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期待
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「ご主人様、俺このままじゃいけないと思います」
その日のうちに、幸太郎は時嗣に話を持ちかけた。時嗣は幸太郎だけには扉をあけてくれる様になった。進歩だと思う。引きこもってしまってはいるが、本当は疑うことを知らない良い子なのだろう。そうじゃなければいきなり現れたワケあり人間に懐を許したりはしない。
「ここに来てまだ半年ですし、周りの人間が怖いのは理解できます。ですが、いつまでもこのままではいられないのはご主人様が一番わかっているのでは?」
「う……」
図星をつかれたのか時嗣は声にならない声を上げる。
「味方だって言ったのに……」
「味方だからこそです。俺は貴方のメイドですから、貴方にとって常に最善を選びます」
「うぅ……」
時嗣は諦めた様に項垂れると、嫌そうに声を震わせた。
「……七香には会いたくない」
「どうして七香さんにだけそんなに嫌悪感抱いてるんです?」
「嫌だって言うのにセクハラするからっ! それに……女の子ってグロいし……アレがついてるかと思うとちょっと……」
あの女は本当に何をしたんだ。いや、性教育の範囲なのは理解できる。だが、それで本人にトラウマを植え付けたら本末転倒だろう。とは言え、櫻木家の子供が童貞でテク無しじゃ格好もつかないだろうし、旦那様の教育方針もわかるっちゃわかる。やり方はおかしいけど七香に罪は……いや本人多分乗り気だし三割くらいはあるかもしれない。モンスターハウスかここは。本当に味方が一人もいない状態に唖然とする。逆によく半年間持ったものだ。
「じゃあ貴方のことはちゃんと俺が守りますから。今日は天気も良いですし、ちょっとだけでもお散歩してみませんか?」
ね、と手を取って顔をのぞいてみる。時嗣は少し悩んだ後、「幸太郎が側にいるなら……」と渋々了承してくれた。
時刻は午後四時。
旦那様が帰って来る直前で、使用人達が一番忙しく、自分の仕事にラストスパートをかけている時間だ。時嗣が苦手な七香もメイドとしてきちんと働いており、山田は調理に追われているし、使用人に絡まれることは一番無い時間帯だろう。人の目を盗みながら、館の庭に出てみる。庭は自分も初めて見る。時期が良かったのか庭には薔薇が咲き乱れそれは見事な景色が広がっていた。
「わぁ、綺麗ですね」
「庭ではティーパーティを開催されるから。それなりに力を入れているみたい。僕は行ったことないけど」
「嫌いなんですか? パーティとか」
「……無理強いはされたことない。多分、そんなに期待されてないんだと思う」
大人の気持ちは子供に伝わらないものだ。恐らく旦那様は時嗣に気を使っているのだろうが、本人はそれをマイナスに受け取ってしまっているらしい。ままならないものだな。日傘を差して時嗣と並んで薔薇を眺めた。
その日のうちに、幸太郎は時嗣に話を持ちかけた。時嗣は幸太郎だけには扉をあけてくれる様になった。進歩だと思う。引きこもってしまってはいるが、本当は疑うことを知らない良い子なのだろう。そうじゃなければいきなり現れたワケあり人間に懐を許したりはしない。
「ここに来てまだ半年ですし、周りの人間が怖いのは理解できます。ですが、いつまでもこのままではいられないのはご主人様が一番わかっているのでは?」
「う……」
図星をつかれたのか時嗣は声にならない声を上げる。
「味方だって言ったのに……」
「味方だからこそです。俺は貴方のメイドですから、貴方にとって常に最善を選びます」
「うぅ……」
時嗣は諦めた様に項垂れると、嫌そうに声を震わせた。
「……七香には会いたくない」
「どうして七香さんにだけそんなに嫌悪感抱いてるんです?」
「嫌だって言うのにセクハラするからっ! それに……女の子ってグロいし……アレがついてるかと思うとちょっと……」
あの女は本当に何をしたんだ。いや、性教育の範囲なのは理解できる。だが、それで本人にトラウマを植え付けたら本末転倒だろう。とは言え、櫻木家の子供が童貞でテク無しじゃ格好もつかないだろうし、旦那様の教育方針もわかるっちゃわかる。やり方はおかしいけど七香に罪は……いや本人多分乗り気だし三割くらいはあるかもしれない。モンスターハウスかここは。本当に味方が一人もいない状態に唖然とする。逆によく半年間持ったものだ。
「じゃあ貴方のことはちゃんと俺が守りますから。今日は天気も良いですし、ちょっとだけでもお散歩してみませんか?」
ね、と手を取って顔をのぞいてみる。時嗣は少し悩んだ後、「幸太郎が側にいるなら……」と渋々了承してくれた。
時刻は午後四時。
旦那様が帰って来る直前で、使用人達が一番忙しく、自分の仕事にラストスパートをかけている時間だ。時嗣が苦手な七香もメイドとしてきちんと働いており、山田は調理に追われているし、使用人に絡まれることは一番無い時間帯だろう。人の目を盗みながら、館の庭に出てみる。庭は自分も初めて見る。時期が良かったのか庭には薔薇が咲き乱れそれは見事な景色が広がっていた。
「わぁ、綺麗ですね」
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大人の気持ちは子供に伝わらないものだ。恐らく旦那様は時嗣に気を使っているのだろうが、本人はそれをマイナスに受け取ってしまっているらしい。ままならないものだな。日傘を差して時嗣と並んで薔薇を眺めた。
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