんだろう?
「まだまだね、アストル。これじゃあ、今一つよ」
立ち上がった母が、にこりと笑って……俺に肉薄した。
◆
「先生、動きがありました」
母との訓練を始めて一ヵ月。
グレイバルトが深刻な顔をして、報告書を持ってきた。
普段は口頭でのやり取りが主なのだが、報告書が上がってきたということは、詳しい分析まで終わっているのだろう。
「『トゥルーマンズ』か?」
「はい。旧モーディア皇国を制圧後、国家組織を乗っ取り……いえ、塗り潰しました」
「塗り潰した?」
「はい。『反転国家ハディス』を名乗り、☆1主導の国家を形成した後、プロパガンダと拉致を行なって、各地の☆1を集めています」
「いよいよ〝ティーパーティー〟とやらを始めるつもりか……!」
それがなんであれ、良くないものだというのは肌感覚で理解している。
何せ、主催者は死の概念を司る『青白き不死者王』であるレディ・ペルセポネなのだから。
「『青白き不死者王』に関しては?」
「それが全く。表立って動いているのは、国主ロータスと……」
「待て。国主?」
耳慣れない言葉に、思わず聞き返す。
それに頷いて、グレイバルトが机に広げられた資料の一枚を指さした。
組織図が描かれた報告書を見つめながら、俺は小さくため息を吐く。
「国主、か。つまり国王になったわけか? ロータスは」
「ハディスの基底部が『トゥルーマンズ』である以上、そうなりますね」
俺とて、ヴィンセント王に冗談めかして勧められたことがある。
――☆1国家を作ってみないか、と。
半分冗談で半分本気だと言っていたその提案は、あまりに荒唐無稽が過ぎて当然断ったのだが……ロータスはやってのけたというわけだ。
そして、俺が当時危惧した通りに世界を騒乱へと巻き込もうとしている。
「他の〝二つ名付き〟については?」
「〝寂雪〟のフレグラについては、国境部で小競り合いを起こしています」
「ぶつかっているのはグランゾル侯爵か。大丈夫だろうか」
「分析では、侵攻というよりも圧をかけるのが目的のようです。内部で何かしらの準備行動をしているのを邪魔されたくないんでしょう」
グレイバルトの言葉に頷いて、俺は別の資料を手に取る。
「それで、何を隠している? 君ならもう掴んでいるんだろ?」
「あいにく、ガードが堅くて決定的な情報とは……」
「構わない。君の勘はきっと正確だ」
俺の言葉に少し顔を綻ばせたグレイバルトが、懐から折り畳まれた紙を取り出す。
「先日、消息を絶った『木菟』からの報告書です」
「……!」
「お気になさらないでください。彼は仕事に殉じたのです。メリゼー子爵家子飼いの『砂梟』ではなく、『木菟』として生きたことを誇りに思っているはずです」
そう言われて、俺は喉まで出かかった言葉を呑み込む。
頭目たるグレイバルトがそのように言っているのに、俺が彼らの生き様に水を差すわけにはいかない。
こうした犠牲が出るだろうことも、少し覚悟はしていた。
だが、やはり現実に突きつけられると、罪悪感が残る。
「彼の報告によると、戦争を始めるつもりのようです」
「戦争、か。元モーディアの国力をもってか?」
口にしてから、それはないと首を横に振る。
モーディア皇国というのは、『トゥルーマンズ』にとって怨念の地だ。
彼らにとってホームグラウンドであると同時に、最も許されざる場所。
「『穢結石』で住民ごと塗り潰したんだな?」
「はい。今やあの地は、余人の立ち入れぬ忌み地です。もはや偵察も放てません」
「いいや、充分だよ」
そう、充分だ。何をしようとしているのか、うっすらとわかった。
反転国家という名前が、すでに目的を示している。
ロータス達『トゥルーマンズ』は、この世界を丸ごとひっくり返すつもりなのだ。レディ・ペルセポネの加護と人造魔王の作り出す『穢結石』によって。
「終末の神と魔王がいっぺんに来るなんて、ずいぶん大事になったな」
「それに対抗するために先生がいると、小耳に挟みましたが?」
グレイバルトの言葉に、思わず噴き出してしまう。
それこそ、ずいぶんと大役を任されたものだ、と。
