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19話 真夜中の会話
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勇者が完全に寝入ってから、ピンク色のスライムは部屋を訪れた。
するりと体を大きく伸ばして、眠る勇者の股間を刺激し、聖力の宿る精液を搾取し始める。
今日はサキュバス相手に放った後なので、量はいつもより少なかった。
「それでもまだ、これだけの強さがあるのよね。……野放しにするのは危険ね」
スライムがレベルアップし続け、圧倒的強者による恐怖の統治が完成したら、魔王の所有物である勇者に手を出す魔物もいなくなる。
それまではここで匿っていないと、血肉を目当てに殺される可能性が高い。
「まだサキュバスのように、知能があればいい。勇者を生かす利点を理解できるから」
だが、そんな魔物ばかりではない。
奇しくもスライムが戦いを挑んだ魔王は、ひたすらに殺戮を楽しむ骨だけのドラゴンで、まるで話が通じない相手だった。
「あの骨、なかなか頑丈だったわ」
二度と復活させないつもりで、容赦なくエネルギーを吸収したら、骨の髄まで溶かしてしまった。
その結果、ピンク色のスライムの体内には、銀色のラメが光るようになったのだ。
おそらくドラゴンが隠し持っていた、何らかの特技を継承したらしいが、あまり興味はない。
それよりも――。
「どうしようかしらね、このクズ勇者を……」
体を元の大きさに戻すと、鎖に繋がれたままだらしなく寝ている、全裸の勇者を見下ろした。
スライムの言葉にはトゲがあるが、どこか勇者を憎めない響きもある。
「何もない部屋に閉じ込めたのは、私の失敗だったわ」
暇を持て余していた勇者が、サキュバスと玩具と認識して、性行為をするに至った責任の一端は、スライムにもあると思っている。
だからスライムは、勇者が満足するまで魔王の座を狙うサキュバスと戯れるのを、見逃そうとしていた。
「夢の3Pを目指して、スライム狩りをしていたあんたは、活き活きしていたものね。もともと、そういうことが好きなんでしょう」
魔王討伐ではなく、性の快楽を追求するのに余念がなかった。
そんなかつての勇者の姿が、ありありとスライムの脳裏に蘇る。
「差し出された絶好の機会を、あんたが逃す訳ないのよね」
この部屋にサキュバスが忍び込んだときから、スライムは扉のすぐ外にいた。
サキュバスが勇者に危害を与えるつもりなら、すぐに阻止しようと待ち構えていたのだ。
だから勇者が、手放しでサキュバスの登場を悦び、美しい女体を褒め称え、愛撫を施す様子をずっと感知していた。
「サキュバスに欲情しているのを、私に隠そうともしなかったわ。本当にどうしようもないんだから!」
勇者はスライムがいることに、最初から気づいていた。
それなのに、堂々とサキュバスと体を重ねて、快楽にふけったのだ。
「そういうところが、分かってないって言ってるのよ!」
少し声が大きくなってしまって、スライムはハッとする。
勇者のまぶたがピクリと動き、うっすらと持ち上がってしまった。
「ん? スライム? いつの間に……」
「起きなくていいわ」
「俺は起きて待ってたつもりだったんだが……寝落ちしてたか」
久しぶりに運動をしたせいで熟睡してしまった、と腰をさすりながら、抜け抜けと宣う。
スライムはムスッと口をとがらせるが、外見上はわずかに体表にしわが寄るだけだった。
「あれ? 今の、駄目だったか? ……何か、気に障ったんだろう?」
そんな僅かな変化に、勇者が気づく。
そして恐る恐るスライムの機嫌を窺う。
「悪かったよ。その、何がいけなかったのか、分かってないけど……」
「もう!! だったら謝ったって、しょうがないじゃない!」
スライムが金切り声を上げると、途端に勇者の顔が喜色満面になる。
その悦びようは、サキュバスが現れたときとは、比較にならなかった。
