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プロローグ
いつもと違う朝
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朝、いつも通りの時間帯にいつも通り目が覚める。いつもと何も変わらない、いつも通りの朝だ。
体をゆっくりと起こしながら、枕元に置いてあるはずのスマホを探す。が、見当たらない。というか、枕がいつもと違う。ずっと昔に、母に買ってもらった可愛らしいピンク色のうさぎのイラストのはいった、ちょっと小さめの枕。高校生になった今ですら捨てられず、結局ずっと使い続けてきた。
それが、今手元にあるのは真っ白でなんのイラストもはいっていない、ただの枕。
そこでふと部屋を見渡してみて、初めてここが見慣れたはずの自分の部屋ではないことに気が付いた。白を基調とした、シンプルで静かな部屋。
病室だ。
なんで、私が病院にいるの?
そういえば、今着ている服も着慣れた薄紫色と白のボーダーのパジャマではなく、なんの飾り気もない白いだけの病院服だ。
肌にあまり馴染みのない感覚に、さらに混乱が深まっていく。
思わずパニックを起こしそうになりながらも必死で深呼吸をし、気持ちを落ち着かせてから部屋をもう一度見渡してみる。
うん、どこからどう見ても自分の部屋ではなく、病室だ。それも、私の他には誰もいないから、おそらく個室の。
頭の隅に、悲しそうに笑う母の姿が見えたような気がした。母がいる部屋は、いつも薬品のようなツンと鼻にくる匂いがしていた。この部屋も、それと同じような匂いがする。
そんなことを考えながらぼうっとしていると、ふとベッドのすぐ側にある棚の上に、小さな水色の表紙のノートが置いてあることに気が付いた。表紙には、見慣れた自分の筆記で、大きく『日記』と書いてある。
日記なんて、つけてたっけ? 不思議に思いながらもそのノートをなんとなく開いてみて、私は死ぬほど後悔した。
ノートの一番最初のページには、何故か今日の日付より随分と進んでいる日付と、『私は一日経つと記憶がリセットされてしまう病気にかかっています』と、これまた見慣れた自分の字ででかでかと書いてあった。ご丁寧なことに、端っこの方に『青城 時雨』とフルネームまでしっかり書いてある。
ページをもう一枚、めくる勇気はなかった。
その時、突然ドアをノックの音が聞こえたかと思った瞬間、返事をする前に勢いよく病室のドアが開いた。
いや、今のノックする意味あった? 驚きながらも呆れたようにそう思いながら、私はドアを開けてズカズカと病室に入ってきた人物を眺めた。
ふわっとした明るい茶色の髪に、人懐っこそうな笑顔を浮かべた青年だ。
ちなみに、見覚えはない。全くない。
ふと、青年と目が合ってしまい、数秒間ぐらいお互いを見つめ合っていると、青年が私の持つ日記に目を止めて、どこか悲しそうな、ホッとしたような複雑な表情を浮かべた。だけど、私には彼の心情はわかっても、なぜそんな顔をするのかはわからなかった。
なぜなら、彼とは初対面だから。私は、彼の名前すら知らない。
その時、青年がこちらを真っ直ぐに見つめて、花が咲くような笑顔を見せながらさも当たり前のように言った。それはもう、不気味なほど自然に。
「好きだよ、時雨」
「は?」
私の一日は、絶望から始まる。
体をゆっくりと起こしながら、枕元に置いてあるはずのスマホを探す。が、見当たらない。というか、枕がいつもと違う。ずっと昔に、母に買ってもらった可愛らしいピンク色のうさぎのイラストのはいった、ちょっと小さめの枕。高校生になった今ですら捨てられず、結局ずっと使い続けてきた。
それが、今手元にあるのは真っ白でなんのイラストもはいっていない、ただの枕。
そこでふと部屋を見渡してみて、初めてここが見慣れたはずの自分の部屋ではないことに気が付いた。白を基調とした、シンプルで静かな部屋。
病室だ。
なんで、私が病院にいるの?
そういえば、今着ている服も着慣れた薄紫色と白のボーダーのパジャマではなく、なんの飾り気もない白いだけの病院服だ。
肌にあまり馴染みのない感覚に、さらに混乱が深まっていく。
思わずパニックを起こしそうになりながらも必死で深呼吸をし、気持ちを落ち着かせてから部屋をもう一度見渡してみる。
うん、どこからどう見ても自分の部屋ではなく、病室だ。それも、私の他には誰もいないから、おそらく個室の。
頭の隅に、悲しそうに笑う母の姿が見えたような気がした。母がいる部屋は、いつも薬品のようなツンと鼻にくる匂いがしていた。この部屋も、それと同じような匂いがする。
そんなことを考えながらぼうっとしていると、ふとベッドのすぐ側にある棚の上に、小さな水色の表紙のノートが置いてあることに気が付いた。表紙には、見慣れた自分の筆記で、大きく『日記』と書いてある。
日記なんて、つけてたっけ? 不思議に思いながらもそのノートをなんとなく開いてみて、私は死ぬほど後悔した。
ノートの一番最初のページには、何故か今日の日付より随分と進んでいる日付と、『私は一日経つと記憶がリセットされてしまう病気にかかっています』と、これまた見慣れた自分の字ででかでかと書いてあった。ご丁寧なことに、端っこの方に『青城 時雨』とフルネームまでしっかり書いてある。
ページをもう一枚、めくる勇気はなかった。
その時、突然ドアをノックの音が聞こえたかと思った瞬間、返事をする前に勢いよく病室のドアが開いた。
いや、今のノックする意味あった? 驚きながらも呆れたようにそう思いながら、私はドアを開けてズカズカと病室に入ってきた人物を眺めた。
ふわっとした明るい茶色の髪に、人懐っこそうな笑顔を浮かべた青年だ。
ちなみに、見覚えはない。全くない。
ふと、青年と目が合ってしまい、数秒間ぐらいお互いを見つめ合っていると、青年が私の持つ日記に目を止めて、どこか悲しそうな、ホッとしたような複雑な表情を浮かべた。だけど、私には彼の心情はわかっても、なぜそんな顔をするのかはわからなかった。
なぜなら、彼とは初対面だから。私は、彼の名前すら知らない。
その時、青年がこちらを真っ直ぐに見つめて、花が咲くような笑顔を見せながらさも当たり前のように言った。それはもう、不気味なほど自然に。
「好きだよ、時雨」
「は?」
私の一日は、絶望から始まる。
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