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狸と狐のピーチとオレンジのキャンディ
ファジーネーブル〖1〗改
しおりを挟む『あのひと』との出会いはずっと前、視線を合わせたのは秋の放課後。裏山が大きくて安心する高校。
でも私は毎年、秋は気持ちが波立ってしまう。悪い意味ではなく高揚する。
簡単に言えば所謂『ワクワク』や『ドキドキ』だ。何故か。
私は狸。
簡単に言えば人間のふりをしている。悪く言えば、化けている。
秋は実りの秋。正門玄関のきらきらした金色の銀杏の葉が綺麗だ。私は上を向いて、校門の前の大きな銀杏を見上げた。
栗の実を中学の時、里山でよく拾ったっけ。そういえば去年、私が風邪で寝込んでいるとき、家の前に大きな栗が、花を添えて山みたいに置いてあった。
あの栗を置いていったのは、誰?
「金色のちひさきとりのかたちして銀杏散るなり夕陽の丘に。晶子は恋に生きたのよね……」
放課後、独り居残って落ち着いた雰囲気がする中庭の石の椅子に腰かけパラパラと本を読んでいた。
「た、た、立貫さん!一緒に帰ろ?これ、半分個、食べて。肉まん!坂の下の7で買ったんだ。す、好きな人と分けあって何か食べるって、いいよね」
好きという言葉が刺さる。そんな言葉が自分に向かって言われたことはなかった。木津根くんは誰にでも優しい。手を捕まれて否応なしに引っ張られるようにベンチに案内される。
綺麗なハンカチを座るところに広げてくれた。
私は受けたことのない扱いに、照れて俯いた。でも、雰囲気で解った。
この男子生徒、狐だ。狐が人に化けてる。同類だ。私が正体を見抜けないとでも思っているのか。
早く逃げよう。狐と関わって、つらい思いしかしたことがない。
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