俺というのは、少しばかり小器用な☆1の魔法使いにすぎないというのに。
「各所への通達はいかがいたしますか?」
「エルメリアには俺が直接出向くよ。すまないが、君は状況変化に備えてくれ」
「やはり、起こりますか? 戦争が」
「いいや、起こるのは『淘汰』だよ。彼ら、この世界を変えるついでに何もかもダメにしてしまうつもりみたいだ」
ただの戦争であれば、まだ良い。
いや、良くはないんだけど……それは、人の営みの範疇にある。
だが、レディ・ペルセポネという『はじまりの混沌』の影響がある以上、それはもはや別次元の話だ。
〝煙火〟のレザニアという男が反転したように、この世界そのものが別のモノにすり替わってしまう。
あの異様が、この世界の普遍となってしまえば……事実上の世界滅亡である。
「それじゃあ、行ってくれ。俺も動くよ」
「はい。それでは」
景色ににじんで消えるグレイバルトに軽く頷いて、俺も立ち上がる。
そして、部屋の中を歩き回りながら、まとまらない考えを整理していく。
「ロータスの考えがわからないな。☆1救済はもうやめたのか? 世界を丸ごと滅ぼす方向にしたんだろうか? そもそも、動きが遅い。『不死者王』が動けばもっと手早い。ティーパーティーとは何を指す……?」
「お困りだね、我が主。アドバイスが必要かな?」
俺の独り言に、応える声があった。
「おっと、ようやく戻ったのか? ナナシ」
「ずっといたさ」
「その割に姿を見なかったようだけど?」
この使い魔は、ここのところ姿を現さなかった。
側にいることはわかっていたが、呼びかけても返事をせず、気配を希薄にしていたのだ。
「なに、少しばかり君の力を使って調べものをしていたんだ」
「それで、アドバイスは?」
「『不死者王』についてだけど、彼女が動かないのには理由がある」
「聞かせてくれ」
俺はソファに座り直し、茶菓子のクッキーを差し出しながら、ナナシに尋ねた。
「負荷が高すぎるんだ。あるべき時に現れる彼女が、予定外に現れてしまったからね」
「ああ、それは俺の【神威】の時も聞いたな。あまり長居できないって話だろ?」
「それだけじゃない。彼女は順番を抜かしたんだ」
首を傾げる俺に、ナナシはクッキーをかじりながら、指を小さく振った。
「本来、あの『青白き不死者王』は支配、戦争、飢饉の『淘汰』の果てに登場する〝終末〟だ。何もかもがダメになって疲弊しきった世界を反転させ、死の世界へと変じさせる役割を持っている」
「つまり、今の世界は居心地が悪いわけか?」
「どこかの〝魔導師〟があらゆる厄災のタネを解決してしまったからね」
ナナシがご機嫌そうに頭蓋を鳴らす。
相変わらずの様子に少しばかり安心して、俺は疑問を挟んだ。
「じゃあ、何故この世界に『不死者王』がいるんだ?」
「そこだよ。それが知りたくて、少しばかり時間を遡航させてもらった」
「え?」
「君の力を使って『全知録』にアクセスしたんだ。おかげで擦り潰されるかと思ったよ」
俺の使い魔がとんでもないことを言っている気がする。
『神々の書庫』と呼ばれる『全知録』には、この世の全ての知が集約されているとされる。ナナシは優秀で得体のしれない奴だが、まさか『ダンジョンコア』もなしに『全知録』へ意識を捻じ込むなんて。
「後学のために尋ねるけど……それ、俺にもできる?」
「無理だね。吾輩だってできればしたくなかったんだ。だけど、いろいろとわかったことがある」
「教えてくれ。今は、いくらでも情報が欲しい」
ナナシが黄色い目を細めて、俺を見つめる。
そして、衝撃の言葉を放った。
「モーディアの研究者はずいぶんと愚かで、ずいぶんと天才だったみたいだ。あのレディは……生身の体に降ろされた、憑依体だよ」
ナナシ曰く――あのレディ・ペルセポネは、☆1の少女に降霊した『青白き不死者王』の憑依体であるらしい。
端末であり、コピーであり、本人でもあるという存在で……つまり、この世界の人間の体を使って無理やりに顕現している。
「おそらく、人造魔王の研究の一環だろうね。『存在係数』が低い☆1の体に、どこかしらの『異貌存在』を捻じ込もうとしたんだろう」
