9 / 27
狸と狐のピーチとオレンジのキャンディ
ファジーネーブル〖4〗
しおりを挟むあの頃父さんは仕事人間、仕事狸だったから、家のことを、全部済ましてから、中学校へ行っていた私。
母さんの看病、チビの妹と弟の世話、炊事、洗濯、掃除、勉強、スマホでの上っ面の友達付き合い。狸の姿に戻っての山の神様への神事。
神主さんは私を見るたび私を控えめに撫でる。神主さんの手は暖かい。
普段、狸や狐、他の霊力が高い動物は人間に化けて生きる。
その方が生きやすい。特にその中で、神に近い霊力をもつ種、神に気に入られた容姿をもつ種は、純潔を守り神官や巫女になる。
私は巫女候補だった。
『神々しいのう。そしてこの毛並み……見事じゃ』
神主さんは私のつやつやした毛を撫で唸る。神主さんの言葉は嬉しいけれど、その頃の私は始終忙しく頭がおかしくなりそうだった。
そんな時出会ったのがあの狐だった。昔、気を張ってばかりいた私を見つめて話をきいてくれて、
「白は頑張ってるよ。えらいな。少し肩の力を抜けよ。焼きそばパン半分食うか?じゃあ、ちょっと、先に聞かせて。白はピーチとオレンジ、どっちが好き?俺、すげぇ旨いもの飲んだんだ。だから白に、予行練習」
そう言って、狐は飴をくれた。
ぶっきらぼうだけれど親切な狐に、母さんが臥せって滋養のあるものを探しているとき、滋養にいいと『蜂蜜&ローヤルゼリー』というものを貰った。
私が約束した日に緊張しながら薬を受けとり緊張しながら笑うと、あんなに優しかった狐に、胸をえぐるようなことを言われた。どうして?私はあなたに悪いことをした?私はあなたを傷つけた?
『笑って汚ねぇ顔、余計に汚くしてんじゃねぇよ』
無表情でそう言われ、お礼に渡そうとして摘んだお花は、振り払われ、ハラリと落ちた。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
1
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる