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第五話……男の依頼
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「重力ドライブ点火! 加速第三段階へ!」
「了解!」
晴信とディーを乗せたベータ号は、漆黒の宇宙を駆け抜け、以前に行ったことのある宇宙ステーション【タイタン】に立ち寄った。
晴信の理由としては、ディーの修理の為である。
晴信は船を港湾設備に泊め、比較的大きな造船所を尋ねる。
それはディーの修理を依頼するためだった。
二人は造船所の技術者に話を聞く。
「あはは、修理なんて無理無理。我々は滅びた人間たちの遺物を使っているに過ぎない。人間が作った精緻なものは、人間にしか治せないよ……」
初めは笑うも、最後はしんみりとなる獣人の技術者。
彼等が言うには、自分たちに出来るのは人間たちが作った製品であって、それを使いこなすことは無理とのことだった。
「……でも、皆さんが乗る宇宙船は?」
晴信は食い下がった。
彼等は宇宙船を新造していたのだ。
それは作り得る技術がある証拠だとおもったのだ。
「……あれもな、重要な電算機や機関は人間たちの遺産なんだ。つまり重要パーツは作れないってことだ。あんたの連れのロボットも、重要な部分はどうにもならんね……」
「そうですか……」
晴信はションボリとなったが、ディーは事情をあらかじめ知っていた様で、特に落ち込む様子はなかった。
彼等が造船所をでて、工業地域をウロウロしていると、パリッとしたスーツに金ネックレスをした中年の獣人が話しかけてきた。
「あんたの船をみたぜ。あんなのどこでつくったんだ? 俺にも紹介してくれよ!」
慣れなれしい男であったが、晴信は気にもせずに答える。
「ベータ号のことですか? あれは自分で作ったんです!」
「……ぇ? あんたが!?」
晴信は成長の早い方では無かった。
相手からすれば、ちょっと大きな子供にしか見えなかったのかもしれない。
「じゃあ、あんた。俺の頼みを聞いてくれないか? お礼はたんとするぜ!」
「いいですよ。お礼はディーの修理をお願いできますか?」
「ああ、いいぜ! ロボットの一個や二個、俺様が修理してやるぜ!」
オトコは景気が良さそうに、ディーの肩をぺちぺちと叩く。
ディーは心配そうに黄色のランプをチカチカ点滅させていたが、晴信は男の要求を受け入れ、新造船の仕様書を受け取った。
「あれ? こんなに武装する必要があるの?」
晴信が仕様書を見て、男に尋ねる。
「ああ、俺様は危険な宙域にでるからな! 宇宙海賊たちにやられるわけにはいかないんだ! で、できるかな!?」
「任せてください!」
晴信は元気よく答えた。
そうすると、男が皮で出来た袋を晴信に手渡す。
中を見ると、沢山の金貨が入っていた。
「いや、お礼は、修理が……」
「それは前金だ! 船を作ってくれたら修理はしてやる!」
「わかりました」
晴信は迷ったが、多額の前金を受け取った。
その後、二人は男と別れ、準惑星ディーハウスへと帰還したのだった。
☆★☆★☆
「さぁ! 作るぞ!」
「……はい」
元気に製図を組みたてる晴信の脇に、心配そうなディー。
ディーの心配事は、新造船の武装が多すぎることだった。
それは軍艦が装備するような大口径レーザー砲であったり、長距離用のミサイルだったことだ。
「ハルノブ、これ重武装過ぎない?」
「……でもさ、宇宙海賊と戦うんだから、これくらいは必要なんじゃない?」
そう晴信に言われると、引き下がらざるを得ないディーであった。
その後、ディーは艦艇の外殻用に鉱石を採取。
以前に作った採取ロボットが十二分に役立った。
次々に鉱石を運んで、炉に放り込み鋼材を作り上げる。
炉から出た金属は赤く熱されており、水で急冷されて黒鉄の塊となる。
新造艦の外殻は複合装甲。
鋼材と鋼材の間は、炭素繊維や硬質セラミックを編み込んでいった。
更に、居住区も仕切りを分け、船の防御力を著しく向上させる。
燃料タンクや機関まわりは特に装甲を厚くしていった。
晴信やディーのみならず、工場の作業ロボットたちが忙しなく作業し、二週間で船は出来上がった。
「完成だ!」
「やりましたね!」
二人は大よろこび。
晴信は気付いていなかったが、彼にとっては初めての本格的な武装船の制作だった。
「次はテストだ! 頑張るぞ!」
「はい!」
二人が張り切った各種テストも順調で、航行の支障をきたすことはなく、完全の仕上がりといった具合だった。
後は納品である。
新造艦をベータ号で牽引。
急いで、宇宙ステーション【タイタン】の宇宙港まで運んだのだった。
「コーヒー二つください!」
「かしこまりました」
宇宙港併設のカフェで二人はコーヒーを頼む。
ここが例の男との約束の場所だったのだ。
ディーは飲めないので、コーヒーが運ばれてきても、香りを嗅ぐだけだ。
そもそも嗅げるかどうかは、晴信にもわからないが……。
「ぉ? 早かったな! ありがとうさん!」
男が約束の時間に現れる。
今度の衣装は赤いスーツに黄色のネクタイという、派手な形であった。
「お待たせです!」
晴信は立ち上がり、船のキーを男に渡した。
――シュー。
「……な、何をする?」