「それがどうして『不死者王』を捻じ込むことになったんだ?」
「さあ? おそらく偶発的な事故だと思うよ。だけど、それが『トゥルーマンズ』の起点になったのは、『全知録』で視てきた」
魔法実験に事故はつきものだ。
この学園都市で暮らしていれば、それは嫌でも理解する。
それにしたって、☆1を認めないモーディア皇国の研究者が、最も☆1の特性を理解していたなんて、少しばかり意外だ。
☆1の『存在係数』や拡張性についての研究がとても進んでいる学園都市でだって、☆1を召喚素体にするなんて発想は、まだ聞いたことがない。
☆1を非人間扱いするモーディア皇国だからこそ生まれた考えなのかもしれない。
「つまり、ティーパーティーが佳境に入るまで、レディは動けないってことさ。だけど、使徒に任ぜられたロータスは違う」
「ああ。あいつは目の前でレザニアを『反転』させた。その時に『青白き不死者王』の気配も確かに感じた」
「あの時はロータス一人だったかもしれないけど、今は取り巻きも『使徒』になっているかもしれないね。概念的な繋がりを得た彼らは、少しばかり厄介だよ?」
「もしかして、【神威】を使ってくるか?」
俺の言葉に、使い魔は首を横に振って答える。
「それはないはずだ。あるとしても、劣化コピーをさらに劣化させた異能くらいだろうね」
「じゃあ、『トゥルーマンズ』達の能力って……」
そう口にしてから、合点がいった。
『先天能力』にしたって些かおかしいあれらの能力は、瘴気由来のものかと思ったが、おそらく『青白き不死者王』も一枚噛んでいるのだろう。
その人間に関わりの深い異能を引き出しているのかもしれない。
「わかったことは多いけど、対策になりそうなものは少ないな。『青白き不死者王』を物理的に押さえられそうだってこと以外は」
「そこだよ、我が主。この世界の生物に依る以上、レディの力はこの世界の理に縛られる。では、どうやってこの世界をひっくり返す?」
ナナシに問われた俺は首を捻る。
「『穢結石』をばら撒く? いや、非効率だな。それに、俺達が対策する方がきっと早い。世界を大本から反転させるっていうなら、もっと根本的な方法が必要か……?」
考えるうちに、一つの答えに行き当たる。
「まさか、今から手順を守るつもりか?」
「我が主はそれなりに賢いようだね。そう、彼らは他の『終焉の王達』か、それにあたる『淘汰』を呼び込むつもりだろう」
「その根拠は?」
「『全知録』がそう予測していた、としか言えないね」
どうやらナナシは、『全知録』でろくでもないことを知ってしまったらしい。〝繋がり〟からもそれが伝わってくる。
「だから、彼らは『超大型ダンジョンコア』を欲するだろう」
「いくら無限の願望器たる『超大型ダンジョンコア』でも、そんな願いを叶えられるのか?」
俺の質問に、使い魔が黄色い目を細めて首を横に振る。
「そうじゃないよ。『はじまりの混沌』がなんたるかを思い出してみたまえ」
慇懃無礼なナナシにため息を吐きつつ、俺は答えを口にする。
「『終焉の王達』を指す言葉。創造者にして破壊者。この世界の循環の最後を司る『異貌存在』、だろ?」
「模範的な回答だね。では、彼らはどうやって顕現する? この世界に影響を及ぼす神々の『存在係数』はいかほどだい?」
「そうか……! それで『超大型ダンジョンコア』が必要なのか」
「むしろ逆なんだよ、我が主」
わずかに俯いたナナシが、小さくため息を吐いたように見えた。
「本来、『超大型ダンジョンコア』は彼ら『終焉の王達』をはじめとした外部存在の顕現ソースとしてこの世界にあるんだ」
「なんだって……!? じゃあ、王都の『シェラタン・コア』も……?」
「あれについては情報を得ていないね。けれども、『エルメリア王の迷宮』を生み出している超大型ダンジョンコア『コレー・コア』は、『終焉の王達』に対応したものだ。初代エルメリア王は、いろいろと知りすぎた人だったみたいだね」
その言葉を聞いた瞬間、冷たいものが背中を駆け抜けて、喉が鳴った。
グレイバルトは『反転国家ハディス』についてなんと報告していた?
