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知らない過去〖第10話〗──①
しおりを挟む空が力なく笑う度に苦しくなる。どうして空は自分をこんな簡単に許してしまうんだろう。自分は空を、あんなにも、傷つけたのに。
あのときも、腕から血を流しながらも、空は一生懸命笑ってた。切ない眼差しで自分を見つめて、まるで優しく言い聞かせるように『大丈夫』と言っていた。蒼は首から細い金の鎖を外した。
「困ったらいつでも呼んで欲しい。これを、もっていてくれ。金の呼び笛だ。俺だけがこの音を聞き分ける。すぐ空の傍に行くから。駆けつけるから。何があっても」
金鎖の首にかける金の細い笛。外の世界ではネックレスと言ったか。
「こんな、綺麗な………大切なんでしょ?」
生前、母は『大切な、守りたい人が出来たらあげなさい』と言った。幼い自分にはその意味の重さが解らなかった。今は解る。母は蒼が幼い頃、若くして逝った。空だったら、あげてもいいと思った。
「今日のお詫びだ。こんなことしか、出来ない。ごめんな」
「僕は周りのみんなが言う通り『しぶとい』から大丈夫。そうにいちゃん、ありがとう。でも、いいの?こんな、綺麗な笛、宝物じゃないの?」
「いいんだ。空を守ってくれる。空に持っていて欲しい。今日はごめん。怖かったよな……。こんな、そうにいちゃんで、ごめんな。でも、でも、俺は空に嫌われたくないんだよ。酷いことするつもりじゃなかった。それに……空は、何にも覚えていない、そうにいちゃんなんか、要らないよな……」
空は首を横に振り、寂し気に微笑む。
「そうにいちゃん、僕は覚えてる。だからいい。それに、怖くないよ。嫌いになったりしないよ。ずっと好きでいるよって約束したから。昔から知ってるよ、このふわふわの尻尾。懐かしいよ。だから悲しい顔をしないでいいよ。僕は『そうにいちゃん』が好きなんだから。優しいところは変わらない。……本当は早く答えを見つけてほしいけど、今すぐには贅沢すぎる気がする。無理しないで。ううん、逢えただけで、いい。でもここにいてくれるだけでいい、今だけは何処にも行かないで。いなくなったりしないで」
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