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第1章
最弱な男4
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ゼロはリアと食事に来ていた。
ゼロは節約のためにコストパフォーマンスの良い野菜炒めがメインのランチを頼んでいた。
「…食べる?」
そんなゼロを見兼ねてなのか、リアは自分の注文したステーキをフォークで指した。
「気持ちだけ受け取っておく。リアは肉が好きなんだろ?」
「…どうしてわかるの?」
ゼロは小さく微笑む。
「色なんか見えなくてもわかりやすいぞ。」
「…馬鹿にしてる?」
その発言にゼロは大きく笑った。
「してないさ。」
ゼロは野菜を少しリアの皿に乗せた。
「…なに?」
「野菜が少ないからな。」
「…野菜嫌い。」
「だと思った。でも食べないと大きくならないぞ。近所のおばさんがよく言っていたからな。」
リアは自分の胸を押さえた。
「…エッチ。」
「ち、違うからな!身長とかの話だ!」
「…余計なお世話。」
そう言いつつもリアはのせられた野菜炒めをフォークで器用に食べた。
「…美味しいか?」
「…嫌い。…大きくなる?」
「なれるさ。好き嫌いしなければな。」
するとまたリアは胸を押さえた。
「…やっぱりエッチ。」
「そっちの話だったのかよ!」
リアはゼロの反応に可愛らしく口元に手を当ててクスッと笑った。
「…嫌いなものある?」
「食べ物だよな?…そうだなぁ。無いかもな。」
ゼロは野菜を美味しそうに食べてみせた。
「でもご飯は1人より誰かと食べた方が美味しいとは思う。だから今は美味しいな。」
「…いま?」
「そう。俺は一人暮らしだから。」
リアは食べる手を止めた。
「…寂しくない?」
「もうずっと一人暮らしだから慣れたんだ。それに近所には家族のような人たちがいるから。」
ゼロは小さく笑った。
そんなゼロをリアは魔法を使って観察した。
(…青くない…。)
リアはゼロが自分の感情に嘘をついていないと気がついた。
そして今は嬉しいと感じていることも。
「…嬉しい?」
「なにがだ?」
「…今の気持ち。」
ゼロの大きく頷いた。
「リアみたいな美人と食事できれば嬉しいさ。」
「…ん。…ありがたく思う。」
「わかったよ。ありがとな。」
ゼロはまた箸を動かした。
そんな食事をする2人の元に1人の人物がやってきた。
「…隣…よいかのぅ?」
それは他でもない学園長だった。
食堂に学園長が来るという事態に他の生徒たちは驚いている。
「…学園長先生。」
「…先生も食堂でご飯ですか?」
「わしも腹は減るからのぅ。」
学園長は許可もなく2人の横に座った。
「こちらのお嬢さんはゼロくんの恋人じゃな?」
「違います!クラスメイトのリアです。」
「ん。…リア・フレイン。」
「そうじゃったか。美人さんじゃのぅ。」
「ん。…知ってる。」
学園長は大きく笑った。
「2人に聞いてもよいかのぅ?」
「なんですか?」
「夢はなんじゃ?」
その質問にリアが先に口を開いた。
「…お嫁さん。」
「可愛らしいのぅ。しかしそれならばどうして学園に来たのじゃ?」
「…お婿さん選び。」
「なるほどのぅ。将来は貴族になるものもおるからのぅ。今のうちからというわけじゃな。」
その会話にゼロは少し暗い表情をした。
(…なら俺と居ても仕方ないな。俺は…貴族になんかなれない。)
そんなゼロに学園長が声をかけた。
「それでゼロくんは?」
ゼロは小さく首を振った。
「俺は…夢なんて大それたものはないです。」
「では、何をしに来たのじゃ?」
ゼロはゆっくりと口を開いた。
「…大切な人を支えられる魔法が使える魔術師になるために…俺はここに来ました。」
その言葉に学園長は大きく頷いた。
「…お主はやはり優しいのぅ。」
学園長はリアに告げる。
「ゼロくんはいい男になる。今のうちじゃぞ。」
「ん。…知ってる。」
ゼロはそう言われるも表情は暗い。
