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六話
1-1
しおりを挟む研究所に戻ると、アレンは例の土産が大層気に入ったようで鼻歌をうたいながら培養室を用意していた。今までは小さい個体しかいなかったから水槽で事足りただろうが、今回追加したのは成人男性の大きさの物ばかりだ。空き倉庫を急いで片付けて機材を運び込んでいた。
「入りきらなきゃ裏庭にでも埋めるか?」
「僕の研究材料となったからには、そんな雑な扱いを! できるものか!」
「水と光さえあれば枯れないけどなぁ。あー……はいはい」
研究に関してアレンに意見なんてするもんじゃない。俺は早々に諦めて、彼が満足するまで放っておくことにした。
ちなみにクロードは先に部屋に帰しておいた。チビ達がわんさかいるので懐かれて大変そうだったが、人間の子供みたいに手がかかるわけでなし、部屋で一緒に昼寝でもしてるだろう。
俺は一度部屋に戻って服だけとりあえず着替え、アレンの元に向かった。今後の事を話しておくべきだと思ったからだ。
――が。相変わらずこの研究第一のモンスターマニアは新しい検体の世話に忙しい。俺の話なんか聞きやしねえ。
「……そーいやぁ、ウィトリーのあいつなんだっけ」
「現当主のこと?なんかそっちでメソメソ泣いてるのがブルーノくんだよ」
「あーそうそうブルーノね」
アレンの作業が落ち着くまで、ちょっと遊んでやろう。聞きたいこともあるしな。
俺は頬杖突いていたテーブルから離れ、緑色の触手の塊に近づいた。うごうごと表面が脈打ち、中からすすり泣きが聞こえてくる。
アレンの字で雑に『ブルーノ』と書かれた紙がぺたりと貼られていた。向こうには『近衛騎士・槍』『近衛騎士・剣』と張られた個体もある。もの凄く雑だけど、なんでこの状態で見分けがつくんだアレンは。天才か? いや天才だったわ。
「よう。ご機嫌いかが、ブルーノくん」
「ひ、……ぁ、……ぁう、……ぐっ……」
「クロードの背中の傷、お前がやったんだって? なに見て判断してそうしたのか、言ってみな」
触手の塊がぱくりと割れると、中から蹲った人間が現われた。派手派手だった衣服は無惨に切り裂かれ、ぼろ布になっている。
俯いているブルーノの顎を掴み、涙で汚れた顔をぐいっと持ち上げた。恐怖にブルブルと震える振動が伝わってくるわ、小便臭いにおいはするわで最悪だ。幸いなことに失禁はすぐ触手達に吸収されてそれ以上臭うことはなかった。
「あ、あ、当主の手記に……」
「手記?」
「に、日記帳だ。狂って死んだという当主は、妾の子を引き取ったあと、ち、地下で、毎日鞭打っていたと……」
「それをなんでクロードと結びつけた」
ウィトリー家が持っていた情報は、テンタクルボールの苗床がアレンの元に居るという話だけのはずだ。いや、クロードの兄の研究資料にはクロードの実験のことも書かれていたのか。それでも、かなりの年月経ってから保護した苗床とクロードを結びつけるのは簡単じゃない。長い年月のうちに別の苗床が生まれた可能性だってあるだろう。それこそ、不老不死の妙薬を信じていないと出来ない判断だ。
研究資料にある『ウィトリー家の実験体』では? と思わせた点がどこかあるはずだ。
「か、髪色だ! ウィトリー家に迎え入れた妾の子は金髪に緑の瞳だったと書かれていた! それに昔から金の髪の子供は尊い血筋の王家か、同等の高貴さをもつ由緒正しいウィトリー家に生まれるのだと言われている!」
「……クロードを外に出してたせいでどっかから聞きつけたのか」
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