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第4章
兎の望むこと①
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「痛かったよ。下着だけにされて、身体中蹴られて、笑われながらベルトで打たれて、足首も何度もふまれた。それから、は、裸にされて……後は…言いたくない。…痛かった…痛かったよ。痛いのは、もう嫌だよ!」
「うん」
「悔しかったよ。悔しいよ。何でいつも僕なの?僕は何か悪いことをしたの?この足を抱えてこれから生きていかなきゃならないほど、僕は誰かを傷つけたり、痛めつけたりしたことはないよ!」
「してないよ。秋彦は何にも悪くないよ」
「助けて、欲しかったよ。いつも心の中で祥介を呼んだんだよ。泣きそうになりながら呼んだんだよ」
「…ごめんな」
「祥介、祥介。ずっと、ずっと毎日がつらかったよ。…生きてることが、つらかったよ…さっきはごめん。でも、そうしなきゃ。僕に、関わるといいことなんて一つもない」
祥介は秋彦を抱きしめる強さを強めた。後頭部のサラサラの髪を指に絡ませ胸に顔を埋めさせる。
「沢山泣いて。我慢しただろ。沢山ここで泣いて。大声で泣いてもいいから」
秋彦は泣いた。
大声で子供のように泣きじゃくった。
呼吸が苦しくなるくらい、
顔をくしゃくしゃにして泣いた。
何度も祥介を呼んだ。祥介は、
「大丈夫。ずっと此処にいるから」
と言った。
「悔しい気持ちも、悲しい気持ちも、ここで終わらせろとは言わない。
それはあまりにも無責任だ。
秋彦の苦しさがそんな軽いものじゃないって俺は思う。
ただ背負うのにはあまりにも重すぎる。秋彦のつらい気持ちを俺にも分けてくれないか。それと、あまり思い詰めるな。
秋彦の希望は?
秋彦はどうしたい?どうなりたい?」
祥介の声は柔らかだった。気を使いながら話していると秋彦も解る。
実際、祥介はそう思いながら話していた。
秋彦を取り巻くものが優しいものであるように。秋彦がもう傷ついたりしないように、そう思い、抱きしめた。鼻を啜りながら秋彦は、祥介の胸の中で言った。
秋彦を取り巻くものが優しいものであるように。秋彦がもう傷ついたりしないように、そう思い、抱きしめた。
鼻を啜りながら秋彦は、祥介の胸の中で言った。
「普通が良い。皆と休み時間お喋りしたり、ベランダで早弁したり、
図書委員の仕事しながら谷崎くんや他の図書委員のひととお喋りしたり。
ほんの些細なことでいい。
普通に憧れてた。
普通に笑って、泣いて、怒って、喜んで、恥をかいたり、友達と喧嘩したり。一緒に勉強したり、普通の学生生活を、どれだけ僕が憧れてきたか解る?
解らないでしょ?
谷崎くんがほとんどを叶えてくれた。
だから僕は感謝しかない。
谷崎くんの話をする度に眉間に皺を寄せる祥介が嫌だった。
でもね、僕はクラスには戻れない。
戻りたくない。皆僕を馬鹿にする。
いつもクラスのスケープゴート、
生贄の羊だよ。いつも。人間は自分より下のものや異なるものを見ると安心するんだよ」
秋彦は、祥介の背に回した手をキュッと力を込めてから離し、寂しそうに、静かに目を閉じた。
──────────続
「うん」
「悔しかったよ。悔しいよ。何でいつも僕なの?僕は何か悪いことをしたの?この足を抱えてこれから生きていかなきゃならないほど、僕は誰かを傷つけたり、痛めつけたりしたことはないよ!」
「してないよ。秋彦は何にも悪くないよ」
「助けて、欲しかったよ。いつも心の中で祥介を呼んだんだよ。泣きそうになりながら呼んだんだよ」
「…ごめんな」
「祥介、祥介。ずっと、ずっと毎日がつらかったよ。…生きてることが、つらかったよ…さっきはごめん。でも、そうしなきゃ。僕に、関わるといいことなんて一つもない」
祥介は秋彦を抱きしめる強さを強めた。後頭部のサラサラの髪を指に絡ませ胸に顔を埋めさせる。
「沢山泣いて。我慢しただろ。沢山ここで泣いて。大声で泣いてもいいから」
秋彦は泣いた。
大声で子供のように泣きじゃくった。
呼吸が苦しくなるくらい、
顔をくしゃくしゃにして泣いた。
何度も祥介を呼んだ。祥介は、
「大丈夫。ずっと此処にいるから」
と言った。
「悔しい気持ちも、悲しい気持ちも、ここで終わらせろとは言わない。
それはあまりにも無責任だ。
秋彦の苦しさがそんな軽いものじゃないって俺は思う。
ただ背負うのにはあまりにも重すぎる。秋彦のつらい気持ちを俺にも分けてくれないか。それと、あまり思い詰めるな。
秋彦の希望は?
秋彦はどうしたい?どうなりたい?」
祥介の声は柔らかだった。気を使いながら話していると秋彦も解る。
実際、祥介はそう思いながら話していた。
秋彦を取り巻くものが優しいものであるように。秋彦がもう傷ついたりしないように、そう思い、抱きしめた。鼻を啜りながら秋彦は、祥介の胸の中で言った。
秋彦を取り巻くものが優しいものであるように。秋彦がもう傷ついたりしないように、そう思い、抱きしめた。
鼻を啜りながら秋彦は、祥介の胸の中で言った。
「普通が良い。皆と休み時間お喋りしたり、ベランダで早弁したり、
図書委員の仕事しながら谷崎くんや他の図書委員のひととお喋りしたり。
ほんの些細なことでいい。
普通に憧れてた。
普通に笑って、泣いて、怒って、喜んで、恥をかいたり、友達と喧嘩したり。一緒に勉強したり、普通の学生生活を、どれだけ僕が憧れてきたか解る?
解らないでしょ?
谷崎くんがほとんどを叶えてくれた。
だから僕は感謝しかない。
谷崎くんの話をする度に眉間に皺を寄せる祥介が嫌だった。
でもね、僕はクラスには戻れない。
戻りたくない。皆僕を馬鹿にする。
いつもクラスのスケープゴート、
生贄の羊だよ。いつも。人間は自分より下のものや異なるものを見ると安心するんだよ」
秋彦は、祥介の背に回した手をキュッと力を込めてから離し、寂しそうに、静かに目を閉じた。
──────────続
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