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闇オークションって令和でもあるんだ
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目を覚ました時は真っ暗な狭い部屋にいた。人一人やっと立って入れるくらいの狭い……檻? 微かに聞こえる声に耳をすませて状況を把握する。いつしか借金を踏み倒そうとしてリンチされた時と同じように、こういう時ほど冷静でいなければいけない。
「さあ! 紳士淑女の皆さん! お待たせいたしました!」
マイクだろうか、ハウリングしかけた店長の声が響く。
「MoeMoe♡メイドオークション! ただいま開催です! まずは商品番号一番!」
その声と共に小さなきぬ擦れの音がする。それと微かな女のすすり泣き声。
「二十九歳! 新潟県生まれの元アイドル! 少々年齢はいってしまっていますが水を弾く肌はいまだに健在です! それにマイナス十歳には見えるこの容姿! 性処理道具にもビデオ撮影にもイチオシですっ! お値段八百万からどうぞ! ………八百五十、九百、千……一千万以上の方はいらっしゃいませんか? でしたらコレで取引完了です! 落札者様から一言よろしいでしょうか?」
ボイスチェンジャーを使っているのだろう、電子を通った声が聞こえてくる。
「はい。今度当社で発売させていただくスナッフフィルムに出演させる予定です。お見かけの際は皆さんぜひよろしくお願いします」
「いやああああああ‼」
女の悲鳴。それから車輪のようなものが動く音。
(……思ったよりヤバいな)
だが焦燥はなかった。どうしようもない絶望、それは時として人の思考回路を冷静にし、そして鈍らせる。正直なところ、もう自分にできることはない。その絶望は幸太郎の思考を落ち着かせるには充分だった。やがて周りを覆っていた黒い幕が外される。
「……なんだこれ」
幸太郎は身の丈に合わないメイド服を着させられていた。しかもミニスカ。タイツも無く生足ではかされたスカートからはスネ毛ががっつり見えており、どこの層向けなんだよと内心でつっこんでしまった。まだ全裸ならわかる。商品に傷が付いているか確認する為だ。
だが、メイド服を着させられるのはわからない。理解の範疇外だ。
周りは――……真っ暗で観客の顔は見えない。一番前の席の人間が黒子のような、占い師のような布で顔を隠しているから他の奴もそうなのだろう。
「商品番号二番! えー……二十四歳!千葉県生まれ関西在中でした! 親族からは勘当されている為、自由にお使いいただけます!特別価格四百万から!」
おいおいそれだけかよとつっこんでしまう。自分は借金抜いて百万以下の価値しかないのだろうか? いや店の取り分とか運営側の取り分含めるともっと下? 生死を決めるオークションの最中だと言うのに自分の価値について考え始めてしまった。そしてしんとする会場。仮面をつけた富豪らしい連中は誰一人として手を上げない。
(ああこれは人権死んだな……いやどちらにしろ死んでるけど……)
すると、一人の男が手を上げた。
「その値段ならオレが買う」
周りからはボイスチェンジャーで作られた歪な歓声と拍手が上がる。
「ありがとうございます! よろしければ一言よろしいでしょうか?」
「あまりに惨めなので買ってしまった。数百万をドブに捨てたが使い道はある。うまく使わせてもらう。以上」
おお! と会場から声が上がった。こうして、俺はこの男に生殺与奪を握られることになったのだった。
「さあ! 紳士淑女の皆さん! お待たせいたしました!」
マイクだろうか、ハウリングしかけた店長の声が響く。
「MoeMoe♡メイドオークション! ただいま開催です! まずは商品番号一番!」
その声と共に小さなきぬ擦れの音がする。それと微かな女のすすり泣き声。
「二十九歳! 新潟県生まれの元アイドル! 少々年齢はいってしまっていますが水を弾く肌はいまだに健在です! それにマイナス十歳には見えるこの容姿! 性処理道具にもビデオ撮影にもイチオシですっ! お値段八百万からどうぞ! ………八百五十、九百、千……一千万以上の方はいらっしゃいませんか? でしたらコレで取引完了です! 落札者様から一言よろしいでしょうか?」
ボイスチェンジャーを使っているのだろう、電子を通った声が聞こえてくる。
「はい。今度当社で発売させていただくスナッフフィルムに出演させる予定です。お見かけの際は皆さんぜひよろしくお願いします」
「いやああああああ‼」
女の悲鳴。それから車輪のようなものが動く音。
(……思ったよりヤバいな)
だが焦燥はなかった。どうしようもない絶望、それは時として人の思考回路を冷静にし、そして鈍らせる。正直なところ、もう自分にできることはない。その絶望は幸太郎の思考を落ち着かせるには充分だった。やがて周りを覆っていた黒い幕が外される。
「……なんだこれ」
幸太郎は身の丈に合わないメイド服を着させられていた。しかもミニスカ。タイツも無く生足ではかされたスカートからはスネ毛ががっつり見えており、どこの層向けなんだよと内心でつっこんでしまった。まだ全裸ならわかる。商品に傷が付いているか確認する為だ。
だが、メイド服を着させられるのはわからない。理解の範疇外だ。
周りは――……真っ暗で観客の顔は見えない。一番前の席の人間が黒子のような、占い師のような布で顔を隠しているから他の奴もそうなのだろう。
「商品番号二番! えー……二十四歳!千葉県生まれ関西在中でした! 親族からは勘当されている為、自由にお使いいただけます!特別価格四百万から!」
おいおいそれだけかよとつっこんでしまう。自分は借金抜いて百万以下の価値しかないのだろうか? いや店の取り分とか運営側の取り分含めるともっと下? 生死を決めるオークションの最中だと言うのに自分の価値について考え始めてしまった。そしてしんとする会場。仮面をつけた富豪らしい連中は誰一人として手を上げない。
(ああこれは人権死んだな……いやどちらにしろ死んでるけど……)
すると、一人の男が手を上げた。
「その値段ならオレが買う」
周りからはボイスチェンジャーで作られた歪な歓声と拍手が上がる。
「ありがとうございます! よろしければ一言よろしいでしょうか?」
「あまりに惨めなので買ってしまった。数百万をドブに捨てたが使い道はある。うまく使わせてもらう。以上」
おお! と会場から声が上がった。こうして、俺はこの男に生殺与奪を握られることになったのだった。
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