土地ごと住民全てを瘴気で塗り潰したと言っていた。
その言葉から察するに、エルメリア王国での魔王事変よりもずっとひどい状態なはずだ。
守るべき場所を持たない彼らは、かつてモーディア皇国に住んでいた人間全てを『悪性変異』に変えて南下してくる。
そして王国が人為的な〝大暴走〟の対応に追われているうちに、『トゥルーマンズ』のメンバーは『エルメリア王の迷宮』に潜り、『コレー・コア』にペルセポネを接触させるつもりに違いない。
シンプルだが、効果的で効率的なアクションだ。
「対策を考えないと」
「残念ながら、できることはかなり少ないね」
ナナシの言う通り、相手の行動がシンプルであるが故に、できることは限られてくる。
バケモノどもが攻めてくる以上、無視するわけにはいかない。
つまるところ、直接的に『トゥルーマンズ』を止めるしか方法がないのだ。
「ティーパーティーって、こういうことか……!」
「少なくとも、彼らは準備を進めているようだね。テーブルとなるのは、おそらくエルメリア王国だろう」
茶話会なら茶話会らしく、言葉のやり取りで終わらせたいものだ。
まあ、俺とロータスでは平行線にしかならないだろうけど。
「さて、どうする。俺に何ができる?」
口からこぼれたのは、そんな自問だった。
選択肢は少ない。いや、むしろ一つしかないとも言える。
「……ダンジョンアタックの準備をしよう。『トゥルーマンズ』より先に、俺達で『コレー・コア』を押さえる」
「そこまでやって大丈夫なのかね?」
「おそらくなんだけど、そこまでしないと訓練にならないと思う」
「なるほど。それはそれで、恐ろしい話だね」
背後の使い魔がどこか楽しげな声を上げて、するりと俺を包み込む。
揺らめくビロードのマントとなったナナシは、俺の『外殻』だ。
俺の存在をこの世界に固定して、逸脱しすぎないようにするための。
「何それ、格好いい!」
「お披露目はもう少し先のはずだったんだけどな」
茶化すようなことを言うミントに軽く苦笑をして見せてから、俺は母を視界に捉える。
「……いくぞ!」
俺が声を発すると同時に、ミントがその目に赤い殺気を宿して一気に踏み込む。
【狂戦士化】を完全に使いこなしたミントは、それだけで英雄クラスの剣士だが、母はその一撃を軽やかにいなす。
高難易度迷宮に挑んで本調子になってきた、とは聞いていたものの……まさか、これほどとは。
「隙ありですッ」
「なしよ?」
ミントに続いて懐に踏み込んだベンウッドが鋭く拳を打ち込む――が、それをさらりと避けた母は、容赦なく彼の腹を蹴り上げた。
爪先が空に浮くほどの一撃をまともにもらい、ベンウッドが地面に倒れ伏す。
あれは痛い。もう少し容赦とか手加減とかを覚えてほしい。
「まだまだぁーッ!」
体勢を立て直したミントが、重みと速度を伴った連撃を叩き込む。
母はそれをにこにこと笑いながら受け流しつつ、口を開く。
「ミントちゃん、もう一声。速さもパワーも申し分ないけど、踏み込みと技術が足りないわ」
「な……!」
「あなたは蹂躙向きよ。自分を怖がっちゃダメ。結果はどうあれ、敵は殺すのがマナーなのよ?」
動揺したミントが見せた隙は、母にとって充分な好機となった。
つまり、あっという間に叩き伏せられてしまった。
「アストルは来ないの?」
「いや、二人は充分な仕事をしてくれたよ」
母にそう返事をして、俺は指をパチンと鳴らす。
その瞬間、母の動きが止まった。
「……あら」
「これで、一勝一敗って感じかな?」
膝をついた母に、俺はなんとか痩せ我慢で笑って返す。
そう、痩せ我慢だ。
