番になんてなりませんっ!

あいう

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3話

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「もう学校には慣れたか?」

全生徒の強制帰宅時間が過ぎた放課後、女子生徒が出て行った保健室で叶が八雲に問いかける。八雲は耳くそをほじりながら興味なさそうに答えた。

「慣れたよ。友達が出来たし、生徒会もいい感じ。あとは晴人先輩が俺の彼氏になってくれれば最高の学園生活だった」
「ヘイ彼女、俺で妥協しない?」
「誰が彼女じゃ」

叶で妥協するなんてありえない。
八雲の運命は晴人なのだ。これは決定事項。御影さえいなければ……と黒い考えが頭に浮かぶがフルフルと頭を振ってそれを振り切った。

「晴人先輩の彼氏さあ。結構いい人だったよ」
「御影くんか。まぁ有名だよな、人望も厚い」
「……あれ勝てないかもしれん」
「なんだ、珍しく弱気だな」
「ちょっとね」

初対面の自分に軽々しく触ってくる猿だと思っていたが、色々考えていることがわかった今は認識を少しだけ改めている。多分、晴人も御影の気遣いができたり、色々考えてくれている所を好いているのかもしれないとなんだか思ってしまった。

「……今日は一緒に帰れるの?」
「なんとか。車出すから買い物にでも行こう」
「やりぃ。一週間分買い込むか」
「オレは毎日カレーでもいいけど」
「俺が嫌だよそれは」

軽口を掛け合いながら八雲は叶の帰り支度を待っている。何気なく叶のデスクを見ると、そこには一通の可愛らしい便箋が紛れ込んでいた。

「……ラブレター?」
「浮気はもうしねえよ」

セフレ作ったどの口が。心のムカムカする部分を押さえつけながら八雲は口を尖らせた。

「べっつにー?付き合ってないしー」

叶は少し考え込んだそぶりをした後、悪戯っ子のように八雲の手を取り無理矢理ベッドへ連れ出した。何もわからないままに押し倒されると、抱きしめられ、そのまま胸に頭をぐりぐりと押し付けられる。

「でもオレは、お前がその気になるのをずっと待ってんだけどなー!」
「一生ないです!」

離せと頭を引っ叩くと嫌々大人しくなるものの叶は離れようとはしない。

「邪魔なんだけど」
「もう少しだけ」
「……」

抱きしめられたまま数分が立つ。他のαには触られるだけで鳥肌が立つのに、叶からは不思議とそんな気はしなかった。むしろ心地良いような、そんなまどろみに似た感覚が八雲を包む。やがて落ち着いてきた頃、叶が顔も見せずに声を上げた。

「なあ八雲」
「何?」
「オレたち、いつまで一緒にいれる?」

さあね、と八雲はそっけなく答えた。
最長で三年、同棲予定の期間は長い。だけどそれからは?親族とは言え、顔を合わせる機会は少ない。だが、きっと叶が言ってるのはそういうことではないのだろう。

「裏切ったのはアンタからじゃないか」

わかってる。本当は。あれが身体だけの関係だってことも、大人にとってはそれが珍しくないということも。でも、八雲にとってはあの時見たものだけが事実で、今でも心の奥底でトラウマとしてくすぶっていた。

「そろそろ許してくれよ」

叶はそう苦笑いするが、許す許さないの問題ではないのだ。
この人にはわからないだろうな、と八雲は半ば諦めに近い気持ちで、長い時間、そのまま、安寧を享受してした。
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