【完結】自傷探偵と日南くん。〜ときどき幽霊〜

あいう

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ep22.調査開始①

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 ……と、言っても。葛西のことは何も知らない。どこから調べればいいかなんて素人にわかるはずがないだろう。
「……困ったな」
 いきなり部屋を見て姉の友達を当たった葛西は頭が切れる人だったのだろう。少なくともこの何もない部屋から葛西=星川の手掛かりを探せだなんて無理だ。どこから調べればいいのか見当もつかない。
「いや……」
 まてよ、ひとつだけあてがある。

『いえ、大丈夫ですよ。いつもお連れ様とご利用ありがとうございます』

「あの人なら……」
 仮に葛西と一緒にいるのが姉だとして、だ。あの女性店員なら何か知っているかもしれない。「いつもお連れ様と」と言うくらいなのだから、葛西の最近の事について少なくとも自分よりは何か情報を持っていたりするだろう。
 次の日、俺は先日のレストランに顔を出していた。
「いらっしゃいませ。ご注文がお決まりになりましたらお呼び……」
 席まで通してくれたのは件の女性店員だった。俺は若干緊張しながらも彼女に声をかける。
「あ、あの……」
「はい?」
「この間ひとりであそこの席にいて、オレンジジュースを溢した男性の事と、あと……この女性について知りませんか……?」
 そう言って俺は姉の携帯に張り付けられたプリクラを見せる。彼女はそのプリクラを見せると顔色を変えた。
「……あと一時間で休憩なんです。それまで待っていただけますか?」
 業務を抜けることは出来ないので。彼女はそう言うと俺に注文を聞いた。
 きっかり一時間後、私服に着替えた彼女は俺の向かいの席に座る。同僚に賄いを注文すると、先に持ってきてもらったカフェオレに口をつけた。
「私、幽霊が見えるんです」
「ゆ、幽霊……?」
「信じられないと思いますけど。その女性はあの男性に憑りついている幽霊だと思います。よく覚えていますよ、最初は――、ああ、そうだ、その時は若い男性とご来店されていて。私注意したんですよ、メモで『隣の女の人すごい怒ってますよ』って。……ってあれ? 貴方あの時の――……」
「はい、恐らくその若い男性が俺です。その女性はこのプリクラの人で合ってますか?」
 彼女は目を細めてプリクラを見ると合点がいったように首を縦に振った。
「合ってます。あれから何度か来店されて、他の店員は一見一人で喋っている彼に気味悪がってしまって私が対応したんです。彼女、来店される度に機嫌が悪くて……すごい怖かったですよ……」
 と、いう事は葛西が言った通り姉は幽霊として葛西に憑りついているのか。信じられないが、彼女が言うにはそうらしい。だが……、仮に姉の幽霊が葛西に憑りついたとして、だ。葛西と星川はどう見ても別人だ。星川に憑りつくならわかるが、何故葛西に憑りつく必要がある?
「あの、このプリクラの男の人って、いつも来てる幽霊付きの男の人とは別人に見えます、よね……?」
「……うーん、そう見えますけど見た目っていくらでも変えられますからねえ」

『でも顔ちがくねえか』
『メイクだよ。ホクロの位置と鼻の形が同じだ。あとボードに貼ってあるプリクラの名前と一致する』

 そうか、女のメイクと同じで顔なんていくらでも変えられるのか。
 それだけするメリットがあると思わないが、整形なりなんなりして姿を変える事はできる。まるで指名手配犯の様だが、病的な思考を持つ葛西にとってそれは価値のある行為だったのだろう。
「……何を調べてるかは知らないですけどあんまりあの人達に関わらない方がいいですよ」
「え?」
「見えてない人にはわからないかもしてないですけど、憑いてる女の人」
 女性はプリクラに映った姉を指さす。
「この人、ずーっと男の人にべったりで、男の人に近づいた人全員を睨みつけてて……、あんなヤバイの早く除霊しなきゃ殺されますよ……」
 女性は冬だというのに冷や汗をかいていた。それが店に効いた暖房の暑さからだとは、俺にはどうしても思えなかった。
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