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孤独の深淵〖第23話〗──①
しおりを挟む岩山で、佇む。空はただ、寂しかったんだ。孤独を癒してくれて、助けてくれる人なら誰でもよかったのかもしれない。例えば、翠でも。婚約前なら暁でも。
自分が空にとって何なのかも解らない。生まれて初めて会った『親切なおにいちゃん』か。自分でなければいいわけではない。優しく接してやれば誰でも良かったんだ。
十五歳のあのとき出会わなければ良かった。五年も、期待だけをさせて、ただ待たせた。しかも、あのときの自分は『好きだ』という言葉に隠して孤独を癒すために空を利用していたのかもしれない。
あの頃の自分は、本当に自分だけを見てくれるひとが欲しかった。誰かに呼んで欲しかった。
『翠の兄』でもなく
『狛井家の嫡男』でもなく、
『蒼』と。ただの『蒼』で良かった。
宿命なんて、ない。
自分は空を、空の寂しさと孤独を、自分のために利用していた。自分は、穢い。
ピーッと金の笛が聞こえる。何回も何回も。『そうにいちゃん!』と呼ばれているようだ。そろそろ夕餉か。そのくらい一人でも食べれるだろう。
でも、おかしい。空の呼吸音に似ている。段々と弱まり、もう、か細く、聞こえない。嫌な予感がして狗に容貌を変え、風に乗り屋敷へと戻る。
「若様、若様! 空様が、空様が!」
人のかたちを取り、家に戻ると、爺が号泣していた。
「爺!落ち着け。空がどうした!」
「空様が………ど、毒をお飲みに。薬師も間に合わず………最後のお別れを致して下さい。ずっと『そうにいちゃん』と呼び続けて、お可哀想に。若様の布団に寝かせております。若様のせいですぞ!若様がいれば、こんなことには………!」
爺が目を背け泣いている。
襖を開ける。空が寝ている。悪い夢だと思えた。すぐ大きな瞳を開き、ニコリと自分だけを見て笑いかけてくれる。ただ、眠っているように見えた。
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