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蒼の尻尾と耳〖第9話〗──②
しおりを挟む「ほら、尻尾だ。触ってみるといい。触らせるのは空だけだ」
嬉しそうに空は頷く。ふわふわだね。あったかくて柔らかい。昔と変わらないねと言い、空はそっと尾を掴む。あまりに優しく触られて少し、くすぐったい。
「どうして、そうにいちゃんには尻尾があるの?」
「そうにいちゃんは狛犬なんだよ」
普段、尾や耳を見せることまずない。養育係の爺の前くらいだ。この忌まわしい黒色。まして尾を触れられることは正直慣れてないし、苦手だが、毛並みにそって撫でる空の手は温かで心地よかった。空は熱特有の苦し気な呼吸で、
「そっかぁ。そうにいちゃんは狛犬さんだったんだ。尻尾と耳、きれい。つやつやしてる」
と柔らかに蒼を見て微笑んだ。
「空は……俺が怖くないか? 尻尾も耳も……爪も。痛くて、怖かったはずだ。……酷いことも、言った。本当はもっと、きちんと早く謝るべきだった。すまない。本当に、すまなかった。違うことを言うはずだった。暁みたいに『空が呼んだら飛んで行くよ』って、言いたかった。言いたかったんだ……。もう、言い訳だな」
「怖くなんかないよ。そうにいちゃんだもん。そうにいちゃんはこんなに夜も遅いのに、僕の手を握ってくれてる。充分だよ。ありがとう」
空が力なく笑う度に苦しくなる。どうして空は自分をこんな簡単に許してしまうんだろう。自分は空を、あんなにも、傷つけたのに。
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