この力は燃費が悪すぎるし、この魔法は魔力を使いすぎる。
だが、こうして母に一矢報いることはできた。
「やだ、この子ったら。母さん、やる気になっちゃう」
「え?」
構築した魔法式にひびが入っていく。
嘘だろ? 異界の神を拘束するために開発した魔法だぞ!?
存在そのものを拘束して、このレムシリア世界と同じだけの重さで動きを封じる、【神威】を込めた概念魔法。
かの『青白き不死者王』が俺に使ったような、存在の根源的な部分に働きかける魔法だというのに……何故母は動けているんだろう?
「まだまだね、アストル。これじゃあ、今一つよ」
立ち上がった母が、にこりと笑って……俺に肉薄した。
◆
「先生、動きがありました」
母との訓練を始めて一ヵ月。
グレイバルトが深刻な顔をして、報告書を持ってきた。
普段は口頭でのやり取りが主なのだが、報告書が上がってきたということは、詳しい分析まで終わっているのだろう。
「『トゥルーマンズ』か?」
「はい。旧モーディア皇国を制圧後、国家組織を乗っ取り……いえ、塗り潰しました」
「塗り潰した?」
「はい。『反転国家ハディス』を名乗り、☆1主導の国家を形成した後、プロパガンダと拉致を行なって、各地の☆1を集めています」
「いよいよ〝ティーパーティー〟とやらを始めるつもりか……!」
それがなんであれ、良くないものだというのは肌感覚で理解している。
何せ、主催者は死の概念を司る『青白き不死者王』であるレディ・ペルセポネなのだから。
「『青白き不死者王』に関しては?」
「それが全く。表立って動いているのは、国主ロータスと……」
「待て。国主?」
耳慣れない言葉に、思わず聞き返す。
それに頷いて、グレイバルトが机に広げられた資料の一枚を指さした。
組織図が描かれた報告書を見つめながら、俺は小さくため息を吐く。
「国主、か。つまり国王になったわけか? ロータスは」
「ハディスの基底部が『トゥルーマンズ』である以上、そうなりますね」
俺とて、ヴィンセント王に冗談めかして勧められたことがある。
――☆1国家を作ってみないか、と。
半分冗談で半分本気だと言っていたその提案は、あまりに荒唐無稽が過ぎて当然断ったのだが……ロータスはやってのけたというわけだ。
そして、俺が当時危惧した通りに世界を騒乱へと巻き込もうとしている。
「他の〝二つ名付き〟については?」
「〝寂雪〟のフレグラについては、国境部で小競り合いを起こしています」
「ぶつかっているのはグランゾル侯爵か。大丈夫だろうか」
「分析では、侵攻というよりも圧をかけるのが目的のようです。内部で何かしらの準備行動をしているのを邪魔されたくないんでしょう」
グレイバルトの言葉に頷いて、俺は別の資料を手に取る。
「それで、何を隠している? 君ならもう掴んでいるんだろ?」
「あいにく、ガードが堅くて決定的な情報とは……」
「構わない。君の勘はきっと正確だ」
俺の言葉に少し顔を綻ばせたグレイバルトが、懐から折り畳まれた紙を取り出す。
「先日、消息を絶った『木菟』からの報告書です」
「……!」
「お気になさらないでください。彼は仕事に殉じたのです。メリゼー子爵家子飼いの『砂梟』ではなく、『木菟』として生きたことを誇りに思っているはずです」
そう言われて、俺は喉まで出かかった言葉を呑み込む。
頭目たるグレイバルトがそのように言っているのに、俺が彼らの生き様に水を差すわけにはいかない。
こうした犠牲が出るだろうことも、少し覚悟はしていた。
だが、やはり現実に突きつけられると、罪悪感が残る。
「彼の報告によると、戦争を始めるつもりのようです」
