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〖第3話〗
しおりを挟む「今、女の人の間で韓国料理流行ってるみたいだし。ナムルとかチヂミとか、簡単な奴で良ければそれも一緒に作ろう。色んなサイト見て作ったオリジナルだけど。プリントアウトしとくな。料理はさ、素人はまずはレシピ通り作ってなんぼだから」
彰はチラリとタカラを見た。タカラは、にっこり笑って、
「さっすがアキさん!でも、そんな気を遣わせて………すみません」
タカラはペコっと彰に会釈をする。タカラの表情に一瞬見えた影。けれど、それは一瞬で消える。彰にタカラが前に語った話からだと思えた。彰はわざとタカラの背中を強めに叩き、
「今度スタミナ定食、おごりな!降りが強くなってきたから、先行ってるぞ」
置いていかないで下さいよ。そう急いでタカラは最後の一口を吸い込み、いつもより少し長い吸殻を灰皿に残し、笑う彰を追いかけた。
タカラはいつも明るくて、愛嬌があり、場を和ませるのが得意だ。けれど、それがタカラがただ明るい、所謂『天然』と思ったら大間違いだ。
前々から気配り上手だとは思っていたが、気疲れして、胃に穴が開きそうだと焼き鳥屋に二人で飲みに行ったとき彰は思った。
タカラは察せないように気を配る達人だ。タカラは泥酔しながらも、おかわりや取り皿まで、彰をずっと気遣っていた。彰は、タカラに、
「必要な時は何か言うから。窮屈になったら折角飲みに来たのに勿体ないよ。悩みでも何でも話、訊くぞ?」
ビールの中ジョッキを傾ける。彼女の話かと思っていた。美人で料理上手な彼女。だから、こんな思い詰めた表情をされると思ってもいなかった。
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