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18話 ラストスパート
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「ちょっ……と、冗談じゃないわ!! 止めて! 放して!」
サキュバスは必死に体をよじるが、勇者にしっかりと腰を掴まれていて逃げられない。
「嫌よ! せっかく特級にまでなったのよ! どうして!? 私の体を、弄んだのね!!!」
「そもそも遊びだっただろう? 暇で暇で仕方がなかった俺に、やっと玩具が与えられたと思ったのに」
まさか魔王の座を狙っているなんてね、と勇者は残念がる。
「俺はあいつの側にいたいから、ここで大人しくしているんだ。あいつが魔王じゃなくなったら、また追いかけないといけないだろうが」
勇者はしゃべりながらも、がんがんと腰を突き上げる。
楔を穿たれたサキュバスは、ただ乱れ狂うしかなかった。
「あ、っ……! い、や……やめ、て! あぁ、ん、あ!」
「犬もいない今、あいつを探索するのは骨が折れるはずだ。分かるか? 俺はあいつに、このまま魔王でいて欲しいんだよ」
「たすけ、て……! お願い! っ……、あ、諦めるから! ん、んぁ……もう、魔王には、挑まないわ!」
「でもなあ、勝手に俺の夢に現れて、聖力を横取りされても困るしなあ」
勇者の動きが早くなってきた。
それがラストスパートなのだと気づいて、サキュバスは恐れおののく。
「いやああぁあ! 許して! 夢にも入らないわ! 約束するから! やめてえええぇ! あっ、ああ、あああああぁ!!!」
「あいつのために、俺に何かできることがあるとすれば、こうして危ない芽を先んじて摘むくらいだ」
無理やりイかされたサキュバスは、潮を噴いて仰け反る。
そして続けて、勇者の射精を雌膣で受け止めた。
「ぎゃああああああ!」
「芸術品のように素晴らしい体だったよ。もっと娯楽として、堪能したかったけど……本当に残念だ」
サキュバスの体は縮んでいく。
ぽとりと、勇者の腹に落ちてきたのは、褐色のサソリだった。
「どうしようかな。反逆心のある者を、生かしておいてもいいと思う?」
誰かに判断を委ねるような勇者の言葉を聞き、サキュバスだったサソリは慌てふためく。
窓もない勇者の監禁部屋から逃げ出すには、ただひとつの出入り口を目指さなくてはならない。
カサカサカサッ!
ベッドから飛び降り、扉下の隙間をかいくぐり、脱出に成功したサソリは、そこで一息をつく。
しかし――。
『っ……!!!!』
部屋を出てすぐの場所で、ピンク色のスライムとかち合った。
サソリになってしまったサキュバスが、敵う相手ではない。
先ほど安堵でホッと吐いた息を、今度は恐怖でヒュッと吸い込む。
死相の出ているサソリの前で、スライムは悠然と佇んでいた。
動かぬスライムから、じり、じり、と後ずさったサソリは、さっと踵を返す。
「……」
スライムはそれを追わない。
なぜなら、サソリの遁走した先に、何が待ち構えているのか、知っているからだ。
それよりも、勇者のいる部屋へと意識を向ける。
「なあ、対応はこれで良かったか? それとも、昇華するためとはいえ、抱いちまったのはマズかったか?」
勇者はそこにスライムがいると、確信をもって尋ねている。
「お前を怒らせたくないんだよ。何が正解だった?」
ピンク色のスライムが時おり、こうして扉越しに勇者の様子を窺いに来ると、必ず話しかけられた。
軟体が床を這う音を拾うなど、どれだけ聴覚がいいのか。
もはや勇者は、人間の域を超え、魔物に近かった。
「お前が敗けるとは思わないが、俺の聖力を求めてここまでやってきた魔物は、初めてだったからなあ。ちょっと、過剰に反応してしまったかもしれん」
勇者の監禁部屋は、魔王城のかなり奥まった場所にある。
監視がついているこの場所へ侵入したサキュバスは、それだけ手練れだったと言えよう。
「まあでも、久しぶりに柔肌を味わえて、役得ではあったな」
「あんたって、いっつもそう!!」
これまで黙って聞いていたが、堪えきれなくなったスライムがついに口を開く。
「女をなんだと思っているの! あんたを喜ばせるためだけの存在じゃないのよ! 尻だの胸だの、パーツで評価されて嬉しい女なんていないわ!」
「……やっと、しゃべってくれた」
罵倒されたにしては、勇者の声は喜びに打ち震えていた。
その後に、スンと洟をすする音がしたので、スライムははたと正気に戻る。
勇者を物扱いして、ずっと無視をすると決めていたのに。
うっかり相手をしてしまったのを猛省した。
「もっと俺に教えてくれ。女心ってやつを。お前から教わったら、忘れないから。……頼むよ」
勇者が情に訴えかけてくる。
ここで絆されては駄目だ。
スライムはそのまま、扉の前を通り過ぎた。
この先ではサソリが、鶏やロバや蝙蝠や蜘蛛に、追いかけまわされているはずだ。
そろそろ逃がしてやりなさいと、命じなくてはならない。