「戦争、か。元モーディアの国力をもってか?」
口にしてから、それはないと首を横に振る。
モーディア皇国というのは、『トゥルーマンズ』にとって怨念の地だ。
彼らにとってホームグラウンドであると同時に、最も許されざる場所。
「『穢結石』で住民ごと塗り潰したんだな?」
「はい。今やあの地は、余人の立ち入れぬ忌み地です。もはや偵察も放てません」
「いいや、充分だよ」
そう、充分だ。何をしようとしているのか、うっすらとわかった。
反転国家という名前が、すでに目的を示している。
ロータス達『トゥルーマンズ』は、この世界を丸ごとひっくり返すつもりなのだ。レディ・ペルセポネの加護と人造魔王の作り出す『穢結石』によって。
「終末の神と魔王がいっぺんに来るなんて、ずいぶん大事になったな」
「それに対抗するために先生がいると、小耳に挟みましたが?」
グレイバルトの言葉に、思わず噴き出してしまう。
それこそ、ずいぶんと大役を任されたものだ、と。
俺というのは、少しばかり小器用な☆1の魔法使いにすぎないというのに。
「各所への通達はいかがいたしますか?」
「エルメリアには俺が直接出向くよ。すまないが、君は状況変化に備えてくれ」
「やはり、起こりますか? 戦争が」
「いいや、起こるのは『淘汰』だよ。彼ら、この世界を変えるついでに何もかもダメにしてしまうつもりみたいだ」
ただの戦争であれば、まだ良い。
いや、良くはないんだけど……それは、人の営みの範疇にある。
だが、レディ・ペルセポネという『はじまりの混沌』の影響がある以上、それはもはや別次元の話だ。
〝煙火〟のレザニアという男が反転したように、この世界そのものが別のモノにすり替わってしまう。
あの異様が、この世界の普遍となってしまえば……事実上の世界滅亡である。
「それじゃあ、行ってくれ。俺も動くよ」
「はい。それでは」
景色ににじんで消えるグレイバルトに軽く頷いて、俺も立ち上がる。
そして、部屋の中を歩き回りながら、まとまらない考えを整理していく。
「ロータスの考えがわからないな。☆1救済はもうやめたのか? 世界を丸ごと滅ぼす方向にしたんだろうか? そもそも、動きが遅い。『不死者王』が動けばもっと手早い。ティーパーティーとは何を指す……?」
「お困りだね、我が主。アドバイスが必要かな?」
俺の独り言に、応える声があった。
「おっと、ようやく戻ったのか? ナナシ」
「ずっといたさ」
「その割に姿を見なかったようだけど?」
この使い魔は、ここのところ姿を現さなかった。
側にいることはわかっていたが、呼びかけても返事をせず、気配を希薄にしていたのだ。
「なに、少しばかり君の力を使って調べものをしていたんだ」
「それで、アドバイスは?」
「『不死者王』についてだけど、彼女が動かないのには理由がある」
「聞かせてくれ」
俺はソファに座り直し、茶菓子のクッキーを差し出しながら、ナナシに尋ねた。
「負荷が高すぎるんだ。あるべき時に現れる彼女が、予定外に現れてしまったからね」
「ああ、それは俺の【神威】の時も聞いたな。あまり長居できないって話だろ?」
「それだけじゃない。彼女は順番を抜かしたんだ」
首を傾げる俺に、ナナシはクッキーをかじりながら、指を小さく振った。
「本来、あの『青白き不死者王』は支配、戦争、飢饉の『淘汰』の果てに登場する〝終末〟だ。何もかもがダメになって疲弊しきった世界を反転させ、死の世界へと変じさせる役割を持っている」
「つまり、今の世界は居心地が悪いわけか?」
「どこかの〝魔導師〟があらゆる厄災のタネを解決してしまったからね」