晴信は男に怪しげなスプレーを吹きかけられ、その場で眠ってしまったのだった。
「了解!」
晴信とディーを乗せたベータ号は、漆黒の宇宙を駆け抜け、以前に行ったことのある宇宙ステーション【タイタン】に立ち寄った。
晴信の理由としては、ディーの修理の為である。
晴信は船を港湾設備に泊め、比較的大きな造船所を尋ねる。
それはディーの修理を依頼するためだった。
二人は造船所の技術者に話を聞く。
「あはは、修理なんて無理無理。我々は滅びた人間たちの遺物を使っているに過ぎない。人間が作った精緻なものは、人間にしか治せないよ……」
初めは笑うも、最後はしんみりとなる獣人の技術者。
彼等が言うには、自分たちに出来るのは人間たちが作った製品であって、それを使いこなすことは無理とのことだった。
「……でも、皆さんが乗る宇宙船は?」
晴信は食い下がった。
彼等は宇宙船を新造していたのだ。
それは作り得る技術がある証拠だとおもったのだ。
「……あれもな、重要な電算機や機関は人間たちの遺産なんだ。つまり重要パーツは作れないってことだ。あんたの連れのロボットも、重要な部分はどうにもならんね……」
「そうですか……」
晴信はションボリとなったが、ディーは事情をあらかじめ知っていた様で、特に落ち込む様子はなかった。
彼等が造船所をでて、工業地域をウロウロしていると、パリッとしたスーツに金ネックレスをした中年の獣人が話しかけてきた。
「あんたの船をみたぜ。あんなのどこでつくったんだ? 俺にも紹介してくれよ!」
慣れなれしい男であったが、晴信は気にもせずに答える。
「ベータ号のことですか? あれは自分で作ったんです!」
「……ぇ? あんたが!?」
晴信は成長の早い方では無かった。
相手からすれば、ちょっと大きな子供にしか見えなかったのかもしれない。
「じゃあ、あんた。俺の頼みを聞いてくれないか? お礼はたんとするぜ!」
「いいですよ。お礼はディーの修理をお願いできますか?」
「ああ、いいぜ! ロボットの一個や二個、俺様が修理してやるぜ!」
オトコは景気が良さそうに、ディーの肩をぺちぺちと叩く。
ディーは心配そうに黄色のランプをチカチカ点滅させていたが、晴信は男の要求を受け入れ、新造船の仕様書を受け取った。
「あれ? こんなに武装する必要があるの?」
晴信が仕様書を見て、男に尋ねる。
「ああ、俺様は危険な宙域にでるからな! 宇宙海賊たちにやられるわけにはいかないんだ! で、できるかな!?」
「任せてください!」
晴信は元気よく答えた。
そうすると、男が皮で出来た袋を晴信に手渡す。
中を見ると、沢山の金貨が入っていた。
「いや、お礼は、修理が……」
「それは前金だ! 船を作ってくれたら修理はしてやる!」
「わかりました」
晴信は迷ったが、多額の前金を受け取った。
その後、二人は男と別れ、準惑星ディーハウスへと帰還したのだった。
☆★☆★☆
「さぁ! 作るぞ!」
「……はい」
元気に製図を組みたてる晴信の脇に、心配そうなディー。
ディーの心配事は、新造船の武装が多すぎることだった。
それは軍艦が装備するような大口径レーザー砲であったり、長距離用のミサイルだったことだ。
「ハルノブ、これ重武装過ぎない?」
「……でもさ、宇宙海賊と戦うんだから、これくらいは必要なんじゃない?」
そう晴信に言われると、引き下がらざるを得ないディーであった。
その後、ディーは艦艇の外殻用に鉱石を採取。
以前に作った採取ロボットが十二分に役立った。
次々に鉱石を運んで、炉に放り込み鋼材を作り上げる。
炉から出た金属は赤く熱されており、水で急冷されて黒鉄の塊となる。
新造艦の外殻は複合装甲。
鋼材と鋼材の間は、炭素繊維や硬質セラミックを編み込んでいった。
更に、居住区も仕切りを分け、船の防御力を著しく向上させる。
燃料タンクや機関まわりは特に装甲を厚くしていった。
晴信やディーのみならず、工場の作業ロボットたちが忙しなく作業し、二週間で船は出来上がった。
「完成だ!」
「やりましたね!」
二人は大よろこび。
晴信は気付いていなかったが、彼にとっては初めての本格的な武装船の制作だった。
「次はテストだ! 頑張るぞ!」
「はい!」
二人が張り切った各種テストも順調で、航行の支障をきたすことはなく、完全の仕上がりといった具合だった。
後は納品である。
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急いで、宇宙ステーション【タイタン】の宇宙港まで運んだのだった。
「コーヒー二つください!」
「かしこまりました」
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ここが例の男との約束の場所だったのだ。
ディーは飲めないので、コーヒーが運ばれてきても、香りを嗅ぐだけだ。
そもそも嗅げるかどうかは、晴信にもわからないが……。
「ぉ? 早かったな! ありがとうさん!」
男が約束の時間に現れる。
今度の衣装は赤いスーツに黄色のネクタイという、派手な形であった。
「お待たせです!」
晴信は立ち上がり、船のキーを男に渡した。
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