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本当の宝物

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 カイルは自分に何かできることはないかと真剣に考えた。
 そして、少しずつ貯めていた貯金を全て持って、マナの元へと走った。

「マナ!」
 勢いよく駆け込んできたカイルにマナは驚く。
「ど、どうしたの?」
 乱れた息を整え、カイルはマナに袋を差し出した。
「俺の貯金」
「は?」
 マナはわけがわからないという顔をした。

「俺の貯金もナナのペンダントを買う足しにしてくれ」
 カイルはマナに袋を押しつけた。
「待って、どうしたの? 私……受け取れない」
 マナは首を横に振る。

「俺だって、ナナの喜ぶ顔がみたい。それに……おまえが苦しむ姿は見たくないんだ」
 カイルの表情は真剣だった。

「カイル……あなたにそんなに心配させて、ごめんなさい。でも」
「受け取ってくれ! でないと、俺は……」
 カイルはいつもマナのことを気にかけてくれる、優しい人だ。彼の気持ちは素直に嬉しかった。

「わかった。受け取る、ありがとう。ナナを喜ばしてあげよう」
 マナが微笑むと、カイルの表情がみるみる明るくなっていく。
「ありがとう、マナ」


 次の日、二人はペンダントを買いに行った。
 二人のお金を合わせても、小さなルビーのペンダントしか買えなかった。

「こんな小さいのしか、買えなかったね」
 マナは少し残念そうに俯く。
「何言ってんだ。ナナはきっと大喜びするさ」
 カイルの笑顔にマナはつられて微笑んだ。


「おねえちゃん……ありがとう」
 マナがナナにペンダントをプレゼントすると、ナナは泣いて喜んだ。
 どんなに小さなルビーだって嬉しかった。そこにはマナの想いが詰まっているのだから。

「お姉ちゃんが、私のために無理してるのわかってた。ごめんね、ありがとう……お姉ちゃん、大好き」
 ナナが声をあげながら泣く。
 マナももらい泣きする。

 二人は抱き合いながら姉妹の絆を確かめ合った。
 その様子を少し離れたところからカイルが見守っており、その瞳には涙が光っていた。


 マナはこの前のお礼にカイルを自宅へ招待し、ゆっくりとティータイムを楽しんでいた。

「カイル、本当にありがとう、あなたのおかげよ。私一人ではとても……」
「何言ってんだ、マナの気持ちが俺を動かしたんだ」
 カイルは急に立ち上がると、マナの後ろへ回り、マナの首にネックレスをかけた。

「これ、俺からマナへ」
 マナは驚いて、カイルを見つめた。カイルの顔がほんのり赤くなっていた。
「マナは、いつも人のことばっかりでさ、たまにはいいだろ。受け取ってくれよ」

 そのネックレスはいろいろな材料が組み合わさっていて、バラツキがあり、手作り感があった。

「もしかして、これ……手作り?」
「ああ、俺の手作り、買う金なかったからさ、ごめんな」
「ううん。すっごく、嬉しい、ありがとう」
 マナはカイトの優しさに、心が満たされていくのを感じていた。
「こんな暖かい贈り物ははじめてよ」
 カイトは照れくさそうにそっぽ向いていた。


「こらー! 二人でずるい、何してるの?」
 急に、ナナが二人の間に入ってきた。

「ナナ、見て、カイルがくれたの」
 マナがネックレスを見せると、
「ずるーい、私も欲しい」
 ナナが頬を膨らませた。腕に絡んでくるナナを振り払いながら、カイルが叫ぶ。
「あのなあ、あれ作るの大変だったんだぞ! あれが最初で最後だ」
 カイルとナナのじゃれあう姿を愛おしそうに見ながら、マナは幸せをかみしめていた。


 今日も白怪盗は夜の街へと現れる。今を懸命に生きる人々の味方として





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