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狸と狐のピーチとオレンジのキャンディ

ファジーネーブル〖7〗

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弱肉強食だ。この世の中喰うか喰われるか。気を許したら、傷つくのは自分だ。だから誰にも心を許しちゃいけない。あとで哀しい思いをしたくないなら。

木津根くんが好きだった。

好きな人だったけれど、今、この状況下で真実を知り、一気に冷めた。

あの狐だったなんて。二回も好きになるなんて馬鹿みたいだ。

そして、私はそっと昼休み狸に戻り、『体育館倉庫』を探りに行く。あざとい隠しカメラ。私はクラスのカースト上位の人たち──木津根くんたち──の、ただのお遊びの道具だった。きっと私が木津根くんと少しでも仲が良いのが気に入らないんだろう。
 
きっと、作り上げられた告白劇に巻き込まれる。私は気づけば木津根くんに夢中だったんだと思う。卑屈になって、肉まんなんかを頬張らなくなった。普通の女の子のように『美味しい』そう言って笑ってた。

何か話すのにも、段々とクラスにいるときのように饒舌には話せなくて、横顔を見つめることしかできなくなっていった。

恋をしてたんだな。不相応にも。

綺麗な鼻梁。少し薄めの唇。切れ長の瞳。クラスのキラキラ男子がこんな私に話しかけて、優しい言葉をかけて女の子扱いをしてくれたのも、どれだけ嬉しかったかなんて、きっと誰にも解らない。

私みたいな子にしか、コンプレックスを卑屈さを隠して笑う、心のなかで泣くような子。そんな子しか解らない。きっと解らない。

毎日、木津根くんと過ごせる、美味しい飴をくれる短い時間が楽しみで、早く放課後になればいいと思って、私は一時限目を受けながら思っていた。

釣り合わないとは、解ってた。充分承知だ。ただ、私も夢を見ていたかった。
 
いつも明るくて、周りの人に頼りにされる彼のことが好きだったから、正直『今』みたいなことをする悪趣味なクラスの連中には、腹が立つ。そして、面白がって私に『嘘の告白ゲームの告白係』をする木津音くんにも、哀しくて辛くて、腹が立つ。今までの優しい振る舞いは全部、嘘。伏線だった。私だってプライドはある、けれどこの扱いはひどいよ。そう思い、口唇を噛んだ。
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