離れていくスライムの気配に、勇者がか細く懇願した。
「待ってる。また夜に……会おう」
サキュバスは必死に体をよじるが、勇者にしっかりと腰を掴まれていて逃げられない。
「嫌よ! せっかく特級にまでなったのよ! どうして!? 私の体を、弄んだのね!!!」
「そもそも遊びだっただろう? 暇で暇で仕方がなかった俺に、やっと玩具が与えられたと思ったのに」
まさか魔王の座を狙っているなんてね、と勇者は残念がる。
「俺はあいつの側にいたいから、ここで大人しくしているんだ。あいつが魔王じゃなくなったら、また追いかけないといけないだろうが」
勇者はしゃべりながらも、がんがんと腰を突き上げる。
楔を穿たれたサキュバスは、ただ乱れ狂うしかなかった。
「あ、っ……! い、や……やめ、て! あぁ、ん、あ!」
「犬もいない今、あいつを探索するのは骨が折れるはずだ。分かるか? 俺はあいつに、このまま魔王でいて欲しいんだよ」
「たすけ、て……! お願い! っ……、あ、諦めるから! ん、んぁ……もう、魔王には、挑まないわ!」
「でもなあ、勝手に俺の夢に現れて、聖力を横取りされても困るしなあ」
勇者の動きが早くなってきた。
それがラストスパートなのだと気づいて、サキュバスは恐れおののく。
「いやああぁあ! 許して! 夢にも入らないわ! 約束するから! やめてえええぇ! あっ、ああ、あああああぁ!!!」
「あいつのために、俺に何かできることがあるとすれば、こうして危ない芽を先んじて摘むくらいだ」
無理やりイかされたサキュバスは、潮を噴いて仰け反る。
そして続けて、勇者の射精を雌膣で受け止めた。
「ぎゃああああああ!」
「芸術品のように素晴らしい体だったよ。もっと娯楽として、堪能したかったけど……本当に残念だ」
サキュバスの体は縮んでいく。
ぽとりと、勇者の腹に落ちてきたのは、褐色のサソリだった。
「どうしようかな。反逆心のある者を、生かしておいてもいいと思う?」
誰かに判断を委ねるような勇者の言葉を聞き、サキュバスだったサソリは慌てふためく。
窓もない勇者の監禁部屋から逃げ出すには、ただひとつの出入り口を目指さなくてはならない。
カサカサカサッ!
ベッドから飛び降り、扉下の隙間をかいくぐり、脱出に成功したサソリは、そこで一息をつく。
しかし――。
『っ……!!!!』
部屋を出てすぐの場所で、ピンク色のスライムとかち合った。
サソリになってしまったサキュバスが、敵う相手ではない。
先ほど安堵でホッと吐いた息を、今度は恐怖でヒュッと吸い込む。
死相の出ているサソリの前で、スライムは悠然と佇んでいた。
動かぬスライムから、じり、じり、と後ずさったサソリは、さっと踵を返す。
「……」
スライムはそれを追わない。
なぜなら、サソリの遁走した先に、何が待ち構えているのか、知っているからだ。
それよりも、勇者のいる部屋へと意識を向ける。
「なあ、対応はこれで良かったか? それとも、昇華するためとはいえ、抱いちまったのはマズかったか?」
勇者はそこにスライムがいると、確信をもって尋ねている。
「お前を怒らせたくないんだよ。何が正解だった?」
ピンク色のスライムが時おり、こうして扉越しに勇者の様子を窺いに来ると、必ず話しかけられた。
軟体が床を這う音を拾うなど、どれだけ聴覚がいいのか。
もはや勇者は、人間の域を超え、魔物に近かった。
「お前が敗けるとは思わないが、俺の聖力を求めてここまでやってきた魔物は、初めてだったからなあ。ちょっと、過剰に反応してしまったかもしれん」
勇者の監禁部屋は、魔王城のかなり奥まった場所にある。
監視がついているこの場所へ侵入したサキュバスは、それだけ手練れだったと言えよう。
「まあでも、久しぶりに柔肌を味わえて、役得ではあったな」
「あんたって、いっつもそう!!」
これまで黙って聞いていたが、堪えきれなくなったスライムがついに口を開く。
「女をなんだと思っているの! あんたを喜ばせるためだけの存在じゃないのよ! 尻だの胸だの、パーツで評価されて嬉しい女なんていないわ!」
「……やっと、しゃべってくれた」
罵倒されたにしては、勇者の声は喜びに打ち震えていた。
その後に、スンと洟をすする音がしたので、スライムははたと正気に戻る。
勇者を物扱いして、ずっと無視をすると決めていたのに。
うっかり相手をしてしまったのを猛省した。
「もっと俺に教えてくれ。女心ってやつを。お前から教わったら、忘れないから。……頼むよ」
勇者が情に訴えかけてくる。
ここで絆されては駄目だ。
スライムはそのまま、扉の前を通り過ぎた。
この先ではサソリが、鶏やロバや蝙蝠や蜘蛛に、追いかけまわされているはずだ。
そろそろ逃がしてやりなさいと、命じなくてはならない。
離れていくスライムの気配に、勇者がか細く懇願した。
「待ってる。また夜に……会おう」
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