指先だけでも触れたかった─タヌキの片恋─〖完結〗

カシューナッツ

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〖第2話〗一応狸の王子様

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 何処にも、やさしくて親切なカナエちゃんと釣り合う所がない。オレのことを、
『箸にも棒にも引っ掛からない、何の取り柄もない奴だ』
 そう、蛙のゴンさんも、銀杏のアキ爺もみんな言う。ひいては親父にまで、

──「お前は術の才能も、容姿も人並みだな。修練次第で中の上だ。ただ、ヒトを惹き付ける不思議な縁の力を持っている。結んだり、ほどいたり。ある意味術を何個も会得するより難しいかもしれない。まあ、魑魅魍魎に気をつけ生きよ」──
 
 話がずれたけれど、それでも、カナエちゃんはやさしくしてくれる。こんなオレと一緒に、昼にベンチでおにぎりを食べたりして、お花のお話を聴いてくれる。
 毎回オレはこの神社に来る度に、小さな花束を渡す。彼女は渡した花みたいに綺麗に笑う。まるで弁天様みたいに綺麗だ。
 
 昼、カナエちゃんとベンチで食べるこのおにぎりは、コンビニのハイキショブンのおにぎりを心豊かな人間の、髪が桃色した、バンドをやっているという冴さんという娘が親切にオレにしてくれる。

『なま物は一応、最近あったかいから避けた方がいいと思って、これ。梅と昆布っす』

 いつもこのおにぎりをくれる桃色の髪の人間はいい娘で、心根が優しい。感謝の代わりに『陽の気』を少し置いていく。いいことがあるおまじない。
 
 世の中は陰と陽で動いている。明るく、良いことがあるように。俺はただの狸といえばそれまでだけど、神狸直系の血を引いている。お洒落に言えば王子様だ。このくらいの能力は持っている。
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