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緑虫

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2 王位を捨てた竜人x片翼の鳥獣人(2023.6.23)

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鳥獣人の受け。町では誰よりも速く高く飛べる彼は、強くてみんなの憧れの存在だった。

自分は強い、と調子に乗っていた受け。でも実力は確かだったので、ちょっと偉ぶってても周りも許していた。 

そんなある日、竜化して暴走した竜人族が大暴れし、町は壊滅状態に陥る。

周りが止める中、自分なら止められると奢った受けが最前線へ。

だけど一緒に来てくれた仲間がやられそうになって助けた時に、片翼を食い千切られてしまう。

追ってきた竜人族が暴走竜を捕らえてたことで、九死に一生を得た受け。竜人族は、暴走竜を自分たちの国へ連れて帰った。

後日、竜人族は暴走した竜人を処分したと謝罪。甚大な被害を受けた町の復興支援をしてくれた。


すっかり元通り&前より豊かになった鳥獣人の町。でも受けの気分は晴れない。

片翼を失って飛べなくなった鳥獣人は、本来であれば仲間から見捨てられる存在なのだ。

仲間は受けのせいじゃないと擁護してくれたけど、仲間を守って傷を負った受けに対し、

「余計なことだったんじゃないの?」
「カッコつけた上に翼を失って格好悪い」

と陰口を叩かれているのを知ってしまう。

誰も信用できなくなり、プライドもズタズタになってしまった受け。居た堪れなくなり、怪我が治った後は町を出ていった。

受けが住んでいる辺りは山が多い所。

平野に行けば色んな種族が雑多に暮らしていると聞き、片翼でも目立たないかと移動。

道中、弱り切った身体に入墨が入った青年に出会う。まるで自分を見ているようで、つい拾ってしまった。

獣人の特徴がどこにもないけど、瞳孔が縦になっている青年。獣人になりきれなくて仲間に追い出されたのかなと考えたら、余計置いていけなくなってしまった。

受けは飛べなくはなったけど、剣の腕は本物。

ギルドに登録すると、冒険者として次々と依頼をこなし、せっせと青年に食事を運んでいった。

しばらくして、青年は元気を取り戻す。受けはすっかり懐かれてしまい、元々情に厚い受けは「行く場所がない」という青年と過ごすことに。

青年は、過去の記憶が曖昧だった。だけど、ひょんなことがきっかけで魔法が使えると判明。しかも結構な腕前だ。

バディを組んで信頼関係を築き上げていく二人。だけど、受けは片翼を失った理由を言えないまま。(奢っていた自分が恥ずかしかった)

青年は強いのに甘えん坊で、寝る時はいつも受けの片翼に包まれて寝る。こんな片翼でも気に入ってくれる人がいたことが嬉しくて、くっついて寝るのはどうなんだと思っていた受けだったけど、受け入れてしまっていた。

段々と受け大好きな青年に絆されていく受け。


ある日のこと。ギルドの依頼の成功報酬にお酒っぽいものを貰って「じゃあ飲むか」と二人で飲んでいた。すると何故か二人ともムラムラしてしまい、気付けばそういう雰囲気に。

催淫剤入りだったワインだと気付いた時にはもう遅くて、ギンギンにおっ勃てた青年が

「受け、助けて……!」

というので扱いてあげている内に、気付けば押し倒されていた。

「待て!早まるな!」
「早まってない。ずっとこうしたいと思ってた」
「……え? ええええええ!?」

健康になった青年は馬鹿力の持ち主で、受けのささやかな抵抗も虚しく、あれよあれよという間に抱かれてしまう。

「受け、好き。ずっと一緒にいて」
「……あーもう、仕方ねえな、一緒にいてやるよ!」
「嬉しい! ねえ、もう一回しようよ」
「ま、待て、俺のケツはもう……ああああーっ」

帰る場所のない受けと帰る場所を忘れた青年は、晴れて恋人となった。

冒険者ライフをエンジョイしていた二人だったけど、ギルドで人探しの依頼を目にする。

探し人の特徴が、どう考えてもまんま青年。


「お前の素性が分かるかもしれないぞ!」
「……別にいいよ」
「よくないだろ! 親が探しているかもしれないんだぞ!」
「うう……」

嫌がる青年を説得した受け、依頼者に会いにいく。

依頼者は竜人族で、竜人国の国王の座の争いに巻き込まれて狂戦士になる薬を飲まされてしまった第二王子の行方を探していた。

第一王子は猜疑心が強くて、国王になる気のない第二王子を失脚させようとしていた。

その犠牲になったのが鳥獣人の町や他の周辺の町だ。

第二王子の仕業だと公表することで、近隣諸国から非難されれば王位継承することもなくなる、と企んだ。

身体の入墨は、狂戦士の薬が抜けきるまでの間竜化を抑える呪術だった。狂戦士の薬が抜けた直後に、第一王子派が第二王子を攫ってしまい、記憶も薬で奪ってしまったのだ。

奴隷に落とそうとしたけどその前に逃げられてしまい、失敗の報告を恐れた第一王子の手下はそのまま市井に下って消える。

竜化もできず記憶も奪われ、右も左も分からずに死にかけていたところで出会ったのが、受けという訳だ。

第二王子の不在はすぐに公に知れ渡ることになる。関与を疑われた第一王子は、周囲に対し当たり散らすようになる。第一王子の横暴さに「これは黒だ、こんな奴を王様にできない」と考えた国民が暴動を起こす。

第一王子が幽閉されて落ち着いたところで、国は改めて第二王子の行方を探していた。

記憶は祖国に戻って治療すれば治せると言われ、

「国の為に戻ってやれよ」

と言う受け。

青年は涙ながらに「一緒にきてほしい」と頼んだけど、受けは「今の話が本当なら、俺の片翼を食いちぎったのはお前だ」と突き放す。

受けだって、本当は一緒にいたい。だけど、いずれ青年は国王になる。立派な肩書を持つ青年に、片翼の自分は相応しくないと身を引こうとしたのだ。

自分が受けを傷つけた張本人と知り、ショックを受ける青年。悲嘆に暮れたまま、自国へと戻っていった。

数カ月後。今日もギルドの依頼をひとりでこなしていた。ギルドに戻ると、噂話でもちきり。なんでも、竜人の国で第二王子が嫡男になったのだとか。

「雲の上の人になっちゃったなあ」

飛べない空を見上げていた受け。そんな時、空から大きな影がこちらに向かってくる。

影は竜化した青年で、「従兄弟に立太子させた、だからお願い、一緒にいさせて」と泣きながら頼み込んできた。


「受け以外、何もいらないんだ。受けが望むなら、翼を引き千切ってもいい。腕を失ってもいい。受けの翼を奪ってしまった罰を受けるから、お願い、一緒にいさせて……!」

必死な青年を見て、

「そんなことするなよ。あーあ、仕方ないから一緒にいてやるよ」

と笑う受け。

「本当!? 受け大好き!」
「わっこの馬鹿力!」

嬉しくて泣きながら襲ってくる青年に久々に美味しくいただかれた受け、翌日は起き上がることができなかった。

やがて二人は有名な一級冒険者となり、生涯にわたって仲良く暮らしましたとさ。
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