「能力殺し」望月さんの事件簿に巻き込まれた青年C

ちろりん

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薔薇の鎖

第1話

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────ジリリリリリリリ
────チュンチュンチュンチュン

眩しい朝日が目に飛び込んできた。
目覚ましの音と鳥の鳴き声が不協和音を奏でている。
だがこれで終わりではない、もう1つ厄介な音が入る……それは

「お兄ちゃん!おーっきろー!朝だぞー!ちこくするぞ!」

そう、妹が毎朝起こしに来るのだ。
別に嫌ではないしむしろ有難いのだが……
「千春……ちょっと……耳元で叫ばないでくれ」
妹である千春はいつも耳元で叫んで起こしてくるのだ。
正直、耳も頭も痛くなる。
「えーだって、お兄ちゃん起きないじゃん!朝ごはん出来てるから早く降りてきてね!」
そう言うとそそくさと降りていった。
まったくいつまでこの無邪気が続くのであろうか。
俺はそう思うと、布団を少し直しあくびをしながら階段をおりた
俺は千春と二人暮しだ。
両親は5年前の火事で亡くなった。
幸い生活費は遠く離れた叔父と叔母が出してくれているので生活に困ったことは無い。
決して裕福とまではいかないが、ある程度は幸せな暮らしをしている。
とくに千春は良くやってくれていて、まだ中学2年生だというのに掃除、洗濯、料理とあら方のことは完璧にこなしてくれる。
だが、千春は家事の影響か火がまだこわい見たいだ。うちの家はガスコンロ、なので毎朝見ることになる。
「……千春」
「なにー?お兄ちゃん」
「今度の休みIH見に行こうか」
「えっ、いいよ気遣わなくても~お金に余裕なんてあまりないんだから!それより、お兄ちゃんさ確か高校生刑事?ってのになるんでしょ?」
「えっ、ああ……まぁ」
まだなるって決まった訳じゃないけどな

あの日、少女が空から降りてきた。
白銀の髪をなびかせる、黄金の瞳をした美しい人だった。

「じゃあお兄ちゃん!初任給でIH買ってよ!」
「えっ!?ああ、うん……わかった、買おう、初任給で買おう!」
そう言うと妹の顔はぱぁと明るくなった。やったぁ!とガッツポーズを取っていた。
「お料理の幅が広がるよー!」
ってそっちかい!
……まぁ、大方俺に気を使っているのだろう。両親が生きていたら、ゲームや漫画、可愛い洋服とかが欲しかっただろうに……IH欲しくてガッツポーズする中2がどこに居るんだか……。
勢いもあるが言ってしまったからには買わないとな……そうだなバイトでもするかなぁ……。
「お兄ちゃん、もう時間だよ!はやく!はやく!寧々ちゃん来ちゃうよ!」
「えっ、もうこんな時間かよ!」
そう焦って目玉焼きを口に放り込んでいると
────ピンポーン
と聞き慣れた音が聞こえた。
「ほらぁ、寧々ちゃん来たよ!、寧々ちゃん上がって!」
そう妹に誘導されてきた人は俺の幼馴染みである野々原 寧々である。
「たっくん、また寝坊?」
呆れた顔で俺の顔を覗いてくる。
ブロンドの肩まである髪を艶ややかに揺らし、その見る人が全員可愛いというような正統派美少女である。
オマケに世話焼きで、クラス委員長でしかも勉強は学年トップである。
物腰柔らかであり、お姉さん気質で周囲からも慕われている。
「おはよう、寧々。これは寝坊じゃないぞ!千春とIHについて話していただけなんだ」
俺はとっさに答えた。小さい頃から見慣れているはずなのに寧々があんまりにも至る所が成長していて目のやり場に困るのだ。
「千春のせいにしないの!はい、はやく!行ってらっしゃい!」
俺は千春に半ばむりやり口に詰め込みさせられながら玄関を出た。
家から学校までは歩いて約20分でつく。
こんな近い距離だからこそ寝坊しても大丈夫なのだが
「寧々さんや、待たなくていいんだぞ?委員長の仕事もあるだろうに」
そう言うと寧々はくすっと笑って
「こうでもしないと、たっくんを独り占め出来る時間ないじゃん?」
「独り占め?小さい頃から一緒だろ?あと、俺は喋りかけられないし別に」
「んーもういいよ、たっくんは昔から変わらないね」
「昔から変わらないって、寧々よりは身長高くなったぞ、昔みたいにおんぶでもしてやろうか?ほーらほーら!」
「えー?おんぶしてくれるの?」
「ごめんなさい嘘です」
話が途切れたあと、寧々は一瞬心配そうな顔になり俺にこう尋ねた。
「……それよりさ、望月さんとどうなったの?」
「えっ……あー」
俺はいきなりあまり考えてなかったことを聞いてくるもんだからちょっと反応に困ってしまった。

────「15861……私と契約してくれないか?」
白銀の髪をなびかせる少女はあの日、夕日に照らされる屋上でこう放った。
「契約?ごめんちょっと理解が追いつかない……そっそれより、君……誰だよ」
そう言うと少女はあっと言う表情で身分証みたいなのを取り出した。
「自己紹介が遅れた。能力抹消課の高校生刑事の望月珠代だ、明日からここに転校することになった。昇進試験に一緒に出て欲しいんだ。私の能力は「ちょっちょっとまって!ちょっとまって!」
「なんだ?なにか疑問点でも?」
望月珠代は首を傾げた。あたかもそれがあたりまえかのように、俺にとっては当たり前でもなくよくわからないことなのだ。いや、ほんとに何もかも分からない。
「まずな、まずだ!俺の名前は15681じゃなく……登藤匠だ……と ど う た く み!おっけー?」
「登藤匠だな、了解した。そう匠の能力と私の能力は噛み合うんだ。言わば私は
────君がいなくてはまともに能力を発動できない」



「寧々……おれ、厄介なことに巻き込まれたかもしれない」
そう俺はあの日、普通の人ではなくなってしまった。
いや元から普通の人ではないことが判明してしまった。
小さい頃からの人嫌いやなどの原因も判明してしまった。
……全てはあの少女の一言で





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