指先だけでも触れたかった─タヌキの片恋─〖完結〗

カシューナッツ

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〖第3話〗心やさしいヒトたち

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「あと、田貫さん、これ内緒っすよ。鮭食べたいって言ってたんで鮭弁キープしときました。アタっても私から貰ったって言わないでくださいね。おにぎりあげられなくなっちゃいますから。あと、これ試供品のトクホのジュースっす。良かったら」

 そう言い、オレに夕飯に食う弁当と、明日の朝と昼に食う、おにぎりをくれる。たまに身体に良いっていう飲み物も。

 いつもカナエちゃんにあげる花束は、花屋さんがいつも『やけに』ハッチュウミスする花で綺麗な小さなブーケを作ってくれる。そして、もう一つは少しだけ残念そうな顔をして、少しだけ元気の無い花で花束を作る。
 オレが花束を買えないのを知っているから、お金がないのを知っているから、花屋の娘さんはワリビキノハナやウレノコッタハナとは決して言わない。

「派手じゃなくてごめんね。こっちのあんまり元気のない花は水切りすれば元気になると思うわ。職場に生けてあげて」

 そう言って、花束を作ってくれる。この人間もいい娘さんで、温かな、思いやりがある娘さんだ。オレにはあげられるものがないので、感謝の代わりにここでも『陽の気』を少し置いていく。
 明るく、皆が花に目を止めますように。娘さんとは店の開店前に話をする。娘さんは二人の息子に手を焼いているようだ。けれど、可愛くてしようがないと言う風に目を細めて話をする。花屋の娘さんは倫子さんと言った。

「まだ綺麗に咲いているのに、切り花って寿命が短いわね」
「うん。でも、いつも色んな花を有難う。この花も倫子さんの近くにいられて嬉しかったって、言ってるよ……うな気がするよ」
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