魔法主義である以上はゼロに明るい未来は訪れないかもしれないから。
そうしてゼロはゆっくりと食事をするのだった。
「Dクラスが優遇されているというのは本当らしいな。あそこの2人はDクラスらしい。」
「どうして僕らじゃないんだ!この学園を代表するのは僕らなのに。」
Sクラスの連中は学園長と食事をする2人を見て気分を害していた。
「…ふむ。確かにこれでは納得できないね。」
そう告げたのはSクラスの人たちの中心にいる人物だった。
「そうですよね、カインズ様!」
「カインズ様が言うならやっぱりおかしいんだ!」
その人物はカインズ・バルア・ユーミリア。
今年入学した生徒の中で断トツの魔力値を叩き出し、尚且つこの国の王子である人物だった。
「…僕が代表で話してくるとしよう。」
カインズは席を立ち、ゼロ達の先まで近づいて行った。
「わしを待たなくても良いのじゃぞ?」
「いえ、1人でご飯というのは美味しくないですから。」
「ん。ゼロがさっき言ってた…。」
学園長は小さく微笑んだ。
現在ゼロとリアは食事を終えてまだ食べている学園長が食べ終わるのを待っている状況だ。
「ではわしも急いで食べるかのぅ。」
学園長はそう言って橋を進めた。
するとそこに金髪の髪を綺麗にまとめた男子生徒がやってきた。
ゼロとリアはその人物を見て軽く頭を下げた。
「お食事中失礼するよ。」
そこにやってきたのはカインズだった。
カインズはゼロとリアにそう言って学園長に目を向けた。
「どうしたのじゃ?」
「学園長先生、どうしてこのお二人とお食事を?」
「ゼロくんとリアちゃんかのぅ?」
その言葉にカインズは少し驚く。
(学園長先生に名前を覚えてもらっているようだね…。)
この学園で学園長に名前を覚えてもらえるということはそれだけ気に入られていることを意味していた。それは王族としても例外ではない。
「すまぬがお主の名を聞いてよいかのぅ?王子というのは知っておるのじゃが…。」
そう。学園長は王族ですら覚えていない。だからこそ、学園長に名を覚えてもらうことは名誉なことであった。
「…カインズです。」
「そうじゃったな。カインズくんじゃ。」
学園長は心のモヤモヤが晴れて少しホッとしたような顔をしていた。
「わしがこの2人と食事をするのは話を聞きたかったからじゃ。」
「どのようなお話を?」
学園長はゼロの方を見た。
「夢じゃよ。この学園に来た理由を聞いておった。」
カインズは学園長に告げる。
「では明日からは僕たちSクラスの生徒と食事をしませんか?」
「なぜじゃ?」
「Sクラスの僕たちの夢の方が現実的で壮大です。聞く価値はあるかと…。」
その言葉に学園長は首を振った。
「聞かんでもよいのぅ。」
その言葉にカインズは少し不機嫌になった。
「どうしてですかっ!僕らはこの国を背負って立つSクラスですが…。」
「Sクラスの者は皆そうじゃ。皆王国のために働くと申すのじゃ。」
学園長は箸を止め、寂しそうな顔をする。
「わしから言わせれば…この国のために魔法を覚え、戦争で死んでゆく者の名を覚えるほど…悲しいことはない。」
この発言で述べたことが学園長が名前を覚えない最大の理由でもあった。
「…お主の夢は何じゃ?この学園でなにを成す?」
その言葉にカインズは口を閉ざす。
(…そんなもの…1つしか…。)
カインズはゆっくりと口を開く。
「…偉大な国王に…。」
「…お主が思う偉大とは何じゃ?」
「……。」
「…やはりわしは…この2人の夢の方が好きじゃな。」
カインズは頭を下げたままの2人に目を移した。
「…僕より…優れていると…?」
「…そうじゃな。信念の強さで言えば…お主に勝ち目はない。偉大が何かを言い切れぬ時点で…お主は生き方を見失っておる。」
カインズは拳を強く握った。
「…わしは2人を待たせておるのじゃ。すまんがここまでにしてくれぬか?」
…ケインズくん。
カインズはゼロを睨みつけた。
「…ゼロくん…だったかい?」
その言葉にゼロは顔を上げた。
「…僕と勝負をしないか?」
「…し、勝負?」
