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宵闇に光る蝶々〖第33話〗──①
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あなたは贖罪のように僕を思い出すと言う。僕は子供だった。あなたの傷に寄り添えなかった。でも、つらかった。本当につらかったの。風を呼ぶから僕を攫って、僕をあなたの花婿にして。
******
空は風と共に消えてしまった。 三週間後、霜月の上旬に入った。神無月の勤めから帰った父に、ことの顛末を話すと思いっきり頬を張られた。
「お前は、何ということをしてくれたんだ!山神さまのお怒りに触れたらこの村全てが水の下だ!」
暫くの沈黙のあと、
「それで、白くなったのか?」
父は蒼に訊いた。蒼は頷いた。
「空様と引き換えに得た白い毛並みは満足か」
父は言葉を繋げた。
「白くなくても、例え緑でも紫でも、お前は自慢の息子だ。宵闇に光る蝶々と、空様が言っていたと爺から聞いた。空様は……お前を産んだばかりの母と同じことを言うんだな。お前の母は、お前を誇りに思っていた。勿論、私もだ。どうして自信がないんだ、蒼」
その口で良く言えたものだと、蒼は心の中で毒づいた。
「解りません。ただ言えることは、生涯結婚はしません。空への贖罪の思いだけで生きていきます」
父のその言葉を、もっと早くに聞きたかった。そうすればきっと答えは違かった。
そして、胸の奥に自分を産んだ母の誇りがあれば、そして、それを抱きしめて生きていける自分の強さがあれば、自分はこんなに卑屈でもなく、虚勢を張るだけの嫌味な者にはならなかった。
そして今、きっと横を見れば、ちょこんと座って蒼を見上げる空が居たはずだ。部屋に戻り、鏡の前で、耳と尾を出す。真っ白な耳と見事な尾。
「こんなもの、いらない。空、空、すまない…………会いたい」
どれだけ傷つけたか。自分の気にもしなかった言葉。空が飢えと怪我に苦しみながら、自分との祝言を待っている間、蒼自体は十五回も見合いをしてたなんて。
しかも白い毛並みなら上手くいってたことを、『幸せに』なりたかったと言い放って。その幸せに、空は居ないのに。
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