白銀が征く異世界冒険記―旧友を探す旅はトラブルまみれ!?―

埋群のどか

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第三章:蒸奇の国・ガンク・ダンプ

第59話

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『さぁさぁさぁ!! 皆さま、ご機嫌いかがですかー!?』

 司会のアリシアの呼びかけに観客席の観衆は声を上げた。ここまでの数々の名試合により観客のボルテージはうなぎ登りに高まっていた。

『最高潮の歓声、ありがとうございます!!  でも大丈夫ですか?  なんたって一番盛り上がるのはこの次、今年度の戦技大会の総締めくくり! とうとうやって来ました決勝戦ですよー!!』
「「「ウオオォォー!!」」」

 再びの大歓声は相乗効果で更に盛り上がる。今や観客らの歓声はコロッセオを飛び越え周辺まで轟いていた。

『それでは、栄えある決勝戦の対戦者をご紹介しましょう! まずはこの方!』

 アリシアのアナウンスと共にファンファーレが鳴り響く。音楽と共に皆の緊張も高まる中、選手入場口に現れた人影に歓声が上がった。

『本大会初出場ながら、その高い実力と高度な機体で見事ここまで勝ち上がったニューヒロイン!! たなびく白銀の髪はまるで流れゆく銀の流星! ミーズ工房所属、クロエ選手です!!』

 観客の大声援を一身に浴びながら、入場口からクロエは姿を現した。その堂々とした歩みは、初めの一回戦時とは段違いである。ここまで勝ち上がったと言うことはその試合数の数だけ負けたものもいる。彼女らの分まで情けない戦いは出来ない。その覚悟がクロエの中で燃え上がっていた。

『さぁ、ここでクロエ選手の紹介をしていきましょう! 見た目は可愛らしいクロエ選手ですが、何と驚くべきことにギルド所属の冒険者なんです! しかもさらに驚きなのがそのランク! なんとAランクなんですよ! 「白銀の闇」の二つ名を持つ彼女は魔法を主とした戦いをするそうです。今回、大会に出場するきっかけになったのはミーズ工房の蒸奇装甲スチームアーマー装着者がいなかった事だそうです! そうなると来年以降の参加は確実とは言えないのが悔しいところ! 皆さん、彼女の戦いを、しかと、目に、焼き付けておきましょう!!』

 少し大仰な語り口にクロエが苦笑しながらもフィールドへたどり着く。フィールドへ足を踏みしめ、ぐるりと辺りを見回した。周囲の観客は今年最後の試合だからなのか、これまでのどの試合の時よりもフィールドへ注目している。ふと空を見上げると、すでにコロッセオからわずかに見える空には太陽はすでにない。日が傾いている証だ。
 クロエは空を見上げながら気の高まりを鎮めるため深呼吸をする。そして吐く息と同時に視線を下に、自身が出てきた入場口とは反対のゲートを見つめていた。

『続く対戦者は、この方でーす!!』

 アリシアの言葉と共に再び場内にファンファーレが鳴り響いた。クロエの時とは違うその音楽が少し静まると同時に、多くの歓声を引き連れながら一人の人影が姿を現した。

『我らがガンク・ダンプ国軍、鉄血蒸奇軍アームストロングスチーマー所属! 圧倒的な戦闘能力と画期的戦闘スタイルはまさに鎧袖一触ッ!! 特任編成隊副隊長、ルウガルー・ヴォルケンシュタイン選手です!!』

 クロエの時と負けず劣らずの大歓声の中、ルウガルーは軍人らしいまっすぐな姿勢と力強い足取りでフィールドまでの道のりを歩む。ふとクロエとその視線が合うと、一度だけ、ほんの一瞬だけフッと軽く微笑んだ。
 ルウガルーがフィールドに昇りクロエと相対する。二人はそのままフィールドの中心に近寄り、轟く観衆の大歓声と司会のアナウンスを背景に話し始めた。

「……こうしてこの場で視線を合わせることになるとは、初めてお会いした時には想像もしなかったでありますよ。」
「ボクもだよ。でも、こうして大会に出ることになって、その大会にルウさんも出るってことを知った時、不思議と戦うような気はしてたんだ。」

 まるで口説き文句のような言葉をさらりと口にするクロエ。彼女自身、前世のころから女っ気がなかったせいで知らないだけではあるのだが。
 その言葉に思わずルウガルーは苦笑してしまった。

「フフッ……クロエ殿、まるでそれは女性を口説くみたいでありますよ?」
「え!? ま、まぁでも、ルウさんは女性だし……それにルウさんみたいな美人さん、前世の男の時のボクなら迷わず口説いていたかもよ?」
「――ッ!? あ、あまりからかわないでいただきたい……!」

 クロエの言葉にルウガルーは顔を真っ赤にしながら視線をそらした。その狼狽ぶりにクロエは内心やってやったとばかりにガッツポーズを決めていた。例え本当に前世の時と同じ男であったとしても、女性を口説くような度胸なぞ持ち合わせていない臆病者であることは言わなければわかるまい。その様な事を考えていた。

『それでは両選手、試合前の握手を交わしてください!』
「じゃあ、よろしくお願いします。」
「こちらこそ、胸を借りるつもりで挑ませていただきます。」

 握り合った手をほどき、二人は適度に距離を取る。二人の表情はまるで決勝の大一番とは思えないほどにリラックスしたものだった。

『両選手、準備が整ったようですね。それでは今年度の締めくくり! 蒸奇装甲スチームアーマー戦技大会最終試合……始めっ!!』

 司会のアリシアの掛け声とともに、蒸奇装甲スチームアーマー史上最高峰たり得る世紀の試合が今、始まる。

 ――はずだった。

―続く―
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