その言葉に学園長は目を見開く。
「学園長先生に気に入られた君の力を見てみたい。」
ゼロは口を閉ざした。
「待つのじゃ!ゼロくんとの決闘は…。」
「これは僕と彼の問題です!先生でも僕たちの決闘を決める権利はありません!」
学園長は口を閉ざしてゼロを見た。
(…やめるべきじゃぞ。お主は…。)
学園長が見つめるゼロはゆっくりと口を開いた。
「…俺は弱いです。」
「…知っているつもりだ。Dクラスなのだから。」
「…俺が気に入られてるかはわかりません。学園長先生は面白がっているだけかもしれませんから。」
ゼロは学園長を見て小さく微笑む。
「…でも…。…学園長先生が俺を評価してくれた部分で負けるわけにはいきません。」
その言葉に学園長は目を見開く。
(まさか…ゼロくん…。)
ゼロはゆっくりと口を開いた。
「…受けて立ちます!俺は心で…敗者になるつもりはありません。」
その言葉にリアと学園長はゼロを見つめた。
「…楽しみにしているよ。」
カインズはそう言って立ち去った。
その瞬間、周りの席で関係ない生徒達が騒ぎ始めた。
学園長はゼロに告げる。
「…すまなかったのぅ。」
ゼロは頭を下げる学園長に声をかけた。
「先生が謝ることはないです。むしろ俺は嬉しかったので。魔法で大事なのは精神…心です。その心で評価してもらえるなんて…。」
…最高の褒め言葉です。
学園長はこれまでの人生で一番の衝撃を受けた。
(…ゼロくんは…忘れてはならん。わしが死ぬまで…見守らねば…。)
ゼロはリアに話しかけられる。
「…無謀。」
「そうだよな。俺もそう思う。負けるのは目に見えてるから。」
「ん。…頭悪い。」
「そ、そこまでいうか!?」
リアは小さく口元を緩めた。
「…格好良かった。」
「…えっ?」
リアは少し頬を染めていた。
「…応援する。」
「ま、負けるぞ?」
「ん。…ボコボコ。」
ゼロはため息をついた。
「…じゃあ、魔法の特訓でもしてみるかな。」
ゼロはそう告げて苦笑いを浮かべるのだった。
そしてこの日の翌日。
学年最強と学年最弱の決闘が始まるのだった。
ゼロは節約のためにコストパフォーマンスの良い野菜炒めがメインのランチを頼んでいた。
「…食べる?」
そんなゼロを見兼ねてなのか、リアは自分の注文したステーキをフォークで指した。
「気持ちだけ受け取っておく。リアは肉が好きなんだろ?」
「…どうしてわかるの?」
ゼロは小さく微笑む。
「色なんか見えなくてもわかりやすいぞ。」
「…馬鹿にしてる?」
その発言にゼロは大きく笑った。
「してないさ。」
ゼロは野菜を少しリアの皿に乗せた。
「…なに?」
「野菜が少ないからな。」
「…野菜嫌い。」
「だと思った。でも食べないと大きくならないぞ。近所のおばさんがよく言っていたからな。」
リアは自分の胸を押さえた。
「…エッチ。」
「ち、違うからな!身長とかの話だ!」
「…余計なお世話。」
そう言いつつもリアはのせられた野菜炒めをフォークで器用に食べた。
「…美味しいか?」
「…嫌い。…大きくなる?」
「なれるさ。好き嫌いしなければな。」
するとまたリアは胸を押さえた。
「…やっぱりエッチ。」
「そっちの話だったのかよ!」
リアはゼロの反応に可愛らしく口元に手を当ててクスッと笑った。
「…嫌いなものある?」
「食べ物だよな?…そうだなぁ。無いかもな。」
ゼロは野菜を美味しそうに食べてみせた。
「でもご飯は1人より誰かと食べた方が美味しいとは思う。だから今は美味しいな。」
「…いま?」
「そう。俺は一人暮らしだから。」
リアは食べる手を止めた。
「…寂しくない?」
「もうずっと一人暮らしだから慣れたんだ。それに近所には家族のような人たちがいるから。」
ゼロは小さく笑った。
そんなゼロをリアは魔法を使って観察した。
(…青くない…。)
リアはゼロが自分の感情に嘘をついていないと気がついた。
そして今は嬉しいと感じていることも。
「…嬉しい?」
「なにがだ?」
「…今の気持ち。」
ゼロの大きく頷いた。
