転生したら平社員

ストレートダーク

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勇者の出勤

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ウォーと叫ぶ黒龍の咆哮、一定の音
これはスマホの目覚ましだ。桜井春衣は目覚ましを止めた。今の現実のような夢は何だったのが?朝ごはんを食べながらテーブルの上に昨日自分で書いたのだろうか?文字が書いてある「受付にてパソコンの調子が悪いと伝える」酔っていて覚えてないが調子が悪かったのは確かだ。仕事に遅れる。とりあえず黒革の手帳とペンをスーツに戻して職場に向かう。「株式会社KURO自動車本店」が務め先である。本社と言っても大きくなくそこで車の販売をしている。9時から店はオープンするが営業は10時に出社する事になっている。そのかわり帰り時間は未知数。俗に言うブラック企業だ。店に入りパートの受付にパソコンの件を言っておいた。今日中にSEが見てくれる事になった。営業部に入りタイムカードを切る。本日黒田社長御一行は午後までいないとの事。道理で社内が明るい。しかしホワイトボードを見ると嫌な気持ちになる。社長がいるときは基本これを見ながらネチネチと言われる。「動けない準備体操」という比喩表現は賢い。剣幕により足から沸騰するような恐怖に駆られ動けなくとも尋常じゃない汗をかく。それが朝イチ1番怖かった…怖かった…怖かった?
席について今日1日のスケジュールをみる。やらなきゃいけないものをふまえると12時を回ることは必須。でも野宿するよりましか…なんだこの前向き。今日の俺はおかしくなってしまったのか?
上司が近づく
「桜井くん、頼むから車売ってくれない?みんな頑張ってんのにただの給料泥棒だよ。あとタイムカードは18時に切ってね。後で社長直々に言われるよ。」
上司が自分の席に座ると今度は隣の後輩が「ノルマも個人、グループあるんで桜井さん…足ひっぱんないで下さいよ。」
作業に戻りながら舌打ちをされた。瞬発的にトイレに行きたくなったが別に行きたくなかった。意味がわからない。その時後ろから「失礼します。」と言われた。姿は知っていた。SEの那須というやつ。不意に「久しぶりだなぁ」と言ってしまった。自分でも驚いたが那須はパソコンを直してくれている。心なしか口元が緩んで見えた。修理を終えると那須は「経理部の蔵さんが定期券の事で桜井さんをよんで来てと言ってましたよ。」と言われた。わかったといい2人で経理部の方へ行った。SEの仕事場も隣なので2人で歩いた。途中休憩室を通りがかる瞬間那須に捕まれ誰もいない休憩室へ連れて行かれた。何事かと驚いていると「久しぶりです。」と那須が泣きながら抱きついて来た。「僕です。ライナスです。来れたんですね。」私は言ってる意味がわからなかったがライナスには聞き覚えがある。「詳しい話は今日仕事終わり話しましょう!4人で」「4人?てか仕事が終わるかどうか」「大丈夫ですよ。ハルイ様なら。さっさ蔵…クライの所に行きますよ。」再び経理部に向かう。那須が「おーい」と言うと「ハイ」と眼鏡をかけた青年が出てきた。近づくにつれ表現がかわりまた泣きそうになる。俺を含め今日のみんなはどうしたんだろう。震える手で蔵は定期券の更新の紙を渡してきた。金髪で髪が長めの那須が蔵に近づいて「今日4人で」と言った。蔵は頷き「最後にお帰りなさいませとだけ言った。」さっきの4人には蔵が居たのか?
て事はもう1人…
お客様が続々と入ってきた。10時になる。急いで接客にあたる。今月は俺だけまだ契約を取れてない。ホワイトボードには丁寧に真ん中に私の名前が入っている。お昼になり社長一行が帰ってきた。
お昼は一斉に取れないので3人に分かれて取っていた。先程の性格が悪い先輩と後輩と一緒だった。社長だけが休憩室に来て今日の成果を聞いてきた。ご飯など食べられない。先輩は震える声で「今日はまだです。」と後輩も同様「まだ契約はありません。」と言う。いつも俺を最後に答えさせ全員を怒鳴るのだが今日は2人の答えだけでイライラしているようだ。黒田の視線で足元から動かなくなる。「黒田はとりあえず営業終わったらアポ、訪問、戻って書類、帰れると思うなよ」と出て行こうとした。寸前俺と目が合い「で?」と聞かれたので「3件契約取りました。」と当たり前のように言った。周りが一瞬凍りついた。黒田は確認する様に「何人中?」と聞いてきたので「3組中です。」と答えた。休憩が終わり4人で休憩室を出る時社長の右腕広報部長の伊野が社長のところへ来て打ち合わせをするところだった。私はこの伊野が好きではなかった。横取りでここまで来た奴だ。俺たちや派遣の…
社長がいなくなってホッとしたのか後輩が俺のところへ来て「先輩のマグレ羨ましい。ビギナーズラックレベルですね。」と皮肉を込めて来た。私はペンを持ち後輩と並列しながらお客さんのところへ行った。私の担当は、老夫婦だった。後輩は元気な幼稚園児を連れた母の元へ行った。話始めようとした時、幼稚園児の笑い声が店内に響いた。「ママこの人漏らしてるよ」と後輩を指さして笑っていた。グレーのスーツを着た後輩の股が濡れていたのだ。焦って走っていく姿を見ながら微笑んでる老夫婦にいろいろ提案をした。18時半時点8件の契約が取れた。閉店間際先輩より「この調子なら迷惑分後2件電話なり訪問なりで取ってこい」と言われたので「用事があって無理です。」と答えた。お客様のところに戻る時小言が聞こえたのでお客様の死角でペンを思いっきり先輩に振ってみた。突如先輩の周りに突風が発生して安いカツラが取れた。「本当に取れた」なんか申し訳ない。もっとちゃんとしてると思った。その時書類が落ちる音がした。振り向くと社長の秘書三井がこちらを見て驚いてる。「社長御一行」の1人で美人秘書で1番話がわかる。どうやら出先より帰って来た感じだ。嬉しい気持ち。通り過ぎ際「また後で」と言われた。なんだろ。営業部に戻り帰り支度をしてみんなに挨拶を終える。総務系の人たちはもう帰ったみたいだ。隣の整備工場にも挨拶に行かないと。シャッターは降りていて本部の扉から入る。
チェーンを解き南京錠を外し挨拶をする………もう一つの扉は地下に繋がっている。シャッター開放時は警備員が常にいるので整備士達は作業所と地下しか行き来が出来ない。この会社の闇
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