どうやら、僕は彼女ではなく姉を作ってしまったらしい。

鵜海 喨

文字の大きさ
3 / 3
一章

3

しおりを挟む
「大丈夫ですか? 主人?」
「あ、うん」
 死ぬかと思った。正直、何か見た気がするが、まぁ何かあったのだろう。気にしたら負けだ。
「主人。それより、あの服が着せられなかったので、その、着てください」
「ん? あ、ああああああああぁぁ! ふっ服。服持ってきて!」
「え、あ、あはい。これです」
 僕は袖に手を通す。しかし、彼女同様に腕と一緒に管が袖に通り、裾から出るといった形になってしまう。仕方ないことだが。
「ふう。仕方ない事だけど。腕に管が触れて気持ち悪いな。生ぬるいし」
「確かに。気持ちは悪いですね。波打って生ぬるいですし、手首が冷たくもなりますし。本当に最悪ですね。付いてない時は一時もないですが」
 冷たい? それはダメだな。それが原因で、体温が低下して、無駄なエネルギー及び栄養を持ってかれたら、死んでしまう。何かカバーのような保温ができる物を作くならないと。
「それはそうと、お腹空かない?」
「私は空かないですが」
 そういえばそうだった。彼女は消化器官を持たないんだ。だが、謎だな。唾液の行き場はどうなっているのだろう。通常は大抵飲み込まれるが彼女の場合飲み込んだ先がない。だとすれば、どこに。そもそも唾液は出ているのだろうか?
「それもそうか、でも一つ思った事があるのだが、唾ってどうしてる? もしや飲み込んでいる?」
 すると彼女は不思議そうな顔をして口を開いた。
「唾ですか。口の中に溜まったら、飲み込んでいますが。それがどうかしましたか?」
 飲み込んでいる? もしや消化器官があるのだろうか? だが、彼女のお腹の凹み具合から備わっているとは到底思えない。ならなぜ。だが今考えていても仕方ない。もういいとする。
 疑問が溢れ出てくるが、いちいち考えていたら底無しに床にはまってしまうようなものだ。
「いや何も。じゃぁキッチンに行って何か食べようか」
「はい!」
 と、差し出された彼女の手をとり、ベットから降りる。そして、自室の扉を開けキッチンに向かう。
「まぁクフィーどうしたの?こんな時間に降りてきて。ってその子は?」
 とキッチンに立っていた母が目を丸くして尋ねてきた。
「母上この子は僕が作った。子です。名前はまだ無いですが今後、世話になります」
「はぁ。作った。そう。あの血属性魔法で?」
「はいその通りです」
 不思議そうな顔で彼女を見つめる。
「これから家族の一員になるのなら、名前は決めておいてちょうだいね。呼ぶな名に困るわ」
「わかりました。それでお腹が空いてしまいまして、何か食べる物をと」
「おやつなら、あの机にあるアップルパイを食べるといいわ」
 と、食卓の上にのっかている皿を指さした。
「ありがとうございます」
 僕は、彼女を連れてその机に向かう。
 うわ、何これ美味しそう。
 僕の目に飛び込んできたのは、切り出されたアップルパイだった。香ばしい匂いと独特の酸味ががった甘い匂い。僕の大好物だ。これほど美味しい物が食べられない彼女は心底可哀想だと思う。
「ごめんね。食べられるように作ってあげられなくて」
「あ、全然大丈夫ですよ」
 と、明るく言った。
「では、いただきます」
 それでは一口。
「サクッ」
 ゴロッとした、ジャム状のリンゴが口の中に入ってきた。パリパリとした生地の食感も最高。甘酸っぱいリンゴは下でもすり潰せるほど柔らかくとても美味しい。
 ん? 何故か左手首が生暖かい。それにそれが上腕を通って肩の辺りまで登ってくる。
「なんか手首、に違和感があるんだけど、ってえ?」
 僕の目に写ったのは、紅茶を飲む彼女の姿だった。
「お母様。このお茶美味しいですね」
「そうでしょ? お高いんですから」
 そんな会話が聞こえてくる。
「ちょ、ちょっと、もしや液体は飲めるの?」
「そうっぽいですね。わかりませんけど」
 は?
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

ちゃんと忠告をしましたよ?

柚木ゆず
ファンタジー
 ある日の、放課後のことでした。王立リザエンドワール学院に籍を置く私フィーナは、生徒会長を務められているジュリアルス侯爵令嬢アゼット様に呼び出されました。 「生徒会の仲間である貴方様に、婚約祝いをお渡したくてこうしておりますの」  アゼット様はそのように仰られていますが、そちらは嘘ですよね? 私は最愛の方に護っていただいているので、貴方様に悪意があると気付けるのですよ。  アゼット様。まだ間に合います。  今なら、引き返せますよ? ※現在体調の影響により、感想欄を一時的に閉じさせていただいております。

愛していました。待っていました。でもさようなら。

彩柚月
ファンタジー
魔の森を挟んだ先の大きい街に出稼ぎに行った夫。待てども待てども帰らない夫を探しに妻は魔の森に脚を踏み入れた。 やっと辿り着いた先で見たあなたは、幸せそうでした。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

私はもう必要ないらしいので、国を護る秘術を解くことにした〜気づいた頃には、もう遅いですよ?〜

AK
ファンタジー
ランドロール公爵家は、数百年前に王国を大地震の脅威から護った『要の巫女』の子孫として王国に名を残している。 そして15歳になったリシア・ランドロールも一族の慣しに従って『要の巫女』の座を受け継ぐこととなる。 さらに王太子がリシアを婚約者に選んだことで二人は婚約を結ぶことが決定した。 しかし本物の巫女としての力を持っていたのは初代のみで、それ以降はただ形式上の祈りを捧げる名ばかりの巫女ばかりであった。 それ故に時代とともにランドロール公爵家を敬う者は減っていき、遂に王太子アストラはリシアとの婚約破棄を宣言すると共にランドロール家の爵位を剥奪する事を決定してしまう。 だが彼らは知らなかった。リシアこそが初代『要の巫女』の生まれ変わりであり、これから王国で発生する大地震を予兆し鎮めていたと言う事実を。 そして「もう私は必要ないんですよね?」と、そっと術を解き、リシアは国を後にする決意をするのだった。 ※小説家になろう・カクヨムにも同タイトルで投稿しています。

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

夫から『お前を愛することはない』と言われたので、お返しついでに彼のお友達をお招きした結果。

古森真朝
ファンタジー
 「クラリッサ・ベル・グレイヴィア伯爵令嬢、あらかじめ言っておく。  俺がお前を愛することは、この先決してない。期待など一切するな!」  新婚初日、花嫁に真っ向から言い放った新郎アドルフ。それに対して、クラリッサが返したのは―― ※ぬるいですがホラー要素があります。苦手な方はご注意ください。

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

処理中です...