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〖第5話〗狐への太白の思い
しおりを挟む「太白は、伸び代あると思うな。まず、やさしいし、れでぃーふぁーすとだし、白い毛並みが、もっふもふよ。触っていい?って訊くと尻尾だけならってわざわざ尻尾だしてくれたの。真っ白でふわふわ。最高よ。神位は下がるって言われても、私、絶対太白にお嫁にいく。鈴蘭は?」
あの狐野郎の名前は鈴蘭という。
「あ、あの狸?桃花、ぜ、全然格好良くない。やめておけ。あんな、れ、れでぃーふぁーすと?なんてモテない男の最後の手段だ。あんな奴、何処がいいんだ?妖力も少ない。仲間にして遊んだら、妖力をたかられそうだ。神位も低いし、稲荷にはまず釣り合わない」
オレは狸の一族の直系の子供で、妖力はまあまあ強くはない方だけど、狐野郎ほどではない。基礎の妖力は紙コップと大ジョッキの差くらいある。修練次第で、やっと中ジョッキくらいの基礎妖力だ。
狐野郎は神社の神様を守る狐だ。だから、神通力を持っている。これには、どう足掻こうが、いくら努力しようが届かないのだ。それにオレは、狐野郎に対して誰にも言いたくないけど劣等感しかない。
劣等感という言葉さえもおこがましいかもしれない。あまりに差が、ありすぎる。妖力も、容姿も。
あいつは知らない感情だよな『劣等感』なんて。惨めで、悔しくて、「オレなんか」が言葉の接頭語になる。きっと逆立ちしたって解らない。考えたことが、感じたことがないからだ。
オレは好きなひとと、初めて出来た好きなひとと話す話題が、いい年した見た目がとうにボロい作業着を着た大人が『好きなおにぎりの具』だよ。でも、カナエちゃんは、やさしいから話につきあってくれる。
カナエちゃんはやさしいから、オレを見て笑ってくれる。可哀想だからとは思いたくないけど。
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