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〖第4話〗
しおりを挟む「………生きていく上で『いい子』でいることはいいことですか? アキさん」
彰はタカラをじっと見つめ言った。
「悪いことだよ」
迷いのない彰の答えにタカラは息を詰まらせた。
「悪いことだよ。待つことも、我慢を覚えることも。仕事あたり前だけど、プライベートまで気を張るなよ」
甘いピースを吸いながら彰はそう言った。そう、ですか。そのままタカラは黙った。彰は砂肝串を一旦、取り皿に置いた。
頬杖をついて鶏皮を焼くおやじさんの淀みない手の動きを見ながら彰は言った。
「タカラ、つらかっただろ。これからは誰かに甘えろ。あと、ちょっと悪いことをいっぱいしような。俺もつきあうから」
「悪い子………悪い人は嫌われませんか?」
「まあ、世間において人ってさ、みんな悪いとこ、良いとこの両方持ってると思うよ。だから人間やっていける。全部良い人ならそれは神様仏様だよ」
そうですね、笑い泣きするタカラにグレーのハンカチを差し出し、彰はタカラの丸まった背中を擦る。タカラが小さく感じて切なかった。
帰り道、タカラと家飲みの準備に近所のスーパーマーケットに寄り、地場野菜コーナーを見る。形は不揃いだが、新鮮で安く量も多い。形なんて食べてしまえば一緒だが、ついチェックしてしまう。タカラが、珍しいものでも見るように、
「アキさん、俺の彼女とおんなじことしますね。そんなに野菜見て。野菜ってそんなに違うもんですか」
タカラが不思議な顔をするので、彰は、
「キャベツでも、ちゃんと結球してずっしり重い方がうまいよ」
「へぇー。アキさん料理男子ですか?モテ要素多すぎっすよ。イケメンだし。フリーなら女の子紹介します?俺の彼女、友達多いんです。派手じゃないすけど」
「んー、遠慮しとく。前の子と別れる前さ、LINEの返事が遅いとか、くだらないことでギスギスして、喧嘩して。彼女が『好きならまず即レスは必至』とか。俺はまあ授業中返せるわけないだろ?って……。かえって別れて今思えば可哀想だったけどよかったよ………俺は暫く一人でいいよ」
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