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冬、リリース前日。
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『……大丈夫、よね!』
「クオリティ的には……」
『僕は問題ないと思いますよ』
十二月の頭、出会って二ヶ月を過ぎた日にゲーム『サイドノシュート』が出来上がった。イラストは百点。BGMとシステムも完璧。問題はシナリオだ。
夫妻には見せていないが、正直に言ってSNSで炎上した。まず、染衣が予告として上げたスチルとゲームプレイ画像四枚のツイートが火種だった。
「障害者を馬鹿にしている」
「不謹慎だ」
「その立場の人間に失礼」
「障害は簡単に扱っていいテーマじゃない」
お前らの言うこと聞いてたら何も書けねえよ。
同人のことは半ば馬鹿にしていたが、どんなに燃えてもリリース中止にするかは自分次第と言うのは強みだ。炎上のことは夫妻も叶も知らないし、決行する。
フリーゲームフェスタは今週末、つまり明日。炎上したおかげでフォロワー数は五百まで跳ね上がった。ツイート数十以下の出来立てホヤホヤアカウントにこれまで客が付くのは良い傾向だろう。最も、新規で付いたのは野次馬だろうが。
「……まあつまらないってことはないだろうし、そこそこの評価がついて終わりだろ」
叶にプレイしてほしい。吉川にプレイしてほしい。その想いで制作したゲームだ。別に外野に何を言われたところで。
「ん……え……?」
タイムラインを見ていると一件のツイートが目に入った。
「あ」がツイートしている。内容はこんなものだった。
「フリーゲームフェスタ一般で出ます」
「え……なんで……」
意図がわからない。何故誰も見ていないのにこんなツイートを? 一般参加なんて好きにすれば良い、わざわざ言う必要なんてない。可能性があるとすれば、たったひとりのフォロワー「ドリームスピカ」のアカウント運用者に宛てた声明だ。
「……吉川、に、ばれ」
いや、そんなわけがない。吉川はきっと染衣のことなんて忘れているだろうし、吉川が染衣を見つけたなんてそんな都合のいいことは起こらないだろう。いくらこちらからモーションをかけてみたとは言え、あの男は恐ろしいほど鈍い。
そもそも自分はこんな、アカウントをフォローするなんて何を期待してそんなことをしたんだ?
吉川との関係を切ったのは自分なのに。
「いやいや、余計なことを考えるのはやめよう。もう一回最終チェックして、明日に備えよう」
フリーゲームフェスタは明日だ。
Wi-Fiを借りて、姫路家でノートパソコンを持ち込んで桃華と楓と参加する予定だ。当日は掲示板の書き込みをオフにするし、流石にアバターを介して文句を言う輩はいないだろう。
「クオリティ的には……」
『僕は問題ないと思いますよ』
十二月の頭、出会って二ヶ月を過ぎた日にゲーム『サイドノシュート』が出来上がった。イラストは百点。BGMとシステムも完璧。問題はシナリオだ。
夫妻には見せていないが、正直に言ってSNSで炎上した。まず、染衣が予告として上げたスチルとゲームプレイ画像四枚のツイートが火種だった。
「障害者を馬鹿にしている」
「不謹慎だ」
「その立場の人間に失礼」
「障害は簡単に扱っていいテーマじゃない」
お前らの言うこと聞いてたら何も書けねえよ。
同人のことは半ば馬鹿にしていたが、どんなに燃えてもリリース中止にするかは自分次第と言うのは強みだ。炎上のことは夫妻も叶も知らないし、決行する。
フリーゲームフェスタは今週末、つまり明日。炎上したおかげでフォロワー数は五百まで跳ね上がった。ツイート数十以下の出来立てホヤホヤアカウントにこれまで客が付くのは良い傾向だろう。最も、新規で付いたのは野次馬だろうが。
「……まあつまらないってことはないだろうし、そこそこの評価がついて終わりだろ」
叶にプレイしてほしい。吉川にプレイしてほしい。その想いで制作したゲームだ。別に外野に何を言われたところで。
「ん……え……?」
タイムラインを見ていると一件のツイートが目に入った。
「あ」がツイートしている。内容はこんなものだった。
「フリーゲームフェスタ一般で出ます」
「え……なんで……」
意図がわからない。何故誰も見ていないのにこんなツイートを? 一般参加なんて好きにすれば良い、わざわざ言う必要なんてない。可能性があるとすれば、たったひとりのフォロワー「ドリームスピカ」のアカウント運用者に宛てた声明だ。
「……吉川、に、ばれ」
いや、そんなわけがない。吉川はきっと染衣のことなんて忘れているだろうし、吉川が染衣を見つけたなんてそんな都合のいいことは起こらないだろう。いくらこちらからモーションをかけてみたとは言え、あの男は恐ろしいほど鈍い。
そもそも自分はこんな、アカウントをフォローするなんて何を期待してそんなことをしたんだ?
吉川との関係を切ったのは自分なのに。
「いやいや、余計なことを考えるのはやめよう。もう一回最終チェックして、明日に備えよう」
フリーゲームフェスタは明日だ。
Wi-Fiを借りて、姫路家でノートパソコンを持ち込んで桃華と楓と参加する予定だ。当日は掲示板の書き込みをオフにするし、流石にアバターを介して文句を言う輩はいないだろう。
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