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第1章
最弱な男3
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ゼロのいるDクラスの教室は大いに盛り上がっていた。
それはやってきた講義の先生があまりにも素晴らしい人だったからだ。
その人物は…。
「では、諸君。静粛にな。」
そう告げたのは長い髭を生やした優しそうな老人だった。
このおじいさんがこの学園の長。ダグド・キャストルだ。
学園長でありながら王国の爵位も授与された偉人。
昔の戦争で他国と渡り合った天才でその名は今も恐れられるほどのものとなっている。
そんな学園長がDクラスの講義をしてくれるなど前代未聞であった。
ゼロは隣に座るリアに向けて口を開いた。
「俺たちってDクラスだよな?」
「…ん。…でもおかしい…。」
2人は学園長の話に耳を傾けた。
「わしが講義をするのは最初だけじゃぞ。今では名前を覚えるのも簡単ではないのじゃ。」
その言葉にDクラスの生徒たちは微笑む者も、少し残念そうにする者もいた。
そんな中、学園長は魔法でチョークを持ち上げ、黒板に素早く文字を書いていく。
「…まずは小手調べじゃ。この問題がわかる者はわしの横に来て書いてみてくれぬか?」
生徒たちは皆黒板に目を向けた。
そして一様に目を見開いた。
なぜならそこに書かれていたのは魔法の詠唱の言の葉だったからだ。
「誰もおらぬか?」
ゼロはその言の葉を心の中で呟いた。
(熱き炎と冷たき水が交わり、1つの事柄を成す。…こんな言の葉は存在しない…。)
そう、ゼロの考えるようにこの世界にそんな言の葉は存在しない。
つまり学園長は誰も生み出していない魔法の言の葉からどういう魔法が生まれるのかを生徒に質問しているのだ。
「…誰もわからぬか?簡単じゃぞ。火球と水球をぶつければ似たようなことが起こるじゃろ。」
この発言でゼロは学園長の意図に気がついた。
(…そうか。俺たちが試されてるのは魔法の知識と経験なんだ。)
ゼロは小さくため息を吐いた。
(…知識だけなら…多分…。)
ゼロはこれまでの知識からどうなるかを考える。
そんなゼロの考えている様子を学園長は見逃さなかった。
(…ふむ。1人しかおらぬか。)
学園長はゼロ座る机にそっと魔法でチョークを置いた。
ゼロはチョークに目を向けて、そして学園長を見た。
「…間違ってもよい。言の葉の続きをかけるかのぅ?」
「…推測ですが…。」
ゼロはチョークを手に持って前へ出た。
その様子に学園長は目を見開く。
なぜならこれまでにチョークを手に持つ生徒に出会ったことが無いからだ。
チョークを浮かせるのは生活魔法の基礎。誰しもが使えて当然。
それをゼロは使わずに手に持ったのだ。
(…そうじゃったか…。この者が…ゼロ・ワルドじゃったか。)
ゼロは学園長の横を通り、黒板に綺麗な字で言の葉を綴る。
「…これが俺の答えです。」
ゼロはチョークを置き、学園長に目を向けた。
学園長は黒板に目を向けてさらに驚いた。
熱き炎と冷たき水が交わり、1つの事柄を成す。されど2つでは叶わず、我が創る風を喰らい大いなる力と成す。小さき力も集えば絶大なりけり。我ここに大事を成さん。
それは学園長が求める答えのさらに先を行くものだった。
(…この者…魔法が使えぬはずじゃ…。しかしわしの思う言の葉よりも二節多い。)
学園長はすぐにこの言の葉を試したくなった。
「…皆、広場に出てみよ。わしが唱えるでな。」
学園長はゼロに声をかける。
「…答え合わせじゃな。」
「…はい。見学させてもらいます。」
「わしも楽しみじゃぞ。それとお主はゼロ君か?」
「えっ?そうだが…。」
学園長は胸が踊るように愉快な気分になった。
(魔法が使えぬ者がここまで…。面白いのぅ。)
学園長はゼロに微笑む。
「…お主は天才かもしれぬぞ。」
学園長は疑問符を浮かべるゼロの背中を叩き、急がせるのだった。
学園長はDクラスの生徒を集めて広場に立った。
「では近寄らぬように。」
学園長はゼロの答えた通りに詠唱を始めた。
するとみんなから離れた場所に小さな火球と水球が現れた。
そして学園長はさらに風球を出し、その3つを同時にぶつけた。
