11 / 24
〖第11話〗本当に君が好きだった
しおりを挟む『鏡よ鏡。カナエちゃんが好きなのは誰?』
『それは、稲荷の狐、お前ではない』
『鏡よ鏡、稲荷を深く傷つけてしまったのは誰?』
『それは、他の誰でもない、お前だよ』
**********
カナエちゃんは『木常先輩』に初めて会った日から心はここにあらずだ。この神社に来る度に、木常に対する質問の嵐だ。
「木常さんとは何処で知り合ったの?」
「田舎が一緒で。いいひとだよ。ちょっと気むずかしいけど。この前は鳥について話してたんだ。たまたまキビタキが来てたのに、オレが小枝を踏んで鳥を逃がしちゃったから機嫌悪くなったんだと思う。カナエちゃんのせいじゃないから安心していいよ」
もう潮時だと解っていた。ここにはもう来ちゃ行けない。カナエちゃんに注ぐオレの視線は最早木常への情報源だ。去らなければならない。自分の存在が無いものになるまえに。空気にはなりたくない。
恋は残酷だ。好きな人の他の人は、その他大勢になってしまう。かといって好きな人を応援する自分は嫌だ。それは、あまりにも、自分が可哀想に思えてしまう。あまりにも、惨めだ。
**********
前みたいにオレは毎日神社に行かなくなった。そして、そんなオレのことを、カナエちゃんは気にもしなかった。久々に顔を出したオレを見ても、平然としていた。
端から見たらカナエちゃんがオレを想う気持ちはその程度の想いだった。
けれど、オレは本当に好きだった。それにオレは元々、カナエちゃんの気持ちが、自分の思う気持ちと、恋愛感情を抜きにしてイコールだとは思っていない。
0
あなたにおすすめの小説
嘘をつく唇に優しいキスを
松本ユミ
恋愛
いつだって私は本音を隠して嘘をつくーーー。
桜井麻里奈は優しい同期の新庄湊に恋をした。
だけど、湊には学生時代から付き合っている彼女がいることを知りショックを受ける。
麻里奈はこの恋心が叶わないなら自分の気持ちに嘘をつくからせめて同期として隣で笑い合うことだけは許してほしいと密かに思っていた。
そんなある日、湊が『結婚する』という話を聞いてしまい……。
私のことを愛していなかった貴方へ
矢野りと
恋愛
婚約者の心には愛する女性がいた。
でも貴族の婚姻とは家と家を繋ぐのが目的だからそれも仕方がないことだと承知して婚姻を結んだ。私だって彼を愛して婚姻を結んだ訳ではないのだから。
でも穏やかな結婚生活が私と彼の間に愛を芽生えさせ、いつしか永遠の愛を誓うようになる。
だがそんな幸せな生活は突然終わりを告げてしまう。
夫のかつての想い人が現れてから私は彼の本心を知ってしまい…。
*設定はゆるいです。
愛されないと吹っ切れたら騎士の旦那様が豹変しました
蜂蜜あやね
恋愛
隣国オデッセアから嫁いできたマリーは次期公爵レオンの妻となる。初夜は真っ暗闇の中で。
そしてその初夜以降レオンはマリーを1年半もの長い間抱くこともしなかった。
どんなに求めても無視され続ける日々についにマリーの糸はプツリと切れる。
離縁するならレオンの方から、私の方からは離縁は絶対にしない。負けたくない!
夫を諦めて吹っ切れた妻と妻のもう一つの姿に惹かれていく夫の遠回り恋愛(結婚)ストーリー
※本作には、性的行為やそれに準ずる描写、ならびに一部に性加害的・非合意的と受け取れる表現が含まれます。苦手な方はご注意ください。
※ムーンライトノベルズでも投稿している同一作品です。
Short stories
美希みなみ
恋愛
「咲き誇る花のように恋したい」幼馴染の光輝の事がずっと好きな麻衣だったが、光輝は麻衣の妹の結衣と付き合っている。その事実に、麻衣はいつも笑顔で自分の思いを封じ込めてきたけど……?
切なくて、泣ける短編です。
届かぬ温もり
HARUKA
恋愛
夫には忘れられない人がいた。それを知りながら、私は彼のそばにいたかった。愛することで自分を捨て、夫の隣にいることを選んだ私。だけど、その恋に答えはなかった。すべてを失いかけた私が選んだのは、彼から離れ、自分自身の人生を取り戻す道だった·····
◆◇◆◇◆◇◆
読んでくださり感謝いたします。
すべてフィクションです。不快に思われた方は読むのを止めて下さい。
ゆっくり更新していきます。
誤字脱字も見つけ次第直していきます。
よろしくお願いします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる