最強魔術師は魔法が使えない

ジェル

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第1章

最弱な男2

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キャストル学園は来るものを拒まず、出るものを追わずの精神を貫いている。

一見誰もが入学しようとしそうだが、お金がかかることもあり、みんながみんな入学できるわけではない。

だから毎年入学するおおよその人数は同じくらいになる。

ゼロはそんな入学生の一人として今門をくぐった。

「…緊張してきたな。」

学園を見ればその大きさに心が踊った。まるでお城なのではないかと思うほど立派な造りで、さらに沢山の人がそこにはいた。

ゼロはゆっくりと歩みを進め、学園の中を進んでいく。

そんなゼロに1人、声をかける者がいた。

「ねぇ君。新入生?」

ゼロがその声に振り返るとそこには白い女性用の制服に身を包んだ生徒がいた。

髪はルビーのように赤く、短めに切りそろえられており、少しつり目気味の大きな目に、薄い唇。

ゼロから見てもその女性が美人でさらにお金持ちだとわかった。

「そうだけど…。」

「新入生は西門からよ?こっちは東門。」

ゼロはその言葉に驚いた。

「ほ、本当なのか?というか…先輩ですか?」

「そうなるね。別に話し方を変えなくてもいいよ。普通にして。」

その女性は小さく笑みをこぼした。

「手続きがあるはずだから、西門に行かないとだめよ。」

「わ、わかった。教えてくれてありがとう。」

「どういたしまして、後輩くん。クラス分け、頑張ってね。」

ゼロは大きく頷いて軽く手を振ると学園の反対方向に歩いた。

(優しい人だな。…俺が魔法を使えないって知っても…優しい人でいてくれるはずはないけど。)

ゼロは小さく苦笑いを浮かべた。


…知性がないんだぜ!魔物だ、魔物!


…お前なんか役に立たないぜ。魔法が使えないんだからよ。


…どうして生まれたんだろうな。神様の手違いじゃね?


ゼロはそっと目を閉じた。

「…それでも…やれるだけのことは…。」


ゼロは西門の受付の前で足を止めた。

「お名前を教えてください。」

「ゼロ・ワルドです。」

受付の人は名簿を確認してゼロの名前の横に印をつけた。

「はい、では中にお入りください。」

ゼロは来た道をそのまま戻る形で学園内へと入った。

ゼロは人の波の後に続き、クラス分けのための試験会場に入った。

そこではみんなが明確な列を成してとある機械の前に並んでいた。

その機械はこの学園が採用する魔法測定器。

人の体内の魔力を検知し、それを数値化してくれる。

結果はそばにいる教師と自分しか見ることができない。

クラスはその数値で分けられる。

汎用魔法でいうなら同じ魔法でも数値が高い人物はより回数が多く使えるというわけである。

ゼロはこの測定に少し期待をしていた。

この数値が少しでもあるのなら魔法が使えても不思議ではないからだ。

たとえ何も使えないような数値だとしてもゼロにとってはそれだけでも嬉しいことだった。

しばらくしてゼロの番が来て、ゼロは少し気合いを入れて機械に手を触れた。




「が、学園長!!」

1人の教師がとある部屋のドアを開いた。

そこには窓の際に立ち、門をくぐる生徒を見つめる学園長がいた。

「なんじゃ?またとんでもない数値を出す生徒がおったのか?」

「は、はいっ。」

「いちいち報告せんでよい。魔力値が高くてもわしは特別扱いはせんのでな。」

その言葉に教師は首を振った。

「こ、これを見てください。」

学園長はその教師が測定した生徒の魔力値情報に目を通した。

そして目を大きく見開く。

「…わし以外の誰かに話したか?」

「い、いえ、学園長にだけです。」

「…誰にも言うでない。この生徒はわしが面倒を見るでな。」

学園長はもう一度その生徒の結果に目を通した。

「…興味深いのぅ。…魔力値0…とは。」

学園長は少し微笑んでその名を頭に刻み込むのだった。




ゼロはまるで屍のように自分の教室の机に頭をつけて塞ぎ込んでいた。

教室はDクラス。この学園において底辺のクラスだ。

授業は講義のようなものなので席は特に決まっておらず、好きに座っていい。

ゼロが座ったのは1番前の入り口に近い席。もはや席を考えるほど心の余裕はなく、教室に入ってすぐに席に座って塞ぎ込んでいた。

(…覚悟はしていたが…本当に…0なんて…。)

ゼロはDクラスの生徒たちの中でも明らかに沈んでいた。

それでも静かに落ち込んでいた。


しかし周りの生徒たちは騒がしかった。

「どうしてこの僕がDクラスなんだ!!」

「俺がDクラスとかありえねえだろ!」

そんな生徒達が騒ぐ中、静かに落ち込むゼロの隣に誰かが座った。

そしてなぜかゼロの突っ伏した頭を優しく撫でた。

「…大丈夫?」

ゼロは顔を上げてふと横を見た。

すると少し小柄な女子が座っていた。

髪は短めの薄い桃色で目は少し細く、顔も小さくていかにも可愛らしい女の子だった。

「…大丈夫だ。」

「…本当?」

「…大丈夫に見えないか?」

女の子は小さく頷いた。

「…悲しい色をしてた。」

「色?俺の色か?」

女の子はまた小さく頷く。

「…私の魔法。…今は青色。」

ゼロはその言葉で理解した。

(そうか。この子の固有魔法は感情を色で捉えるんだ。)

ゼロは小さく笑みを浮かべた。

「心配させて悪かった。それと固有魔法のことは人に話さない方がいいぞ。」

「ん。知ってる。」

固有魔法とはいわばその人の切り札となる。だからいざと言う時以外は使わない。

「…青は1人だった。」

「そうなのか?あっちの人とかは?」

「…赤。…怒る時の色。」

「…そうか。」

「純粋な青色…。あなただけ。」

ゼロは小さく微笑んだ。

「怒りたくても怒りをぶつける先がない。だから悲しむしかない。」

「ん。…だから声かけた。怒る人…怖い。」

その言葉にゼロは大きく笑った。

「それはそうだな。俺でもそう思う。」

ゼロはいつしか落ち込むことも忘れていた。

「…俺はゼロ・ワルド。ゼロでいい。呼び捨てにされても怒らないから。」

「ん。…ゼロ。覚えた。」

女の子は小さく口元を緩めた。

「…リア。リア・フレイン。」

「リアでいいのか?」

その言葉にリアは小さく頷いた。

「…隣…座っていい?」

「今更だな。いいけど俺と関わっても良いことなんかないぞ。」

「…ある。男避け。」

「ああ。リアって美人さんだもんな。」

「知ってる。」

ゼロは小さく笑った。

「…私を見る人…ピンク色。…エッチな色。」

「そ、それはご愁傷様だな。」

「…ゼロは黒い人に見られてる。…嫉妬。」

「俺の方がご愁傷様だな!」

リアはまた小さく口元を緩めた。

「…もう悲しくない?」

「青色じゃないだろう?」

「ん。変わった。」

リアはゼロの胸を見つめた。

「…今は何色だ?」

「…好きな色。」

リアはゼロの胸に手を置いた。

そんなリアにゼロはまた違う色を示した。

「…少しピンク色。…エッチ。」

「さ、触るな!」

ゼロは顔まで色に染まるのだった。
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