するとブシューという音がしてあっという間に白い水蒸気が発生し、生徒達を包み込んだ。
(…なんかイメージと違うな。)
ゼロは霧散していく水蒸気を見て思う。
(…これだけの勢いがあるんだ…。やり方を変えるだけで…。)
その時、ゼロはふと嫌なことを思い出した。
(…父さん。)
ゼロは驚いて腰を抜かすDクラスの生徒たちを見た。
(…作ったらダメかもしれない。吹き飛ばされて気絶くらいで済めばいいが…もしかすると…。)
ゼロは学園長を見つめた。
すると学園長も同じことを考えたのかゼロに近寄り、小さく口を開いた。
「…すまんかった。この魔法は失敗じゃ。」
「…いえ。失敗してよかったので。」
「…お主は優しいのぅ。」
学園長は生徒達に声をかけた。
「これが答えじゃな。雑務から逃げる時に役立つかもしれんのぅ。」
その言葉にゼロ以外の生徒は小さく笑った。
ゼロは1人、考え直していた。
(…知識が必要だ。魔法を使えるようになるためだけじゃなく、魔法を使わないための…。)
ゼロは自分の手を見つめた。
「…それには経験も必要なのに…。」
ゼロは手を強く握った。
「…あれはなんでしょう?」
学園の広場に舞い上がる白い水蒸気をみてとある女子生徒が呟いた。
「…白い雲見たいですね。…そういえば今朝の方も…。」
女子生徒は朝に見た馬車を飛び越える白髪の男子を思い出した。
「…この学園の生徒ですよね…?…逢えるでしょうか…。」
そんな女子生徒に講義をしている先生が声をかけた。
「そこの生徒さん。入学初日くらい先生のお話を聞いてくださいね。」
その言葉に女子生徒は軽く頭を下げた。
「失礼致しました。」
「よろしい。皆さんは我が学園を背負って立つ逸材ですからしっかりとしてくださいね。」
その言葉に教室にいた生徒の全員が頷いた。
「では、本日はここまでにしましょう。では、しっかりと復習をするように。」
先生はそう言って教室を後にした。
そんな先生が出たドアの上には確かにこう書かれていた。
…Sクラス…と。
つまり今年の入学生で基準の超える魔力値を叩き出した生徒達が集められたクラスだ。
最も有望とされ、最も注目され、最も優遇されるクラスだ。
しかしそんなSクラスに1つの噂が舞い込む。
それは…Dクラスが優遇されているという噂だった。
それはやってきた講義の先生があまりにも素晴らしい人だったからだ。
その人物は…。
「では、諸君。静粛にな。」
そう告げたのは長い髭を生やした優しそうな老人だった。
このおじいさんがこの学園の長。ダグド・キャストルだ。
学園長でありながら王国の爵位も授与された偉人。
昔の戦争で他国と渡り合った天才でその名は今も恐れられるほどのものとなっている。
そんな学園長がDクラスの講義をしてくれるなど前代未聞であった。
ゼロは隣に座るリアに向けて口を開いた。
「俺たちってDクラスだよな?」
「…ん。…でもおかしい…。」
2人は学園長の話に耳を傾けた。
「わしが講義をするのは最初だけじゃぞ。今では名前を覚えるのも簡単ではないのじゃ。」
その言葉にDクラスの生徒たちは微笑む者も、少し残念そうにする者もいた。
そんな中、学園長は魔法でチョークを持ち上げ、黒板に素早く文字を書いていく。
「…まずは小手調べじゃ。この問題がわかる者はわしの横に来て書いてみてくれぬか?」
生徒たちは皆黒板に目を向けた。
そして一様に目を見開いた。
なぜならそこに書かれていたのは魔法の詠唱の言の葉だったからだ。
「誰もおらぬか?」
ゼロはその言の葉を心の中で呟いた。
(熱き炎と冷たき水が交わり、1つの事柄を成す。…こんな言の葉は存在しない…。)
そう、ゼロの考えるようにこの世界にそんな言の葉は存在しない。
つまり学園長は誰も生み出していない魔法の言の葉からどういう魔法が生まれるのかを生徒に質問しているのだ。
「…誰もわからぬか?簡単じゃぞ。火球と水球をぶつければ似たようなことが起こるじゃろ。」
この発言でゼロは学園長の意図に気がついた。
(…そうか。俺たちが試されてるのは魔法の知識と経験なんだ。)
ゼロは小さくため息を吐いた。
(…知識だけなら…多分…。)
ゼロはこれまでの知識からどうなるかを考える。
そんなゼロの考えている様子を学園長は見逃さなかった。
(…ふむ。1人しかおらぬか。)
学園長はゼロ座る机にそっと魔法でチョークを置いた。