しまった、とスライムは思うが、もう遅い。
「もっと怒ってくれ」
「馬鹿なの!?」
するりと体を大きく伸ばして、眠る勇者の股間を刺激し、聖力の宿る精液を搾取し始める。
今日はサキュバス相手に放った後なので、量はいつもより少なかった。
「それでもまだ、これだけの強さがあるのよね。……野放しにするのは危険ね」
スライムがレベルアップし続け、圧倒的強者による恐怖の統治が完成したら、魔王の所有物である勇者に手を出す魔物もいなくなる。
それまではここで匿っていないと、血肉を目当てに殺される可能性が高い。
「まだサキュバスのように、知能があればいい。勇者を生かす利点を理解できるから」
だが、そんな魔物ばかりではない。
奇しくもスライムが戦いを挑んだ魔王は、ひたすらに殺戮を楽しむ骨だけのドラゴンで、まるで話が通じない相手だった。
「あの骨、なかなか頑丈だったわ」
二度と復活させないつもりで、容赦なくエネルギーを吸収したら、骨の髄まで溶かしてしまった。
その結果、ピンク色のスライムの体内には、銀色のラメが光るようになったのだ。
おそらくドラゴンが隠し持っていた、何らかの特技を継承したらしいが、あまり興味はない。
それよりも――。
「どうしようかしらね、このクズ勇者を……」
体を元の大きさに戻すと、鎖に繋がれたままだらしなく寝ている、全裸の勇者を見下ろした。
スライムの言葉にはトゲがあるが、どこか勇者を憎めない響きもある。
「何もない部屋に閉じ込めたのは、私の失敗だったわ」
暇を持て余していた勇者が、サキュバスと玩具と認識して、性行為をするに至った責任の一端は、スライムにもあると思っている。
だからスライムは、勇者が満足するまで魔王の座を狙うサキュバスと戯れるのを、見逃そうとしていた。
「夢の3Pを目指して、スライム狩りをしていたあんたは、活き活きしていたものね。もともと、そういうことが好きなんでしょう」
魔王討伐ではなく、性の快楽を追求するのに余念がなかった。
そんなかつての勇者の姿が、ありありとスライムの脳裏に蘇る。
「差し出された絶好の機会を、あんたが逃す訳ないのよね」
この部屋にサキュバスが忍び込んだときから、スライムは扉のすぐ外にいた。
サキュバスが勇者に危害を与えるつもりなら、すぐに阻止しようと待ち構えていたのだ。
だから勇者が、手放しでサキュバスの登場を悦び、美しい女体を褒め称え、愛撫を施す様子をずっと感知していた。
「サキュバスに欲情しているのを、私に隠そうともしなかったわ。本当にどうしようもないんだから!」
勇者はスライムがいることに、最初から気づいていた。
それなのに、堂々とサキュバスと体を重ねて、快楽にふけったのだ。
「そういうところが、分かってないって言ってるのよ!」
少し声が大きくなってしまって、スライムはハッとする。
勇者のまぶたがピクリと動き、うっすらと持ち上がってしまった。
「ん? スライム? いつの間に……」
「起きなくていいわ」
「俺は起きて待ってたつもりだったんだが……寝落ちしてたか」
久しぶりに運動をしたせいで熟睡してしまった、と腰をさすりながら、抜け抜けと宣う。
スライムはムスッと口をとがらせるが、外見上はわずかに体表にしわが寄るだけだった。
「あれ? 今の、駄目だったか? ……何か、気に障ったんだろう?」
そんな僅かな変化に、勇者が気づく。
そして恐る恐るスライムの機嫌を窺う。
「悪かったよ。その、何がいけなかったのか、分かってないけど……」
「もう!! だったら謝ったって、しょうがないじゃない!」
スライムが金切り声を上げると、途端に勇者の顔が喜色満面になる。
その悦びようは、サキュバスが現れたときとは、比較にならなかった。
しまった、とスライムは思うが、もう遅い。
「もっと怒ってくれ」
「馬鹿なの!?」
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