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番外編
とある忠犬のよもやま話・1
しおりを挟む魔王の白い足先に、ミハイルがそっと舌を這わせる。
よし、と頷くのを見上げて幸せそうに目を細めたミハイルは、足の親指からはむはむと指一本ずつ舐めて吸い上げ、ちゅうちゅうと吸って魔王の足をきれいにした。
先程まで魔王は、その白い足で直接ミハイルの股間を撫でまわしていた。
限界まで耐え、ギリギリで射精の許可をもらったミハイルは勢い良く精液を飛ばし、魔王の足を汚してしまったのだ。
おそるおそる見上げたミハイルに、魔王はにこにこしながら『きれいにして』と足を差し出した。
むしろご褒美である。ミハイルは尻尾を振る犬の如く、魔王の足にしゃぶりついた。
側近として魔王に仕えるようになってから、カーティスの年齢で数えると丸2年が経っていた。
それまで何度も魔族の配下を面接して雇い入れようとしたが、ミハイル以外側近には上がれなかった。
……魔王の魅了効果が年を経るごとに上がっているからである。
今では魔王の方が仮面をして謁見の間に出て来るほどだ。そうしなければまともに話せる魔族がいなかった。
そんなわけで、たった2人の貴重な側近の一人であるミハイル・クラーキンは、特別目をかけられている。時折魔王の気まぐれで『ご褒美』がもらえるくらいに。
側近と言ってもまだルカのように一日中一緒にいることは出来ず、日も一日空けての勤務になる。そうしなければミハイルが倒れるからだ。
魔王は『少しずつ慣らしていこうね』と笑顔で言っていたが、いまだに直接ミハイルを撫でる事を許されていない。
……誰が禁止するのか?側近に倒れられて困るルカである。
本日は魔王が与えたご褒美の日だ。
謁見室の床に寝転ぶように言われ、魔王の指示のままかっちりとした黒い軍服のベルトを緩めストリップをさせられた。
しかも半脱ぎの状態で止められ、魔王の足先が服の隙間に入ってきて、ミハイルは赤面しながら喘いだ。
逞しい腹筋も足先で辿られヒクヒクと震える。快感による涙をいっぱいに溜めた青い瞳を見下ろして、魔王は艶然と微笑んだ。
魔王の足が身体を撫でるたび、ミハイルは軽くイッてしまう。
直接触れるのはほんの少しで、だいたいは服の上を動いているだけなのだが。白い魔王の足先が肌に触れ熱が移るその瞬間に、『ひぐうぅっ』と濡れた声を上げて絶頂する。
顎を伝う唾液と、荒い呼吸、つい無意識に揺らしてしまう腰にミハイルはたまらない羞恥を感じる。
そうして赤面してひたすら恥じ入るミハイルを見下ろして、魔王は『ミハイルって、いじめたくなる顔だよね』と笑って言った。
ミハイルは、父と兄が死に突然当主となった。
まさに青天の霹靂とも言えるような世代交代は、魔王即位の日に起きた。新しい魔王に逆らいその首をはねられたのだと聞いた。
哀しみもなく、涙も出なかった。ああ、解放されたのだなとミハイルは思った。
次男であるミハイルは兄のスペアだった。
長子に何かあった場合の予備として生まれたが、母親に似た金髪に青い瞳で人形のように可愛らしい容姿をしていたため、母や侍女達にはかわいがられた。
ただ、父は次期当主である兄にしか興味がなく、ミハイルは見向きもされなかった。
また当主教育で分刻みのスケジュールがあり忙しかった兄とも、ほとんど顔を合わせなかった。
それでも貴族の子どもとして最低限、家庭教師や剣術の指南は受けられ、ミハイルは大きく成長した。魔族なので身体はすぐに成長したが、成人にはまだほど遠い状態だった。
野山で魔獣狩りくらいしか楽しみのなかったミハイルは、自主鍛錬として普通ではない死線をくぐり抜けてきた。
……そしてある日、流行病で母が死んだ。
狙っていたかのように父はミハイルに縁談を持ってきた。
しかも相手はかなり年上で、元老院所属の高位魔族の男である。
初めて入った父の執務室で、驚いて声も出ないミハイルに、父はモノを見るような冷たい目で言った。
『役立たずの穀潰しなのだから婚姻でクラーキンに利をもたらせ』
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