「リアみたいな美人と食事できれば嬉しいさ。」
「…ん。…ありがたく思う。」
「わかったよ。ありがとな。」
ゼロはまた箸を動かした。
そんな食事をする2人の元に1人の人物がやってきた。
「…隣…よいかのぅ?」
それは他でもない学園長だった。
食堂に学園長が来るという事態に他の生徒たちは驚いている。
「…学園長先生。」
「…先生も食堂でご飯ですか?」
「わしも腹は減るからのぅ。」
学園長は許可もなく2人の横に座った。
「こちらのお嬢さんはゼロくんの恋人じゃな?」
「違います!クラスメイトのリアです。」
「ん。…リア・フレイン。」
「そうじゃったか。美人さんじゃのぅ。」
「ん。…知ってる。」
学園長は大きく笑った。
「2人に聞いてもよいかのぅ?」
「なんですか?」
「夢はなんじゃ?」
その質問にリアが先に口を開いた。
「…お嫁さん。」
「可愛らしいのぅ。しかしそれならばどうして学園に来たのじゃ?」
「…お婿さん選び。」
「なるほどのぅ。将来は貴族になるものもおるからのぅ。今のうちからというわけじゃな。」
その会話にゼロは少し暗い表情をした。
(…なら俺と居ても仕方ないな。俺は…貴族になんかなれない。)
そんなゼロに学園長が声をかけた。
「それでゼロくんは?」
ゼロは小さく首を振った。
「俺は…夢なんて大それたものはないです。」
「では、何をしに来たのじゃ?」
ゼロはゆっくりと口を開いた。
「…大切な人を支えられる魔法が使える魔術師になるために…俺はここに来ました。」
その言葉に学園長は大きく頷いた。
「…お主はやはり優しいのぅ。」
学園長はリアに告げる。
「ゼロくんはいい男になる。今のうちじゃぞ。」
「ん。…知ってる。」
ゼロはそう言われるも表情は暗い。
魔法主義である以上はゼロに明るい未来は訪れないかもしれないから。
そうしてゼロはゆっくりと食事をするのだった。
「Dクラスが優遇されているというのは本当らしいな。あそこの2人はDクラスらしい。」
「どうして僕らじゃないんだ!この学園を代表するのは僕らなのに。」
Sクラスの連中は学園長と食事をする2人を見て気分を害していた。
「…ふむ。確かにこれでは納得できないね。」
そう告げたのはSクラスの人たちの中心にいる人物だった。
「そうですよね、カインズ様!」
「カインズ様が言うならやっぱりおかしいんだ!」
その人物はカインズ・バルア・ユーミリア。
今年入学した生徒の中で断トツの魔力値を叩き出し、尚且つこの国の王子である人物だった。
「…僕が代表で話してくるとしよう。」
カインズは席を立ち、ゼロ達の先まで近づいて行った。
「わしを待たなくても良いのじゃぞ?」
「いえ、1人でご飯というのは美味しくないですから。」
「ん。ゼロがさっき言ってた…。」
学園長は小さく微笑んだ。
現在ゼロとリアは食事を終えてまだ食べている学園長が食べ終わるのを待っている状況だ。
「ではわしも急いで食べるかのぅ。」
学園長はそう言って橋を進めた。
するとそこに金髪の髪を綺麗にまとめた男子生徒がやってきた。
ゼロとリアはその人物を見て軽く頭を下げた。
「お食事中失礼するよ。」
そこにやってきたのはカインズだった。
カインズはゼロとリアにそう言って学園長に目を向けた。
「どうしたのじゃ?」
「学園長先生、どうしてこのお二人とお食事を?」
「ゼロくんとリアちゃんかのぅ?」
その言葉にカインズは少し驚く。
(学園長先生に名前を覚えてもらっているようだね…。)
この学園で学園長に名前を覚えてもらえるということはそれだけ気に入られていることを意味していた。それは王族としても例外ではない。
「すまぬがお主の名を聞いてよいかのぅ?王子というのは知っておるのじゃが…。」
そう。学園長は王族ですら覚えていない。だからこそ、学園長に名を覚えてもらうことは名誉なことであった。
「…カインズです。」
「そうじゃったな。カインズくんじゃ。」
学園長は心のモヤモヤが晴れて少しホッとしたような顔をしていた。