ナナシがご機嫌そうに頭蓋を鳴らす。
相変わらずの様子に少しばかり安心して、俺は疑問を挟んだ。
「じゃあ、何故この世界に『不死者王』がいるんだ?」
「そこだよ。それが知りたくて、少しばかり時間を遡航させてもらった」
「え?」
「君の力を使って『全知録』にアクセスしたんだ。おかげで擦り潰されるかと思ったよ」
俺の使い魔がとんでもないことを言っている気がする。
『神々の書庫』と呼ばれる『全知録』には、この世の全ての知が集約されているとされる。ナナシは優秀で得体のしれない奴だが、まさか『ダンジョンコア』もなしに『全知録』へ意識を捻じ込むなんて。
「後学のために尋ねるけど……それ、俺にもできる?」
「無理だね。吾輩だってできればしたくなかったんだ。だけど、いろいろとわかったことがある」
「教えてくれ。今は、いくらでも情報が欲しい」
ナナシが黄色い目を細めて、俺を見つめる。
そして、衝撃の言葉を放った。
「モーディアの研究者はずいぶんと愚かで、ずいぶんと天才だったみたいだ。あのレディは……生身の体に降ろされた、憑依体だよ」
ナナシ曰く――あのレディ・ペルセポネは、☆1の少女に降霊した『青白き不死者王』の憑依体であるらしい。
端末であり、コピーであり、本人でもあるという存在で……つまり、この世界の人間の体を使って無理やりに顕現している。
「おそらく、人造魔王の研究の一環だろうね。『存在係数』が低い☆1の体に、どこかしらの『異貌存在』を捻じ込もうとしたんだろう」
「それがどうして『不死者王』を捻じ込むことになったんだ?」
「さあ? おそらく偶発的な事故だと思うよ。だけど、それが『トゥルーマンズ』の起点になったのは、『全知録』で視てきた」
魔法実験に事故はつきものだ。
この学園都市で暮らしていれば、それは嫌でも理解する。
それにしたって、☆1を認めないモーディア皇国の研究者が、最も☆1の特性を理解していたなんて、少しばかり意外だ。
☆1の『存在係数』や拡張性についての研究がとても進んでいる学園都市でだって、☆1を召喚素体にするなんて発想は、まだ聞いたことがない。
☆1を非人間扱いするモーディア皇国だからこそ生まれた考えなのかもしれない。
「つまり、ティーパーティーが佳境に入るまで、レディは動けないってことさ。だけど、使徒に任ぜられたロータスは違う」
「ああ。あいつは目の前でレザニアを『反転』させた。その時に『青白き不死者王』の気配も確かに感じた」
「あの時はロータス一人だったかもしれないけど、今は取り巻きも『使徒』になっているかもしれないね。概念的な繋がりを得た彼らは、少しばかり厄介だよ?」
「もしかして、【神威】を使ってくるか?」
俺の言葉に、使い魔は首を横に振って答える。
「それはないはずだ。あるとしても、劣化コピーをさらに劣化させた異能くらいだろうね」
「じゃあ、『トゥルーマンズ』達の能力って……」
そう口にしてから、合点がいった。
『先天能力』にしたって些かおかしいあれらの能力は、瘴気由来のものかと思ったが、おそらく『青白き不死者王』も一枚噛んでいるのだろう。
その人間に関わりの深い異能を引き出しているのかもしれない。
「わかったことは多いけど、対策になりそうなものは少ないな。『青白き不死者王』を物理的に押さえられそうだってこと以外は」
「そこだよ、我が主。この世界の生物に依る以上、レディの力はこの世界の理に縛られる。では、どうやってこの世界をひっくり返す?」
ナナシに問われた俺は首を捻る。
「『穢結石』をばら撒く? いや、非効率だな。それに、俺達が対策する方がきっと早い。世界を大本から反転させるっていうなら、もっと根本的な方法が必要か……?」
