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家族であること〖第59話〗──①
しおりを挟む「こんな幸せがあるなんてね。僕には旦那さまと年が三つ上の弟が出来るんだね。家族が出来るんだね。大好きな人が旦那さまで、ちょっと照れ屋な年上の素敵なひとが義弟になるんだね。嬉しいな。幸せ過ぎて怖いくらい」
翠は、小さな義理の兄の、飛車の右手に自分の手を重ねた。他意はなかった。あまりにも空が切なかった。
手はほんのり温かく、指は力を込めたら折れてしまいそうなほど細く白かった。本当に、空は儚い。消えてしまいそうなほど、強く抱きしめたら折れてしまいそうな華奢な身体つき。唯一つなぎ止めるのは柔和な表情と甘い柔らかな匂い。
「幸せに、なりなよ。幸せに、なれるよ。空なら。兄さんと喧嘩したら加勢するよ」
「僕は口下手だから。翠くん、応援頼むね」
二人でクスクスと忍び笑いをする。翠が襖を軽く開け、
「兄さん、爺やさんを呼んで欲しい」
と言うので蒼は出入口で見張りの結界を作っている途中の爺を呼んだ。蒼は、机で父に出す書状をしたためていた。蒼は手紙から顔をあげ、
「爺、翠が爺に用事があるみたいだ」
とだけ言った。三人に何かあってはと気を張っていた爺は次の間の襖を開け、空と翠に会釈した。
「爺や………さっきは、すまなかった。顔を見て謝りたいと思った」
「気にしておりませんよ。手荒い挨拶、どうも」
ホホホッと笑うと、爺は結界作りに戻る。翠は、鋭い笛のような指笛を吹いた。暗闇から現れるようにやって来る白い鳥。尾の先が若草色だった。伝書鳥は本人と同じ姿をしている。
「兄さん、隣失礼するね」
『──今日は兄上の部屋に泊まる。今後、兄上や兄上の許婿、兄上の爺やに手出しをした者は、厳罰に処す──』
蒼は伝書鳥を託した翠を見る。まだ十八歳。蒼は伝書鳥に託す父への文を書いていた。次の間から空と談笑をしている爺を呼ぶ。
「爺。布団を三枚綺麗にのべてくれ」
「若様……ですが翠様は空様を……」
「一生懸命諦めようとしている。ある意味翠にとっても初恋に近いものがあるかもしれない。空も翠を気に入っているしな」
【つづく】
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