「わしがこの2人と食事をするのは話を聞きたかったからじゃ。」
「どのようなお話を?」
学園長はゼロの方を見た。
「夢じゃよ。この学園に来た理由を聞いておった。」
カインズは学園長に告げる。
「では明日からは僕たちSクラスの生徒と食事をしませんか?」
「なぜじゃ?」
「Sクラスの僕たちの夢の方が現実的で壮大です。聞く価値はあるかと…。」
その言葉に学園長は首を振った。
「聞かんでもよいのぅ。」
その言葉にカインズは少し不機嫌になった。
「どうしてですかっ!僕らはこの国を背負って立つSクラスですが…。」
「Sクラスの者は皆そうじゃ。皆王国のために働くと申すのじゃ。」
学園長は箸を止め、寂しそうな顔をする。
「わしから言わせれば…この国のために魔法を覚え、戦争で死んでゆく者の名を覚えるほど…悲しいことはない。」
この発言で述べたことが学園長が名前を覚えない最大の理由でもあった。
「…お主の夢は何じゃ?この学園でなにを成す?」
その言葉にカインズは口を閉ざす。
(…そんなもの…1つしか…。)
カインズはゆっくりと口を開く。
「…偉大な国王に…。」
「…お主が思う偉大とは何じゃ?」
「……。」
「…やはりわしは…この2人の夢の方が好きじゃな。」
カインズは頭を下げたままの2人に目を移した。
「…僕より…優れていると…?」
「…そうじゃな。信念の強さで言えば…お主に勝ち目はない。偉大が何かを言い切れぬ時点で…お主は生き方を見失っておる。」
カインズは拳を強く握った。
「…わしは2人を待たせておるのじゃ。すまんがここまでにしてくれぬか?」
…ケインズくん。
カインズはゼロを睨みつけた。
「…ゼロくん…だったかい?」
その言葉にゼロは顔を上げた。
「…僕と勝負をしないか?」
「…し、勝負?」
その言葉に学園長は目を見開く。
「学園長先生に気に入られた君の力を見てみたい。」
ゼロは口を閉ざした。
「待つのじゃ!ゼロくんとの決闘は…。」
「これは僕と彼の問題です!先生でも僕たちの決闘を決める権利はありません!」
学園長は口を閉ざしてゼロを見た。
(…やめるべきじゃぞ。お主は…。)
学園長が見つめるゼロはゆっくりと口を開いた。
「…俺は弱いです。」
「…知っているつもりだ。Dクラスなのだから。」
「…俺が気に入られてるかはわかりません。学園長先生は面白がっているだけかもしれませんから。」
ゼロは学園長を見て小さく微笑む。
「…でも…。…学園長先生が俺を評価してくれた部分で負けるわけにはいきません。」
その言葉に学園長は目を見開く。
(まさか…ゼロくん…。)
ゼロはゆっくりと口を開いた。
「…受けて立ちます!俺は心で…敗者になるつもりはありません。」
その言葉にリアと学園長はゼロを見つめた。
「…楽しみにしているよ。」
カインズはそう言って立ち去った。
その瞬間、周りの席で関係ない生徒達が騒ぎ始めた。
学園長はゼロに告げる。
「…すまなかったのぅ。」
ゼロは頭を下げる学園長に声をかけた。
「先生が謝ることはないです。むしろ俺は嬉しかったので。魔法で大事なのは精神…心です。その心で評価してもらえるなんて…。」
…最高の褒め言葉です。
学園長はこれまでの人生で一番の衝撃を受けた。
(…ゼロくんは…忘れてはならん。わしが死ぬまで…見守らねば…。)
ゼロはリアに話しかけられる。
「…無謀。」
「そうだよな。俺もそう思う。負けるのは目に見えてるから。」
「ん。…頭悪い。」
「そ、そこまでいうか!?」
リアは小さく口元を緩めた。
「…格好良かった。」
「…えっ?」
リアは少し頬を染めていた。
「…応援する。」
「ま、負けるぞ?」
「ん。…ボコボコ。」
ゼロはため息をついた。
「…じゃあ、魔法の特訓でもしてみるかな。」
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そしてこの日の翌日。
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