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一話【第一部】
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しおりを挟む「……」
運動って何のだよ。
思わず沈黙した俺がふと見遣った先で『苗床』の男が睫毛を震わせた。ゆっくりと瞼が開き、ぱち、ぱち、と長い金の睫毛が揺れる。澄んだエメラルド色の瞳が周囲を見回し、俺とアレンを映した。
「おや、目覚めたかい? おはよう」
「……」
「大丈夫? 喋れないかな? お腹空いてない? 水飲む?」
「おいおい、矢継ぎ早に聞くな落ち着け」
めちゃくちゃな勢いで寄っていくアレンの首根っこを掴んで引き戻す。金の睫毛を瞬かせた男は、少しぼんやりとしているが知性を感じさせる目をしていた。触手の苗床にされて気が狂ったりはしていないらしい。俺はホッと安堵の息を零した。
「ねえ名前は? 名前思い出せる?」
「クロード……」
「へえ、クロードっていうんだね。僕はアレンだよ。よろしく」
クロードと名乗った男は、こくりと頷いてアレンを見た。そして俺に視線を移してくる。ヴィンセントだ、とその視線に応えて名乗る。
するとクロードの手が俺の方へ伸びてきて、ジッと見つめられた。
「貴方の声に聞き覚えが、ある」
「ああ、彼がきみをテンタクルボールから救い出したからね。それでじゃない?」
「……テンタクル……ボール」
「覚えてない? たぶん結構長い間捕まってたんだと思うよ。その証拠にきみの腹にはたくさんのしゅ……もがっ」
俺は慌ててアレンの口を手で塞いだ。
これだから他人の感情の判らない変人研究者は! 自分が触手に捕まって苗床にされてたなんて、気がついたばかりの状態で聞きたくねーわ! しかも腹ん中には種子がみっちり詰まってるって? 早くもここで気が狂ったらどうすんだ!
「むーむー!」
「少しは人情ってものを理解しやがれこの変人が!」
あ、ついに言ってしまった。しかしアレンは気にした様子もなく、俺の手をずらしてぷはっと息をすると首を竦めて笑った。
「あはは。確かにちょっと急いたかもね。……とりあえず、クロード君には」
休息が必要だ、と言うのだと思っていた。
ところがこの変人、本当に変人だった。ベッドから身体を起こしていたクロードの側に寄ると、いきなりその足を掴みがばりと左右に割ったのだ。そしていそいそと自身の下肢を寛げ始める。膝を折り曲げられて押し倒されるような姿勢になったクロードは、ぱたりとまたベッドに転がった。
おい、抵抗しろやお前。なにこの変人を許容してんだよ!
「待て待て待て! 何やってんだお前は!」
「えー? だって中の種子、見てみたいじゃない? これ排出するには性交が一番早いんだよ」
「――はあ?」
「あ、しかも尿道に幼体が入ってるね。つまり性交で種子が排出、それが発芽して性器に入り込み育まれていると。ふむふむ、有袋類みたいなかんじかな」
いやちげぇわ。尿道に寄生してるって全然違うだろが。頼むから常識で考えて?
「ヴィンセント。僕、性器に入ってる幼体に用があるから性交は任せた。できるだけ回数やってくれる? あと射精もたくさんさせてくれる?」
「はあああ?」
素っ頓狂な声を上げる俺に、アレンは笑いながら『特別手当出すよ』と言った。クロードは静かなエメラルドの瞳で俺達をじっと見つめている。
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