考えるうちに、一つの答えに行き当たる。
「まさか、今から手順を守るつもりか?」
「我が主はそれなりに賢いようだね。そう、彼らは他の『終焉の王達』か、それにあたる『淘汰』を呼び込むつもりだろう」
「その根拠は?」
「『全知録』がそう予測していた、としか言えないね」
どうやらナナシは、『全知録』でろくでもないことを知ってしまったらしい。〝繋がり〟からもそれが伝わってくる。
「だから、彼らは『超大型ダンジョンコア』を欲するだろう」
「いくら無限の願望器たる『超大型ダンジョンコア』でも、そんな願いを叶えられるのか?」
俺の質問に、使い魔が黄色い目を細めて首を横に振る。
「そうじゃないよ。『はじまりの混沌』がなんたるかを思い出してみたまえ」
慇懃無礼なナナシにため息を吐きつつ、俺は答えを口にする。
「『終焉の王達』を指す言葉。創造者にして破壊者。この世界の循環の最後を司る『異貌存在』、だろ?」
「模範的な回答だね。では、彼らはどうやって顕現する? この世界に影響を及ぼす神々の『存在係数』はいかほどだい?」
「そうか……! それで『超大型ダンジョンコア』が必要なのか」
「むしろ逆なんだよ、我が主」
わずかに俯いたナナシが、小さくため息を吐いたように見えた。
「本来、『超大型ダンジョンコア』は彼ら『終焉の王達』をはじめとした外部存在の顕現ソースとしてこの世界にあるんだ」
「なんだって……!? じゃあ、王都の『シェラタン・コア』も……?」
「あれについては情報を得ていないね。けれども、『エルメリア王の迷宮』を生み出している超大型ダンジョンコア『コレー・コア』は、『終焉の王達』に対応したものだ。初代エルメリア王は、いろいろと知りすぎた人だったみたいだね」
その言葉を聞いた瞬間、冷たいものが背中を駆け抜けて、喉が鳴った。
グレイバルトは『反転国家ハディス』についてなんと報告していた?
土地ごと住民全てを瘴気で塗り潰したと言っていた。
その言葉から察するに、エルメリア王国での魔王事変よりもずっとひどい状態なはずだ。
守るべき場所を持たない彼らは、かつてモーディア皇国に住んでいた人間全てを『悪性変異』に変えて南下してくる。
そして王国が人為的な〝大暴走〟の対応に追われているうちに、『トゥルーマンズ』のメンバーは『エルメリア王の迷宮』に潜り、『コレー・コア』にペルセポネを接触させるつもりに違いない。
シンプルだが、効果的で効率的なアクションだ。
「対策を考えないと」
「残念ながら、できることはかなり少ないね」
ナナシの言う通り、相手の行動がシンプルであるが故に、できることは限られてくる。
バケモノどもが攻めてくる以上、無視するわけにはいかない。
つまるところ、直接的に『トゥルーマンズ』を止めるしか方法がないのだ。
「ティーパーティーって、こういうことか……!」
「少なくとも、彼らは準備を進めているようだね。テーブルとなるのは、おそらくエルメリア王国だろう」
茶話会なら茶話会らしく、言葉のやり取りで終わらせたいものだ。
まあ、俺とロータスでは平行線にしかならないだろうけど。
「さて、どうする。俺に何ができる?」
口からこぼれたのは、そんな自問だった。
選択肢は少ない。いや、むしろ一つしかないとも言える。
「……ダンジョンアタックの準備をしよう。『トゥルーマンズ』より先に、俺達で『コレー・コア』を押さえる」
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