【完結】自傷探偵と日南くん。〜ときどき幽霊〜

あいう

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ep18.手がかりを探して

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 星川糺、という男の名前はインターネットで調べてもなかなか出てこなかった。
(……あんなにイケメンなんだから陽キャだと思うんだけどな)
 顔が良い人間というのは大体交友関係が広い。だから出身校や交友グループがわかればそこから芋づる式にずるずる引っ張れるわけだが。全く引っかからない。
(これはあんまりやりたくないけど……)
 奥の手がある。あまり気が乗らないが……。
(姉さんのアカウントに何かあるかもしれない)
 自分の好きな女性がネットリテラシーがない、というのは色々耐えかねるものがあるが復讐のためだ。スマートフォンで姉の名前を検索し、SNSのアカウントを探し出す。
(……あった)
 丁寧に顔写真もついている。美人な姉だから良いものの、ネットの怖さというものが彼女にはわからないのだろうか?
 俺は全呟きを遡って「星川糺」を探し出す。
 ……いない。
 ……いない。
 ……いない。
 ……………いた。
 姉の視点から取られた手前のパスタと、奥のパフェの写真。そして奥のパフェの手前には男性らしき服の一部が映りこんでいる。顔はわからないけれど多分コイツだ。姉は男っ気が無かったから、男の知り合いで一緒に食事に行くような間柄なのは、あの男しかいないはず。消去法でコイツは星川糺だ。
「……あれ、この店」
 写真の席は窓際で、外の風景が良く見える。この景色はどこかで見たことがあるかもしれない。それと、テーブルに敷かれたギンガムチェックのマットも。
「……アイツと行ったあの店だ」
 葛西が「パフェが食べたい」と言って連れて行かれたあの店。あの店と内装が似ている。
「……確かめてみるか」
 それほど遠くの店では無かったはずだ。ひとりでも行ける。

 電車とバスを乗り継ぎ向かったのは、葛西と食事をしにきた喫茶店。平日の昼過ぎ、外から見るには混んでないようだ。目当ての席は空いている。ウエイトレスさんに言えば例の席に連れて行ってくれるだろう。
「……ん?」
 例の席の斜め後ろ。そこに見慣れた顔がいる。葛西だ。まともな服を着ているから今日は探偵モードなのだろう。向かいには誰も座っていないが、オレンジジュースが置かれている。お手洗いにでも行っているのだろうか?
(まあ、関係ないか。俺の為に頑張ってくれてるんだし……。俺は俺で頑張ろう)
 軽いベルの音が入店時に鳴る。「いらっしゃいませ」とこの間、葛西をナンパした女性店員が迎えてくれた。
「お好きな席にどうぞ~」
 お好きな席に、と言っても目当ての席はひとつしかない。俺は写真と見比べながら席に座る。丁度葛西の逆向かいだ。相手が来たら顔が見えてしまう。まあ、葛西との共通の知り合いなんていないし、姉の知り合いも俺の顔を覚えているわけがないので、別にここにいるのがバレてもいいのだが。悪い事しているわけでもないし。
 ブレンドコーヒーを注文し、スマートフォンの画像を確認する。大丈夫だ、位置は合っている。ここが姉が座っていた席だ。奇跡的に外から見る景色も内装も変わっていない。
――さて、問題は星川をどうやって探すかだ。店員さんに聞いてみるか? いや、常連ならともかく、数年前の客の一人なんて雇われ店員が覚えているわけないだろうが。
(現場に来たら何かしらわかると思ったけど、何も手掛かりなんて――)
 そう、絶望した時だった。
「芽衣子! いい加減にしてくれ!」
――は?
 店に響いた男の怒鳴り声。それは葛西のものだった。
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