ゼロはチョークに目を向けて、そして学園長を見た。
「…間違ってもよい。言の葉の続きをかけるかのぅ?」
「…推測ですが…。」
ゼロはチョークを手に持って前へ出た。
その様子に学園長は目を見開く。
なぜならこれまでにチョークを手に持つ生徒に出会ったことが無いからだ。
チョークを浮かせるのは生活魔法の基礎。誰しもが使えて当然。
それをゼロは使わずに手に持ったのだ。
(…そうじゃったか…。この者が…ゼロ・ワルドじゃったか。)
ゼロは学園長の横を通り、黒板に綺麗な字で言の葉を綴る。
「…これが俺の答えです。」
ゼロはチョークを置き、学園長に目を向けた。
学園長は黒板に目を向けてさらに驚いた。
熱き炎と冷たき水が交わり、1つの事柄を成す。されど2つでは叶わず、我が創る風を喰らい大いなる力と成す。小さき力も集えば絶大なりけり。我ここに大事を成さん。
それは学園長が求める答えのさらに先を行くものだった。
(…この者…魔法が使えぬはずじゃ…。しかしわしの思う言の葉よりも二節多い。)
学園長はすぐにこの言の葉を試したくなった。
「…皆、広場に出てみよ。わしが唱えるでな。」
学園長はゼロに声をかける。
「…答え合わせじゃな。」
「…はい。見学させてもらいます。」
「わしも楽しみじゃぞ。それとお主はゼロ君か?」
「えっ?そうだが…。」
学園長は胸が踊るように愉快な気分になった。
(魔法が使えぬ者がここまで…。面白いのぅ。)
学園長はゼロに微笑む。
「…お主は天才かもしれぬぞ。」
学園長は疑問符を浮かべるゼロの背中を叩き、急がせるのだった。
学園長はDクラスの生徒を集めて広場に立った。
「では近寄らぬように。」
学園長はゼロの答えた通りに詠唱を始めた。
するとみんなから離れた場所に小さな火球と水球が現れた。
そして学園長はさらに風球を出し、その3つを同時にぶつけた。
するとブシューという音がしてあっという間に白い水蒸気が発生し、生徒達を包み込んだ。
(…なんかイメージと違うな。)
ゼロは霧散していく水蒸気を見て思う。
(…これだけの勢いがあるんだ…。やり方を変えるだけで…。)
その時、ゼロはふと嫌なことを思い出した。
(…父さん。)
ゼロは驚いて腰を抜かすDクラスの生徒たちを見た。
(…作ったらダメかもしれない。吹き飛ばされて気絶くらいで済めばいいが…もしかすると…。)
ゼロは学園長を見つめた。
すると学園長も同じことを考えたのかゼロに近寄り、小さく口を開いた。
「…すまんかった。この魔法は失敗じゃ。」
「…いえ。失敗してよかったので。」
「…お主は優しいのぅ。」
学園長は生徒達に声をかけた。
「これが答えじゃな。雑務から逃げる時に役立つかもしれんのぅ。」
その言葉にゼロ以外の生徒は小さく笑った。
ゼロは1人、考え直していた。
(…知識が必要だ。魔法を使えるようになるためだけじゃなく、魔法を使わないための…。)
ゼロは自分の手を見つめた。
「…それには経験も必要なのに…。」
ゼロは手を強く握った。
「…あれはなんでしょう?」
学園の広場に舞い上がる白い水蒸気をみてとある女子生徒が呟いた。
「…白い雲見たいですね。…そういえば今朝の方も…。」
女子生徒は朝に見た馬車を飛び越える白髪の男子を思い出した。
「…この学園の生徒ですよね…?…逢えるでしょうか…。」
そんな女子生徒に講義をしている先生が声をかけた。
「そこの生徒さん。入学初日くらい先生のお話を聞いてくださいね。」
その言葉に女子生徒は軽く頭を下げた。
「失礼致しました。」
「よろしい。皆さんは我が学園を背負って立つ逸材ですからしっかりとしてくださいね。」
その言葉に教室にいた生徒の全員が頷いた。
「では、本日はここまでにしましょう。では、しっかりと復習をするように。」
先生はそう言って教室を後にした。
そんな先生が出たドアの上には確かにこう書かれていた。
…Sクラス…と。
つまり今年の入学生で基準の超える魔力値を叩き出した生徒達が集められたクラスだ。
最も有望とされ、最も注目され、最も優遇されるクラスだ。
しかしそんなSクラスに1つの噂が舞い込む。
それは…Dクラスが優遇されているという噂だった。
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